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林田 力 『東急不動産だまし売り裁判』著者

SDGs 住み続けられるまちづくりを

「SDGs 住み続けられるまちづくりを」と題して問題提起をします。林田力と申します。
話の内容ですが、最初に自己紹介をします。続いてSDGsの概要を説明します。それから本日は、まちづくりが主題ということで、SDGsの中のまちづくりの目標である「住み続けられるまちづくりを」を説明します。日本政府と東京都のSDGsの取り組みを紹介します。最後に課題を問いかけます。
最初に自己紹介です。私は『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』というノンフィクション書籍の著者です。これはマンション購入トラブルを消費者契約法で解決した裁判を描いた書籍です。これは私の体験談を本にしました。
新築マンション購入時に隣が建て替えられて日照や通風がなくなるという不利益事実が説明されませんでした。引き渡し後に真相を知り、消費者契約法で売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻りました。この裁判の後も住まいの問題に取り組んでいます。


今回の討論会の主催団体の「愛する月島を守る会」では2019年1月29日の第69回勉強会で「二子玉川再開発問題」について話しました。東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)によってビル風などの住環境が破壊される問題です。中央区も超高層ビルが多く、重なる問題です。

 

それでは本題のSDGsです。エス・ディー・ジー・エスと書いてエスディージーズと読みます。持続可能な開発目標という意味で、世界が達成するための目標です。Sustainable Development Goalsの頭文字です。2015年9月の国連サミットで採択されました。17の目標(ゴール)と、それぞれの目標をより具体的に示した169のターゲットを定義しています。17のゴールはカラフルなアイコンが作られています。
先進国も途上国も取り組む目標です。発展途上国を念頭に置いた課題が多いですが、先進国も自身の問題として取り組む目標です。


たとえば3番目の目標の「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.5は「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」とします。
多くの国では薬物と言えば麻薬が大きな問題ですが、日本では危険ドラッグが深刻です。危険ドラッグを撲滅することがSDGsの達成につながります。
また16番目の目標の「平和と公正をすべての人に」のターゲット16.4は「2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する」とします。
多くの国では組織犯罪と言えばマフィアが問題になりますが、日本では半グレなどの振り込め詐欺が深刻です。
このようにSDGsは必ずしも特別なことではなく、自分達の社会課題の解決がSDGsにつながります。
SDGsは全世界が取り組む目標として国連で採択されたものであり、全世界が取り組む目標です。ところが、日本での認知度は非常に低く、五人に一人も知りません。世界と比べて日本は遅れています。このように言うと世界に合わせるだけが能ではない、日本は日本の良さがあると反論する向きもあるでしょうが、この調査をした電通の「ジャパンブランド調査2018」では日本への好意度が高い人の方が、好意度が低い人に比べてSDGs 認知率は高いとしています。日本への好意を維持し、増やす上でもSDGsへの取り組みは有益です。
日本国内の職業別の認知度では管理職の認知度が高い結果になりました。現時点ではSDGsを知らない人の方が多いですが、そのような状態から時代を動かすトレンドは作られます。
今の学生はSDGsを知る人が増えています。埼玉大学の2018年の学園祭の第69回むつめ祭では表面がSDGs、裏面が薬物乱用啓発のチラシが入場者全員に配布されました。SDGsはドラッグがダメということと同じくらいの常識になりつつあります。このような学生が毎年社会人になりますので、SDGsの社会への浸透も深まります。

 

それではSDGsのまちづくり分野である11番目のゴールの「住み続けられるまちづくりを」に入ります。ここでは「住み続けられる」がポイントです。封建社会は人間が土地に縛られていました。そのために近代社会に入ると居住移転の自由が強調されました。
一方で資本主義社会は地主が金儲けのために住んでいる人を追い出す囲い込みという問題が起きています。現代でも立ち退きがあります。移転する自由だけでは弱いです。居住移転の自由を、移転を強いられない自由を包含するものに再構成する必要があります。「住み続けられるまちづくりを」は、この観点から素晴らしい目標と考えます。

 

「住み続けられるまちづくりを」のターゲットは以下です(総務省仮訳)。
11.1 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

 

SDGsのターゲットには手段を規定しているものもあります。枝番がアルファベットになっているものです。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

 

ターゲットのポイントをかいつまみますと、持続可能がキーワードになります。もともとSDGs自体が持続可能な開発目標ですが、「住み続けられるまちづくりを」でも持続可能というキーワードがあります。
さらに、この持続可能な計画は参加型というキーワードがあります。
SDGsは結果だけでなく、プロセスも規定します。「結果オーライ」やエリートの定めた計画に従うというアプローチではありません。
参加型はSDGsの他のターゲットでも記載されています。
目標16「平和と公正をすべての人に」のターゲット16.7は「あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する」とします。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲット17.17は「さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する」とします。
また、参加して意思決定するためには正しく判断するための情報が必要です。SDGsでは情報公開も定めています。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。

 

続いて日本政府の取り組みを説明します。日本政府は積極的にSDGsに取り組んでいます。内閣総理大臣を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置しました。「SDGsアクションプラン2019 2019年に日本の「SDGsモデル」の発信を目指して」を2018年12月に定めました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2019.pdf
そこでは、まちづくりに関係する内容として、「SDGsを原動力とした地方創生,強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」とします。もともと国土強靭化という政策を掲げており、強靭なまちづくりに力点が置かれていますが、持続可能なという観点でも興味深い指摘があります。
「持続可能で強靱なまちづくり」では「コンパクト+ネットワーク」推進とします。右肩上がりの開発一辺倒ではないということです。
また、「質の高いインフラ」では「ライフサイクル・コストから見た経済性」をあげます。建築費用だけでなく、維持・管理費用、さらに解体・撤去費用まで見据えて経済性を論じることが求められます。

 

次に東京都の取り組みです。東京都は「2020年に向けた実行プラン」を定めています。「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の「3つのシティ」の実現を目指します。東京都は、この「2020年に向けた実行プラン」の推進がSDGsの達成につながるとしています。
そのことを書いた文書である「「3つのシティ」の実現に向けた政策の強化(2019年度)」は最後に人口減少・超高齢社会と向き合う必要を指摘しています。
「我が国は、既に人口減少局面に入っており、東京の人口も2025年をピークに減少に転じる見込みです。また、世界に例をみないスピードと規模で東京の高齢化が進んでいます。 東京は世界のまだ誰も経験したことのない人口減少・超高齢社会と本格的に向き合っていくことになります」(146頁)
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/action/pdf/08-4_sdgs.pdf

 

最後に私からの問いかけです。
人口減少・超高齢社会の中で持続可能な街づくりとは何かを考えてください。
また、「参加型」できていますかという点を問いかけます。行政は立派な計画を作ることもありますが、住民参加で作られていますでしょうか。
以上を私の問題提起とします。

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『いだてん 東京オリムピック噺』第13回「復活」

NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』第13回「復活」が2019年3月10日に放送された。第1章「ストックホルム大会篇」が完結する。マラソンに出場した金栗四三(中村勘九郎)は日射病で倒れて棄権する。日射病による選手や観客の体調悪化は2020年の東京オリンピック・パラリンピックも他人事ではない。むしろ深刻である。単純なオリンピック盛り上げドラマではなく、問題点を抉る作品である。

 

意識を回復した金栗は住民にJapaneseではなく、日本人と言い張った。これが連絡の遅れた原因ではないか。このストックホルム五輪のマラソンでは死者も出た。三島弥彦(生田斗真)は死ななかった金栗を良かったと言う。死んだら終わりとし、棄権を前向きに描いている点は昭和とは異なる、21世紀のドラマである。

 

三島の属する天狗倶楽部は今風に言えば半グレ・ヤンキーみたいな位置づけで思われるかもしれない。しかし、三島はスウェーデンが白夜で毎晩お祭り騒ぎしているのを五月蠅いと批判する。深夜に馬鹿騒ぎするような半グレ・ヤンキーとは異なる。

 

そもそも当時の大学生は現代以上に知的エリートであった。天狗倶楽部の押川春浪は冒険小説やSF小説を書いており、現代風に言えばライトノベルのようなもので、オタク文化の担い手であった。むしろ現代の半グレ・ヤンキーとは対照的な気質である。

 

昭和的な精神論や根性論を否定する点として、嘉納治五郎による監督の仕事の評価がある。大声で気合いを入れるよりも、マニュアルの整備を評価する。

 

この回は播磨屋が金栗に加え、美濃部孝蔵(森山未來)とも接点を持つ回であった。人力車夫の清(峯田和伸)の台詞で言及されただけである。本来ならば播磨屋本人が出てくるシーンがあり、ピエール瀧の麻薬取締法違反容疑でカットされたのではないか。

神奈川県警と大阪府警で警察システム悪用

神奈川県警や大阪府警では警察システムが内部から悪用される事件が起きた。神奈川県警では川崎署会計課の男性事務職員(44)が県警のネットワークに不正にアクセスし、廃棄予定の拾得物を盗んだとして、不正アクセス禁止法違反と窃盗の容疑で書類送検された。2019年3月29日に懲戒免職にされた。また、この職員に依頼して拾得物のライターを受け取ったとして、県警交通指導課の男性事務職員(40)が停職3カ月になり、依願退職した。

 

川崎署事務職員の送検容疑は2016年9月頃、システム管理者のIDとパスワードで他部署のパソコンにアクセスし、ファイルを移動させるなどした疑い。また、2017年4月と2018年4月、廃棄予定だった拾得物の加熱式たばこなどを盗んだ疑い。

 

「県警監察官室によると、この職員は偶然見つけたIDなどを使い、07年ごろから上司や同僚のパソコンをのぞき見していた」(「警察職員が不正アクセス=拾得物窃盗容疑も 神奈川県警」時事通信2019年3月29日)。システム管理者のID/パスワードを偶然見つけたとの説明が怪しい。民間企業ならば考えにくい。システム管理者の専門性を評価する土壌がない職場なのだろう。

 

大阪府警では警察官らが落し物の現金を詐取した。大阪府警南署警備課の巡査らは落とし主に成り済まし、拾得物の現金を詐取したとして逮捕された。

 

巡査は2017年11月から2018年6月に計12回、府警の落とし物管理システムで得た情報を知人ら2人(詐欺罪で起訴)に伝え、2人に落とし主を装わせ、10署から約305万円をだまし取ったという。金は飲み代などに使ったといい、「遊ぶ金がほしかった」と話している(「知人に落とし主装わせ…巡査、10署から詐取」読売新聞2018年11月2日)。

 

大阪地検は2018年10月31日、拾得金計53万円をだまし取ったとして、小林被告を詐欺、地方公務員法違反(秘密漏えい)の罪で追起訴した。起訴された額は計117万円となり、府警は残り188万円の詐欺容疑についても追送検する方針。

 

府警は2018年10月31日、南署警備課の巡査(24)を懲戒免職処分とした。監督責任を問い、前南署長(59)ら当時の上司6人を警務部長注意などとした。民間企業では当たり前になっているコンプライアンスや内部統制が機能しておらず、強い憤りを覚える。システムを変更しなければ、同様の犯罪が繰り返されるだろう。

Amazonビジネスで購買コストセーブや見える化

Amazonビジネス(Amazon Business)は法人・個人事業主向け購買サービスです。購買のコストセーブ、経費削減や購買業務の見える化につながります。伝票が一本化され、Webを介して発注状況が「見える化」されることで購買担当者や管理職のコストも削減でき、働き方改革につながります。日本では2017年9月20日にサービスを開始しました。

Amazonビジネスのメリットの第一は品揃えの豊富さです。Amazonの企業理念は「地球上で最も豊富な品揃え」です。Amazonビジネスでは法人向けの商品が追加されています。物に加えてワープロや表計算などのソフトウェアや人事、給与、会計、プロジェクト管理などのSaaSも提供されています。これら豊富な商品が法人向け価格や数量割引価格で購入できます。

 

メリットの第二は支払方法の選択肢の広さです。クレジットカード払いや請求書払いなど幅広いオプションの中から選択可能です。「特に請求書払いのニーズが高く、年商300億円以上の企業であれば70%以上がこの方法を利用している」(大蔵大輔「「Amazon Business」が1周年、日本は「請求書払い」の利用率が世界一」BCN+R 2018年9月12日)

 

メリットの第三はB2C向けで圧倒的に支持されるAmazonのUIと同じ形で利用できることです。「個人の買い物で使い慣れている人が多いアマゾンなら、法人向けECの導入のハードルは低いかもしれない」(長瀧菜摘「アマゾン「法人向けEC」はケタ違いの破壊力だ 商品数は2億超、アスクルやモノタロウを圧倒」東洋経済ONLINE 2017年9月22日)

 

メリットの第四は開かれたプラットフォームであることです。アカウント作成のハードルは低いです。「実績が乏しい新しい会社は、仕入れチャネルの開拓がハードルになることがある。計画的な調達先を開拓するために、Amazonビジネスを利用してみる方法もあるかもしれない」(中尾真二「アマゾンのオンライン業販はモノタロウに勝てるのか?…IAAE 2019」Response 2019年3月15日)

 

コインハイブCoinhive裁判で無罪判決

コインハイブCoinhive裁判で横浜地裁(本間敏広裁判長)は2019年3月27日に無罪を言い渡した。警察の暴走を裁判所が止めた形になった。略式裁判で有罪になった人々は冤罪被害者である。警察の強迫で泣き寝入りを余儀なくされた冤罪被害者の損害や名誉の回復は国の責任である。被害は広範囲に及び、深刻である。


冤罪は決して他人事ではない。冤罪によって今まで築き上げた多くのものを失ってしまう。それにもかかわらず、警察の捜査に違法性はないとされてしまう。今こそ日本人はこれ以上冤罪被害者に泣き寝入りさせることがないよう真剣に考えるべき時が来ている。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むだけ、頑張るだけの日本的発想は時代遅れである。


代理人の平野敬弁護士は以下のように指摘する。「不正指令電磁的記録に関する罪の要件は曖昧なため慎重な適用が求められるが、各地方警察は乱暴に摘発を進めており、今IT業界から大きな懸念が寄せられている」(「コインハイブ事件で無罪判決 弁護人「警察の暴走、食い止められることを願う」」弁護士ドットコム2019年3月27日)。


一方で判決が反意図性を認定した点は懸念する。「ネット上で次々に誕生する新技術には、一般のユーザーに認知されていない、気付かない所で作動するものが多い。他の新技術も反意図性が認められる懸念がある」(「仮想通貨 他人PCで「採掘」無罪」読売新聞夕刊2019年3月27日)


情報セキュリティー会社EGセキュアソリューションズの徳丸浩社長は以下のように指摘する。「コインハイブはデータを破壊するなどせず、ウイルスでないとの判断は妥当」(「無断採掘ウイルス認めず」読売新聞2019年3月28日)。


「ブラウザクラッシャー(通称:ブラクラ)にあたるとは言い難いジョークページを兵庫県警がブラクラだと認識していたり、モロさんの事件では「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」と神奈川県警の捜査員がすごむ音声が公開されるなど、警察の捜査手法への批判や「IT業界の萎縮を招きかねない」との声は少なくありません。」(「コインハイブ事件 横浜地裁、Webデザイナー男性の主張認め「無罪」判決」ねとらぼ2019年3月27日)


組織内での初動対応によってその後の被害が大きく変わってくる。多くの事例では警察の捜査に問題があっても、外部から指摘を受けるまで問題化することはない。自組織で自発的に行うべき見直しがなされていない。情報公開がなされず、実態を正確に把握できなければ、警察不祥事の対応も困難になる。風化はしない。むしろ問題は拡大する。

松橋事件の再審で無罪判決

松橋事件の再審で熊本地裁(溝国禎久裁判長)は2019年3月28日、殺人罪などで懲役13年が確定し服役した宮田浩喜さん(85)に無罪判決を言い渡した。再審決定では自白の重要部分が客観的事実と矛盾するとしていた。それを踏まえ、判決は確定判決が有罪の根拠とした自白の信用性を改めて否定した。検察側証拠の大半を採用しなかった。


犯人をでっち上げた警察や検察側の責任は重大である。冤罪の防止は刑事司法にとって尽きぬ問題である。自白強要の日本警察は人権を踏みにじることを容易く容認してしまう。海外の刑事小説やドラマでは警察の取り調べでは弁護士が同席し、刑事が脅しにかかると、その場で弁護士が制している。


冤罪の背景には検察側の証拠隠しがある。宮田さんの自白には「巻き付け布を犯行後に燃やした」とある。ところが、その巻き付け布は1997年に弁護団が検察に求めた証拠開示で見つかった。虚偽の自白であったことが明らかになった(「松橋事件、再審制度に一石 「隠された証拠」が鍵に 28日に地裁判決」西日本新聞2019年3月27日)。


警察や検察が都合の良い証拠のみを提出し、自己に不利益な証拠を提示しない問題はテレビドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』でも取り上げられた。隠蔽する手法は巧妙化している。利益となる事実を説明し、不利益となる事実を説明しない点で東急不動産消費者契約法違反訴訟とも共通する(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。俯瞰的な視点で情報を組み合わせ、連携して判断するためには情報公開の徹底が不可欠である。消費者契約法が消費者にとって「使って当たり前」の存在になったように、被疑者・被告人の人権保障も当たり前にしなければならない。


宮田さんの次男賢浩さん(60)は記者会見で以下のように語る。「警察や検察が責任を問われない今の司法制度を変えない限り冤罪はなくならない」(「「無罪ですよ、無罪…」宮田さんに何度も何度も 松橋事件再審無罪確定」毎日新聞2019年3月28日)


冤罪被害者達は冤罪を招いた捜査当局を批判し、謝罪をしなかった熊本地裁の対応にも不快感を示した(「「謝罪すべきだ」冤罪被害者、地裁対応に不快感 松橋事件再審無罪」西日本新聞2019年3月29日)。布川事件の冤罪被害者の桜井昌司さんは以下のように話す。「同じような仕組みでなぜ、冤罪が繰り返されるのか。そのうえ捜査機関は誰も責任をとらない。取り調べを弁護士立ち会いでするなど、可視化が必要だ」(「「これほど時間かかるとは」 再審無罪判決、司法へ怒り」朝日新聞2019年3月28日)

中央区長選立候補予定者公開討論会

私、林田力は中央区長選立候補予定者公開討論会で指定発言者として「SDGs 住み続けられるまちづくりを」を話します。中央区の課題を議論する場でSDGsの観点から問題提起します。公開討論会は2019年4月2日(火)に月島区民センター4階ホールで開催します。参加無料。直接会場にお越しください。

 

公開討論会には3名の区長選予定候補が参加されます。
熊倉哲也さん 地域課題を解決する会代表
小坂和輝さん 中央区議会議員
山田英久さん 映画プロデューサー
区長選予定候補の山本たいとさん、西田ちからさんからは欠席の連絡がありました。
また、区議選予定候補にも参加を案内しています。

 

公開討論会では中央区の課題について指定発言者が発表し、その後、立候補予定者及び区民で意見交換します。中央区の課題自体の考察を深め、それら課題について立候補予定者の考え方を知ることを目的とします。開場は午後6時30分、開会は午後7時、閉会は午後9時。途中、休憩は挟みません。
指定発言者は以下の通り。
・日本橋首都高地下案:宮城大学元教授 小澤尚さん
・国連SDGs:情報処理安全確保支援士 林田力
・中央区に不足する医療施設整備施策 建築家・都市環境プランナー 阿部彰さん

 

司会・ファシリテータは齋藤一恵さん。2017年の東京都議会議員選挙(中央区)の立候補者です。

公開討論会は愛する月島を守る会の主催です。私は2019年1月29日(火)の愛する月島を守る会第69回勉強会で「二子玉川再開発問題」の話をしました。

 

当初の案内から変更されています。指定発言者は玉田俊雄さんが欠席し、阿部彰さんが新たに加わりました。主催は愛する月島を守る会の単独になりました。

中央区長選挙公開討論会

愛する月島を守る会

『イノセンス 冤罪弁護士』最終回

『イノセンス 冤罪弁護士』最終回が2019年3月23日に放送された。冤罪を生み出す日本の刑事司法の問題を正面から掲げていたが、途中から普通のミステリー作品色が強くなった。特に最終回は真犯人のサイコ犯を追い詰める話がメインになりそうであり、本来のテーマはどうなるのかと思われた。まさか警察や検察の圧力で路線変更したのかとも思われたが、杞憂であった。


捜査機関が証拠を都合よく取捨選択し、不利な証拠を隠蔽してしまう日本の刑事司法の問題を取り上げた。証拠開示の問題は現実に日本の刑事司法制度の改革で主張されていることである。警察は自分達に不利な証拠を出そうとしない。証拠開示の強制化が必要である。


さらに新たな冤罪被害者が明らかになる。冤罪によって人生を滅茶苦茶にされた。最初から最後まで冤罪の話で一貫していた。自首するサイコな真犯人は『アンナチュラル』と重なるが、普通ではない異常者の話で終わらせない。


警察は自白や分かりやすい状況証拠に飛びつく。日本から冤罪がなくならない訳である。警察と検察の嫌らしさの現実味は『99.9-刑事専門弁護士』以上であった。冤罪 に対する警察の対応は、腐った肉を食べさせられた気分になる。


ドラマ序盤は和倉弁護士(川口春奈)がいない方が調査は捗りそうであったが、最終回は深刻な打撃である。良いストッパーになっていた。『イノセンス 冤罪弁護士』が『アンナチュラル』を連想させる要素に両方のドラマに登場した市川実日子の存在がある。有馬聡子(市川実日子)の調査能力は大きい。テレビ局に雇われているのに自由に調査できるのは恵まれている。

神奈川県警巡査部長が埼京線痴漢で書類送検

神奈川県警の川崎臨港署地域課の男性巡査部長(40)が埼京線で痴漢したとして2019年3月22日に東京都迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検された。巡査部長は2019年1月22日午前9時15分頃、東京都豊島区の池袋駅に停車中の埼京線車内で、20代のアルバイト女性の尻を衣服の上から触ったとされる。


巡査部長は「好みの女性で触りたかった。1年半ほど前から月1回くらい痴漢をしていた。インターネットなどで埼京線は混雑が激しく、痴漢が多いと知り、自分でもできると思った」などと話しているという(「月に1回痴漢「埼京線ならできると」 神奈川県警巡査部長処分」神奈川新聞2019年3月22日)。巡査部長はこの日は休日で、早朝から赤羽駅で、好みの女性を物色していたとみられる。


性犯罪の警察不祥事は他県で実施することがトレンドなのか。埼玉県警蕨警察署の巡査部長は2018年5月27日に東京都のプールで盗撮したとして、東京都迷惑防止条例違反容疑で逮捕された。岐阜県警では加茂署の巡査長が大阪市浪速区のプールで女性の体を触ったとして、2018年9月2日に府迷惑防止条例違反容疑で大阪府警浪速署に逮捕された。


神奈川県警は3月22日に減給100分の10(6カ月)の懲戒処分にした。巡査部長は同日付で依願退職した。警察官ならば性犯罪でも退職金が出る依願退職。警察ほど性犯罪者に優しい組織はないのではないか。警察組織の処分は身内に甘いイメージがある。処分は懲戒免職でも良かったのではないか。依願退職で退職金が払われることは、納税者として不条理である。タックスペイヤーがタックスイーターに搾取される。


Web小説では依願退職は野放しも同然とのセリフがある。「依願退職がせいぜいでしょう。野放しも同然です」(甘蜜柑『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)』第121話「エリヤ・フィリップスは頂上を目指す 804年4月~5月下旬 惑星シャンプール」)

NGT48山口真帆さん暴行被害事件第三者委員会調査報告書に失望

株式会社AKSは2019年3月21日、NGT48山口真帆さん暴行被害事件の第三者委員会調査報告書を報告した。もともと第三者委員会は第三者性に疑問が呈されており、報告まで時間がかかった上にメンバーの関与を有耶無耶にするような内容に失望の声が出ている。

AKSは報告書公表の発表文の中で「事件そのものにNGT48のメンバーが関与した事実はなかったとの判断がなされるとともに、運営上の不備が指摘されました」と記載する。いじめ調査で「いじめは無かった」とする報告書を連想する。保身第一の無能公務員体質と変わらない。

AKS発表文の「NGT48のメンバーが関与した事実はなかったとの判断」が流通しているが、調査委員会では関与したとの事実を確認できなかったと述べているにとどまり、事実はないと断定したものではない。逆に報告書はメンバーAが山口さんがマイクロバスに乗っていると暴行者に教えたとする。

これは「被疑者らが山口氏が孤立する時間帯を知っていたこと」という暴行事件の発生条件の一つである。「マイクロバスの運行経路等から山口氏が帰宅のため当該マンションの共用廊下に現れる時刻を予測して待ち伏せ、本件事件が発生することになった」(報告書26頁)。因果関係のある行為をメンバーがしたことになる。

AKS発表文の問題は「今後の方針としては、常にメンバーと向き合い、話し合いを通じて、解決していく」と話し合いで解決するコミュニケーション至上主義に陥っていることである。この問題は山口さんが外部に告発したことが発端である。内輪の問題を外に出さないという日本社会の村社会的体質を打破し、世間に問題を広く訴えられる仕組みが解決策になる。村社会的な日本社会は告発者に厳しい。山口さんが外部に訴えたことを評価しなければ救われない。話し合いの強調は告発の抑制になりかねない。

報告書に目新しい事実はないが、興味深い分析に「新潟という活動拠点の特殊性」がある。新潟は大都市と比べて狭く、公共交通機関が限られているために移動経路の特定が容易で、住居が発覚しやすかったとする(23頁)。また、ファンの絶対数も多くなく、特定少数のファンとの触れ合いが多くなったとする(24頁)。

近年は地方の良さを強調する論調が少なくないが、村社会的な窮屈さがあることも事実である。欧州では古くから「都市の空気は自由にする」と言われていた。今回のような暴行事件は近隣コミュニティーが希薄な都市型事件と思われがちであるが、むしろ地方的な閉鎖性が背景にある。だからこそ問題を外部に告発するオープン性に価値がある。




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