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二子玉川ライズ住民訴訟で住民側控訴


世田谷区の二子玉川再開発への公金支出を求める住民訴訟の判決が2010年5月25日に東京地方裁判所(八木一洋裁判長)で言い渡された。判決主文は一部却下・一部棄却で、原告の住民側は控訴した。

この裁判は世田谷区による二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(街の名称:二子玉川ライズ)への補助金支出が違法として、世田谷区民が世田谷区長を提訴した訴訟である。住民側は再開発の根拠となる都市計画決定などが違法であり、その違法な決定に基づいてなされた再開発への補助金支出も違法と主張した(林田力「二子玉川再開発公金支出差止訴訟判決言渡日決定(上)」PJニュース2010年5月9日)。

判決書は全52頁の大部なもので、大きく8個の争点に分けて判断している。注目すべき事実認定には、世田谷区と東京急行電鉄ら東急グループ(東急電鉄等)の「密約」(住民側の表現)がある。もともと再開発地域内の広大な二子玉川遊園跡地は風致地区の周辺環境に適応し、都市計画公園として指定されていた。ところが、都市計画決定で公園予定地が二子玉川駅から離れた場所に移動され、都市計画上の規制も緩和された。それによって、高さ約150mなどの超高層ビル建設を中心とする現行の再開発が可能になった。

この変更は世田谷区の区長・担当者が東急電鉄等の社長・担当者の密約に従って行われたと住民側は主張する。この密約が、二子玉川再開発が東急グループの利潤追求を目的としたもので、公共性に欠けるとの住民側主張の根拠となった。

この点について判決は1986年以降に世田谷区と東急電鉄等の間で複数回の覚書が締結されたことを認定した。そこでは再開発地域の用途変更や公園予定地の指定替えなどが約束された。その後の都市計画決定(1989年6月16日)は覚書の合意事項に沿った内容になっている。覚書が区議会議員に提示されたのは1999年(平成11年)7月になってからであった(判決書25頁以下)。

都市計画決定に先立ち、世田谷区と東急電鉄等の間で区議会にも明らかにされない「密約」が交わされたとの住民側主張が認定されたことになる。しかし、判決は「東急電鉄等は、本件覚書等により、二子玉川公園となるべき土地の約半分を世田谷区に無償で譲渡することを約していること」を挙げ、覚書を締結した世田谷区の判断を「合理性を欠くとまではいえない」と判示した(判決書29頁)。

この判示には2点の問題点がある。

第1に合理性の検討が浅薄である。覚書の内容が実現されることによって、東急電鉄等は二子玉川駅から離れた場所にある土地を世田谷区に無償で譲渡する代償に、駅から近い場所に高層ビルを建設できるようになる。

駅から離れた土地よりも駅から近い土地の方が経済的な価値が高いことは自明の理である。駅から離れた土地を無償譲渡したとしても、東急電鉄等にとって利益になる取引であることは容易に想像できる。その程度の分析もすることなく、無償譲渡を受けるというだけで機械的に「合理性を欠くとまではいえない」する裁判所の判断はチープである。

第2に手続の公正さへの検討が欠けている。密約の問題点は世田谷区長や職員が区民や区議会に事前承認も事後承諾もせずに、私企業と都市計画の方向性を決めてしまうことである。そのような進め方は、仮に内容的に「合理性を欠くとまではいえない」ものであっても正当化できない。判決は、この点の住民側の批判を無視している。

「合理性を欠くとまではいえない」的な表現は本判決の特徴となっている。判決は再開発地域の地域性について以下のように曖昧な判断を下した。

「機能的な都市活動を確保するという観点からすると、商業・業務施設、中高密の住宅などを充実させることが適切な地域であるとみることができるし、他方において、健康で文化的な都市生活を確保するという観点からすると、自然的環境を回復させることが適切な地域であるとみることもでき、いずれか一方の地域として整備しなければその地域性に反するとまではいい難い場所にあるということができる。」(判決書29頁)

その上で現行の再開発計画を可能にした都市決定に、以下の回りくどい結論になっている。「事実に対する評価が明らかに合理性を欠き、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとまではいえないと解すべきである。」(判決書29頁)

開発が適切であるとも自然環境の保全・回復が適切であるとも見ることができるということは当たり前である。この論理に立つならば広島地裁が2009年10月1日に事業差し止めを命じた鞆の浦(広島県福山市)の架橋でさえも適切とみることができると立論できる。どのような計画であっても視点を変えれば適切な面があると主張することは可能である。その上での判断を当事者は裁判所に求めている。

しかも問題は「商業・業務施設、中高密の住宅などを充実させる」ことが適切であるか否かという抽象論ではない。都市計画決定によって、それまで二子玉川に存在しなかった超高層ビルが何本も建設できることの是非が問題である。

これは不足していた商業・業務施設やマンションを充実させるどころか、商業・業務施設やマンションだらけにするものである。その弊害(日照・眺望の悪化、大気汚染、交通渋滞の激化など)も裁判では指摘済みである。そのインパクトを分析した上で、超高層ビルを何本も建設できるようにすることが適切であるのか判断されていない。

実質的な判断を避ける判決の消極的姿勢は、補助金交付が世田谷区市街地再開発事業補助金交付要綱違反であるかの判断において一層露骨である。補助金交付要綱では補助金交付決定に際して審査を義務付けている。

二子玉川東地区市街地再開発組合は建築コンサルティング会社アール・アイ・エーらと締結した実施設計に関する請負契約(金額1億8900万円)や権利返還計画作成に関する請負契約(金額1億2810万円)に補助金交付を申請した。これらの事業について再開発組合は2006年3月20日に実績報告書を提出し、世田谷区は同月22日に補助金決定等の適合性を認め、31日に補助金額を確定して通知した。

このように極めて短期間で決定がなされていることから、住民側は実質的な審査をしたことの裏付けを欠き、補助金交付の公益上の必要性の判断に違法があったと主張した。これに対し、判決は「世田谷区の職員4名が同年3月22日に実施検査を行った」と認定した上で、以下のように判示した。

「上記の各補助事業は、その性質上、専門家によって行われる図面作成等を目的とするものであり、また、その成果物に何らかの瑕疵がある可能性があったことをうかがわせるに足りる事情もないのであるから、上記の各補助事業の成果について行われた適合性審査が短時間にすぎるという原告らの主張は、当を得ないものいうべきである。」(50頁)

判決は職員4名が実施検査を行ったと認定するが、どのような検査をしたかは述べていない。検査が1日で終了したとしても必ずしも不十分と断定できるものではないが、検査内容が分からなければ検査が十分かを判断することは不可能である。

一方で判決は事業内容が「専門家によって行われる図面作成」であることを理由付けの中で挙げている。しかし、専門家が担当する専門的な内容だから、長時間の審査は不要との結論は非論理的である。専門家が作成したことを理由に、専門家を信頼して深く審査しないならば、丸投げとなり補助金交付要綱の趣旨に反する。むしろ専門性の高い成果物を真剣に審査するならば、それなりの一定の時間が必要になる。

判決は住民側の請求を退けたが、積極的に現行の再開発計画を優れたものと認定したものではない。それは判決中に繰り返される「合理性を欠くとまではいえない」的な表現が示している。判決は明白で極端な問題は見付からなかったと述べているに過ぎない。ここには行政庁には広範な裁量権があり、明確な逸脱がない限りは行政庁の判断を尊重するという発想がある。これは本件に限らず、多くの裁判の傾向である。

しかし、これでは住民側は納得できない。極端な問題がなくても害悪を及ぼす行政処分は無数に存在する。そのようなケースは裁判所の論理では救済されないことになる。それが裁判所の仕事でないとしたら、一体誰が是正するのか。

日本の行政組織には問題を事後的に検証して反省する能力が欠けている。だからこそ、これまで虐げられて無視され続けた人々が最後の希望として提訴する。官僚的な形式論で悲痛な訴えを切り捨てることは日本社会の現状を踏まえた上での裁判所への期待に背くことになる。

住民側は「私たちは行政の誤りと同時に司法の誤りも正し、かけがえのない自然環境と、国民主権による公正な行政の実現のために、最後まで闘い抜きます」と述べる(二子玉川東地区再開発公金支出差止請求訴訟原告団・弁護団「二子玉川東地区再開発公金支出差止訴訟判決に対する声明」2010年5月25日)。司法が住民の期待に応えられるのか、控訴審の行方が注目される。


東急不動産(金指潔社長)ソリューション営業本部係長・高田知弘容疑者(逮捕当時36歳)が顧客女性に嫌がらせ電話を繰り返したとして2010年8月18日に逮捕された。高田容疑者は2009年12月から2010年6月に取引相手であったホテル運営会社社長の携帯電話に番号非通知設定で、嫌がらせ電話を繰り返した。嫌がらせ電話は、ほとんどが無言電話であったが、「壊れろ、壊れろ」という呻き声で女性を畏怖させたこともあったとされる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産消費者契約法違反訴訟を描くノンフィクション

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告・林田力)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

 裁判における当事者と裁判官の緊迫するやり取りを丹念に再現。個人が不誠実な大企業を相手に闘うドラマがある!

 裁判と並行して明らかになった耐震強度偽装事件の余波や欠陥施工、管理会社・東急コミュニティーの杜撰な管理にも言及し、深刻度を増すマンション問題の現実を明らかにする。東急不動産のために働いた地上げ屋(近隣対策屋、東急不動産工作員)が暗躍し、住環境を破壊する高層マンション建築紛争と共通するマンション建設の闇に触れる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』

 林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』は東急不動産(販売代理・東急リバブル)のマンションだまし売りの実態を物語るノンフィクションである。

 この裁判の経過は林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)で明らかにした。『東急不動産だまし売り裁判』はタイトルの通り、裁判をテーマとした書籍であり、提訴後の出来事を対象とする。問題物件の購入に至った経緯や問題発覚後の東急リバブル・東急不動産の不誠実な対応(これが両社への悪印象を決定的にした)には触れていない。その点を知りたいとの声が読者から少なくなかった。

 そこで『東急不動産だまし売り裁判購入編』では購入からマンションだまし売り発覚までの経緯を明らかにした。被害実態を理解できるように東急不動産マンションの写真も掲載した。また、東急不動産だまし売り被害経験を踏まえた住宅購入ポイントをまとめた。

林田力『二子玉川ライズ反対運動1』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(The Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対する住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。東京都世田谷区の二子玉川(ニコタマ)では街壊しが進行中である。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」や「二子玉川ライズ オフィス」など東急電鉄・東急不動産ら東急グループの営利目的の再開発によって、二子玉川の貴重な自然と近隣住民の住環境が破壊されている。
自然と住環境を守るために住民運動側は住民集会や裁判、議会への陳情など様々な活動に取り組んでいる。『二子玉川ライズ反対運動1』では「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区まちづくり協議会」ら住民団体の活動の一端を紹介する。
また、同じく二子玉川で起きている住民運動である多摩川暫定堤防や三菱地所玉川一丁目マンションへの反対運動についても触れた。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』の著者である林田力が東京都に提出した二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)への意見書及び口頭意見陳述原稿も収録した。

林田力『二子玉川ライズ反対運動2』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住環境破壊の実態や反対住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。
『二子玉川ライズ反対運動2』は最初に二子玉川ライズがダメな理由を明らかにする。続いて裁判や集会など二子玉川ライズ反対運動の活動を述べる。二子玉川ライズ住民訴訟では実質和解という画期的な解決となった。パブリックコメントや新しいせたがやをめざす会など世田谷区政の動き、二子玉川ライズと同じく世田谷区の抱える開発問題である下北沢問題にも言及した。『二子玉川ライズ反対運動2』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動2』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』は二子玉川ライズ行政訴訟や二子玉川ライズ情報公開問題を明らかにする。続いて二子玉川ライズ問題に対する様々な観点からのオピニオンを掲載する。二子玉川ライズと東京スカイツリーや中野駅周辺再開発、海のピラミッド(熊本県)などの開発事業と共通する弊害を論じている。
その次は二子玉川ライズのビル風問題である。住民と世田谷区の緊迫感ある協議内容を収録している。さらに世田谷区議会を揺るがしたスキャンダル「二子玉川デジタル・コンテンツ問題」も記載する。『二子玉川ライズ反対運動3』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動3』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 5)は東京都世田谷区の二子玉川東地区市街地再開発(二子玉川ライズ)の問題を取り上げたノンフィクションの5作目である。『二子玉川ライズ反対運動5』では二子玉川ライズの弊害を再構成する。二子玉川ライズ2期事業控訴審や二子玉川ライズ2期事業に対する不服審査請求、住民と世田谷区の風害対策協議などを取り上げる。資料として二子玉川ライズ行政訴訟の裁判文書も収録した。

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』(Residents' Lawsuit Against FUTAKOTAMAGAWA Rise; Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 6)は二子玉川ライズ住民訴訟にフォーカスした書籍である。二子玉川ライズ住民訴訟は東京都世田谷区の住民らが二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)への公金支出差し止めを求めて世田谷区長を提訴した裁判である。

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』は2013年の二子玉川の環境を守る会総会や世田谷区予算で二子玉川ライズ補助金を支出することの問題点などを報告する。二子玉川ライズでのAV撮影という毛色の変わった住環境破壊の実態も取り上げた。各地のマンション建設反対運動についても紹介する。

林田力『東急コミュニティー解約記』

 林田力『東急コミュニティー解約記』(パブ―)はマンションの管理会社を変更し、管理委託費を大幅に削減した事例の記録である。東急不動産が分譲したマンション・アルス東陽町(東京都江東区)では管理会社を独立系の会社に変更した結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、変更から1年後には一般会計の余剰金を修繕積立金会計に繰り入れるまでになった。

 林田力はアルス301号室の区分所有者であった。物件引渡し後に不利益事実不告知が判明したため、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。売買代金を取り戻すまでは居住しており、管理組合理事長も務め、管理会社変更までの経緯にも関係していた。

 アルスでは売主・東急不動産の指定により、分譲当初から東急不動産の子会社の東急コミュニティー(東京都世田谷区)に管理を委託していた。管理委託費等は東急コミュニティーの言い値で決められている状況であった。しかし東急コミュニティーの杜撰な管理が次々と明らかになり、管理会社変更の機運が高まった。