林田力 二子玉川ライズ反対運動



二子玉川ライズ検証シンポジウムで公共性や財政を検証


二子玉川の環境を守る会と世田谷自治問題研究所は2011年11月19日に東京都世田谷区奥沢の奥沢区民センター集会室(目黒線奥沢駅)でシンポジウム「二子玉川再開発その検証と私たちのまちづくり」を開催した。シンポジウムでは二子玉川東地区再開発及び二子玉川東第二地区再開発(街の名称:二子玉川ライズ)問題を、公共性、まちの在り方、行財政の三側面から解析した。主催者発表では75人が参加した。

冒頭挨拶は世田谷自治問題研究所の佐々木隆爾・筆頭代表理事である。佐々木氏は「大勢の人が集まったことに感動」と述べ、2010年4月の二子玉川ライズ2期事業の審査手続きの経験を話した。

佐々木氏は「高層ビルを建設する二子玉川ライズ2期事業が世田谷区景観条例に真っ向から対立する」として、反対の立場から意見書を提出した。自らは問題点を論証できたと考えていたが、東京都からは「事業計画に修正を加えるまでには至らないので、不採択と決定いたしました」との簡単な文書で退けられた。

その上で「これは単に二子玉川だけの問題ではない」という。「二子玉川は東京都にとってテストケースで、これを許せば他の場所でも大資本主導の開発が進められてしまう」と警告した。そのために「二子玉川の環境を守る会に任せるだけとせず、自治問題研究所も検証するシンポジウムの共同主催者になった」と説明した。

シンポジウムでは3名のパネラーから発表がなされた。最初は岩見良太郎・埼玉大学教授の「二子玉川再開発の公共性を問う」である。岩見氏は「摩訶不思議な開発がまかり通っている。住民の常識に反する」と二子玉川ライズの実態を批判する。

都市計画は公共性がなければできない。都市計画法にも都市再開発法でも「都市の健全な発展」「健全な高度利用」と「健全」が目的に掲げられている。二子玉川ライズは健全な発展と言えるか。不動産資本が儲けることを後押しするものが都市計画という風潮がバブル期に出てきた。当時生まれたものが再開発地区計画とスーパー堤防である。再開発地区計画は青天井の規制緩和、究極の規制緩和になる。2つとも二子玉川を襲っている。

公共性の矛盾は再開発地区計画に凝縮している。二子玉川ライズは容積率が2.2倍に緩和された。風致地区は再開発地区計画で無視される。それに見合う環境改善はなされていない。

その上で「大規模開発は反街づくりである」と問題提起した。大規模という規模の問題が公共性を破壊する。「大規模な開発は公共性と両立しない。巨大マンションでコミュニティとの関係を作ることは無理なのではないか。イギリスでは都市再生の名目で、減築している。二子玉川ライズのメンテナンスは大きな負担である。持続不可能と考える」と主張した。

住民参加も巨大開発になると参加しようがない。小さなまちづくりを重ねて、暮らしと対話していく。古代ギリシャのアテネ市民は「私達は、この都市を私達が引き継いだ時よりも損なうことなく、より偉大に、より良く、そして美しくして次世代に残します」と宣言した。住民運動に参画する住民はアテネ市民の精神を共有している。

続いて玉野和志・首都大学東京教授の「不動産開発と地域社会の対応」である。玉野氏は二子玉川を実地見学して開発前と開発後の状況を比較した。開発前の駅前はゴチャゴチャした街並みで、若い人がちょっときて遊んでいく。古着屋で買い物するなど下北沢に近いイメージがあった。

しかし、開発後はスーツを着ている人など大人と呼ばれる人の街になった。気楽な格好をした人が集まる雰囲気はなくなった。二子玉川ライズを進めた東急としては、気楽な格好をした若者が来るよりは、スーツを着た人に来てほしいのだろう。どんな人に来てもらいたいかというデベロッパーの意図が存在する。

一方で「洒落たストリートを一歩抜けると、ファーストフードの油臭い排気がまき散らされている」とし、「再開発組合は自分達の土地をどのように造形するかしか見ていない。周りの地域社会の関係は無視されている」と批判する。そして「二子玉川ライズを中低層にしたら長い目で見れば資産価値が上がっただろう」と指摘した。

東急は昔から東急方式で宅地造成を進めてきた。普通は自前で土地を購入して開発するが、それには資金が必要である。東急は再開発組合や区画整理組合を作って、建て前は地主の事業として進めてきた。このようにして東急田園都市線沿線の農地を宅地化してきたが、それでも東急の誘導に乗らない農家もおり、現在でも農地は残っている。これが、人が土地に住み着くということである。

同じように横浜市神奈川区子安浜でも漁民が復活している。現地は工業地帯であり、コンビナート建設などにより、漁民は漁業権を放棄させられ、公式には漁民はいないことになっている。所有する漁船を燃やすようなことまでさせられた。ところが、漁民が戻って小規模な漁業で生業を立てるようになっている。主体は定年退職者であるが、最近では若い人もいる。

京都ではマンション建設が問題になっているが、町会の投票権をマンションは一棟で一票としているところがある。町を作ってきた存在は古くから居住する世帯だからという論理である。

東急は若い人が住み、年をとったら売り払えばいいという人を対象に超高層マンションを建てたかもしれない。それでも高層マンションをついのすみかとし、一生を送る人が出てくる。

最後は世田谷自治問題研究所の中村重美氏の「世田谷区政の現状と課題について」である。中村氏は区のお知らせ「世田谷区実施計画・行政経営計画特集号」(2011年10月21日)の問題点を指摘した。そこでは財源不足が強調されている。実際に4月からガン検診が自己負担になった。区民から受診にためらいも出てくる。これに対して、「財政危機を理由に福祉予算を削減することは、大型開発優先区政からの転換を公約に掲げた保坂展人区長の姿勢が問われる」と指摘した。

厳しい財政状況の大きな要因である住民税の落ち込みは、ワーキングプアなど暮らしの厳しい状況を反映している。区民に負担を押しつけることは、区民が税や保険料を負担する基盤や力を損ねることになる。

一方で特別区交付金は増えている。これは法人住民税が増えているためである。大企業が利益を上げる一方で、庶民の所得が下がり続けるという格差の拡大する日本の現状を表している。

社会保障関係費の増大を行政需要増大、財政危機の理由とする世田谷区の主張はフェアではない。生活保護や子ども手当てなど社会保障関係費は国や東京都の補助金、特定財源を大きな原資としており、区の財政への影響は相対的に小さい。それ故に社会保障関係費の増大から暮らし・福祉の財政投入を圧縮する論調は正当化されない。

前区長の熊本哲之区政では福祉予算は一貫して削られ続けた。一貫して削られていないものは土木費である。世田谷区の街のにぎわいアップ事業の大部分が二子玉川ライズの補助金に使われている。二子玉川再開発を通じて見えてくる世田谷区の構造的な問題がある。

参加者からは様々な問題が指摘された。

「道路が広がったため、大型トラックが猛スピードで走り、振動がひどい。」

「再開発組合は強風のデータ開示を拒否する。再開発組合は『文句があるなら裁判所で主張しろ』と話し合いを拒否する。再開発組合は東急からの出向者で占められているのに、『東急』と言うと、必死に否定する。東急からは一切の謝罪の言葉がない。『再開発組合がやっていること』と素知らぬ顔である。東急に対する責任追及をしなければならない。」

「二子玉川ライズの工事では、あれだけ深い穴を掘るため、地盤沈下の危険がある。」

「玉川一丁目住民は風が強い日は駅に出て来られない。強風にあおられて骨折した老婦人は今でも肩を不自由している。親が子供に風の強い日は『傘を差すな』と言っている。」

「駒澤通りの拡幅は必要性がない。避難用に歩道を広げるとの名目であるが、災害時は車の通行も規制される。役人の机上の線引きに住民は翻弄され、不安定な立場にさせられる。」

二子玉川の環境を守る会の新井英明会長は終わりの挨拶で、「人間の怒りは深く静かに行動で示す」と語り、住民運動の継続を表明した。


東急不動産(金指潔社長)ソリューション営業本部係長・高田知弘容疑者(逮捕当時36歳)が顧客女性に嫌がらせ電話を繰り返したとして2010年8月18日に逮捕された。高田容疑者は2009年12月から2010年6月に取引相手であったホテル運営会社社長の携帯電話に番号非通知設定で、嫌がらせ電話を繰り返した。嫌がらせ電話は、ほとんどが無言電話であったが、「壊れろ、壊れろ」という呻き声で女性を畏怖させたこともあったとされる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産消費者契約法違反訴訟を描くノンフィクション

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告・林田力)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

 裁判における当事者と裁判官の緊迫するやり取りを丹念に再現。個人が不誠実な大企業を相手に闘うドラマがある!

 裁判と並行して明らかになった耐震強度偽装事件の余波や欠陥施工、管理会社・東急コミュニティーの杜撰な管理にも言及し、深刻度を増すマンション問題の現実を明らかにする。東急不動産のために働いた地上げ屋(近隣対策屋、東急不動産工作員)が暗躍し、住環境を破壊する高層マンション建築紛争と共通するマンション建設の闇に触れる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』

 林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』は東急不動産(販売代理・東急リバブル)のマンションだまし売りの実態を物語るノンフィクションである。

 この裁判の経過は林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)で明らかにした。『東急不動産だまし売り裁判』はタイトルの通り、裁判をテーマとした書籍であり、提訴後の出来事を対象とする。問題物件の購入に至った経緯や問題発覚後の東急リバブル・東急不動産の不誠実な対応(これが両社への悪印象を決定的にした)には触れていない。その点を知りたいとの声が読者から少なくなかった。

 そこで『東急不動産だまし売り裁判購入編』では購入からマンションだまし売り発覚までの経緯を明らかにした。被害実態を理解できるように東急不動産マンションの写真も掲載した。また、東急不動産だまし売り被害経験を踏まえた住宅購入ポイントをまとめた。

林田力『二子玉川ライズ反対運動1』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(The Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対する住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。東京都世田谷区の二子玉川(ニコタマ)では街壊しが進行中である。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」や「二子玉川ライズ オフィス」など東急電鉄・東急不動産ら東急グループの営利目的の再開発によって、二子玉川の貴重な自然と近隣住民の住環境が破壊されている。
自然と住環境を守るために住民運動側は住民集会や裁判、議会への陳情など様々な活動に取り組んでいる。『二子玉川ライズ反対運動1』では「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区まちづくり協議会」ら住民団体の活動の一端を紹介する。
また、同じく二子玉川で起きている住民運動である多摩川暫定堤防や三菱地所玉川一丁目マンションへの反対運動についても触れた。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』の著者である林田力が東京都に提出した二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)への意見書及び口頭意見陳述原稿も収録した。

林田力『二子玉川ライズ反対運動2』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住環境破壊の実態や反対住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。
『二子玉川ライズ反対運動2』は最初に二子玉川ライズがダメな理由を明らかにする。続いて裁判や集会など二子玉川ライズ反対運動の活動を述べる。二子玉川ライズ住民訴訟では実質和解という画期的な解決となった。パブリックコメントや新しいせたがやをめざす会など世田谷区政の動き、二子玉川ライズと同じく世田谷区の抱える開発問題である下北沢問題にも言及した。『二子玉川ライズ反対運動2』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動2』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』は二子玉川ライズ行政訴訟や二子玉川ライズ情報公開問題を明らかにする。続いて二子玉川ライズ問題に対する様々な観点からのオピニオンを掲載する。二子玉川ライズと東京スカイツリーや中野駅周辺再開発、海のピラミッド(熊本県)などの開発事業と共通する弊害を論じている。
その次は二子玉川ライズのビル風問題である。住民と世田谷区の緊迫感ある協議内容を収録している。さらに世田谷区議会を揺るがしたスキャンダル「二子玉川デジタル・コンテンツ問題」も記載する。『二子玉川ライズ反対運動3』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動3』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 5)は東京都世田谷区の二子玉川東地区市街地再開発(二子玉川ライズ)の問題を取り上げたノンフィクションの5作目である。『二子玉川ライズ反対運動5』では二子玉川ライズの弊害を再構成する。二子玉川ライズ2期事業控訴審や二子玉川ライズ2期事業に対する不服審査請求、住民と世田谷区の風害対策協議などを取り上げる。資料として二子玉川ライズ行政訴訟の裁判文書も収録した。

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』(Residents' Lawsuit Against FUTAKOTAMAGAWA Rise; Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 6)は二子玉川ライズ住民訴訟にフォーカスした書籍である。二子玉川ライズ住民訴訟は東京都世田谷区の住民らが二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)への公金支出差し止めを求めて世田谷区長を提訴した裁判である。

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』は2013年の二子玉川の環境を守る会総会や世田谷区予算で二子玉川ライズ補助金を支出することの問題点などを報告する。二子玉川ライズでのAV撮影という毛色の変わった住環境破壊の実態も取り上げた。各地のマンション建設反対運動についても紹介する。

林田力『東急コミュニティー解約記』

 林田力『東急コミュニティー解約記』(パブ―)はマンションの管理会社を変更し、管理委託費を大幅に削減した事例の記録である。東急不動産が分譲したマンション・アルス東陽町(東京都江東区)では管理会社を独立系の会社に変更した結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、変更から1年後には一般会計の余剰金を修繕積立金会計に繰り入れるまでになった。

 林田力はアルス301号室の区分所有者であった。物件引渡し後に不利益事実不告知が判明したため、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。売買代金を取り戻すまでは居住しており、管理組合理事長も務め、管理会社変更までの経緯にも関係していた。

 アルスでは売主・東急不動産の指定により、分譲当初から東急不動産の子会社の東急コミュニティー(東京都世田谷区)に管理を委託していた。管理委託費等は東急コミュニティーの言い値で決められている状況であった。しかし東急コミュニティーの杜撰な管理が次々と明らかになり、管理会社変更の機運が高まった。