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梶川卓郎『信長のシェフ』


梶川卓郎・原作、西村ミツル作画『信長のシェフ』(芳文社)は平成時代のシェフ・ケンが戦国時代にタイムスリップし、織田信長の料理人になるというタイムスリップ物である。タイムスリップ戦国グルメ絵巻と銘打たれている。

単なる未来人のタイムスリップではなく、シェフという専門的な技能を有している人物をタイムスリップさせることで料理ネタを登場させ、物語に奥行きを与えている。戦国時代には存在しない原材料を工夫する物語にもなっている。この点で医者を幕末にタイムスリップさせた村上もとか『JIN-仁-』に重なる。

長編漫画のタイムスリップ物はタイムスリップというSFよりも重厚な歴史ドラマを描く傾向にある。タイムスリップは物語の導入部に過ぎず、その後の物語はタイムスリップした過去の時代で進む以上、歴史ドラマを重厚にすることは当然の成り行きである。この場合に現代に戻りたいという意識や自分がタイムスリップした意味を問うというタイムスリップ物の定番展開は邪魔である。

この点で同じくタイムスリップ物である石井あゆみ『信長協奏曲』の主人公は現代に戻りたいという意識が乏しい点で異色であった。これに対して『信長のシェフ』では記憶を喪失しており、タイムスリップしたという自覚も欠けている。これによって歴史ドラマを存分に楽しめる。

タイムスリップ物は歴史のIFを楽しむ作品であるが、タイムスリッパーの歴史介入によって歴史が大きく変わってしまうと物語の収拾がつかなくなる。『信長のシェフ』は主人公の行動によって史実として知られている歴史通りになっていく。未来を変えるタイムスリップではなく、『ドラえもん』のような予定調和型のタイムスリップ物である。



『信長のシェフ 2』では伊勢の北畠氏討伐が描かれる。信長の伝記では軽く済まされてしまう戦いであるが、北畠氏は南北朝時代以来の名門であり、国司大名・公家大名という特異な存在であった。『信長のシェフ』では文化レベルの高い北畠氏を圧倒させるためにケンの料理を利用する。

織田信長は伝統文化の破壊者と見られがちであるが、息子の信雄に北畠氏の家督を継がせるなど文化的価値を上手に利用した一面もある。この史実が料理を利用するというフィクションとマッチしている。

『信長のシェフ』の興味深い点は、羽柴秀吉を目付きの悪い俗物に描いているところである。一般の歴史物では天才・信長を最も理解できた人物として秀吉を描く。これに対して『信長のシェフ』では主人公を信長の理解者とするために秀吉が凡人に映る。

秀吉は朝鮮出兵など晩年に大きな汚点を残した。それでも信長の家臣時代の秀吉は好意的に描かれることが多かった。晩年は耄碌したと説明されるが、一人の人間として一貫性のある描き方ではない。『信長協奏曲』での腹黒い秀吉と共に新しい秀吉像に着目したい。

秀吉の代わりに『信長のシェフ』で持ち上げられている武将は森可成である。武辺者として知られる森を爽やかに描く。信長は後世からは革新的な政策が注目される。注目される家臣も秀吉や明智光秀のように頭脳派である。戦国大名としては数々の負け戦を経験し、武田信玄の上洛に怯え、上杉謙信に大敗するなど必ずしも群を抜いていない。そこから信長は女であったという小説も登場するほどである(佐藤賢一『女信長』)。

これに対して『信長のシェフ』では森という良識ある武人肌の武将から慕われる信長という一面を描いている。前田利家や佐々成政のような傾き者から慕われる信長像は珍しくないが、森という大人の武人に慕われる点は新鮮である。



『信長のシェフ 3』は越前・朝倉氏攻めが描かれる。料理人として従軍したケンを待ち受けていたのは、信長の義弟・浅井長政の裏切りであった。絶体絶命の「金ヶ崎の退き口」が描かれる。

後から考えればタイムスリッパーならば長政の裏切りを最初から知っていなければならないと突っ込みたくなるところである。しかし、朝倉攻めに至る展開でのケンの活躍に入り込み、読んでいる最中は気にならなかった。お市の方が浅井の裏切りを伝えるエピソードは工夫しており、一般に流布している小豆の伝承ほど分かりやすくはない。料理人の主人公の知恵を示せる展開となっている。

女忍者が登場し、小谷城に潜入する展開はフィクション色が濃くなる。それでも市に信長を語らせることで、織田信長というキャラクターに深みを持たせた。

『信長のシェフ』では浅井長政と信長の行き違いを丁寧に描いている。浅井の離反は浅井久政主導で、長政自身は父親に従っただけと描かれる傾向がある。これに対して『信長のシェフ』では長政の問題としてまとめている。天才・信長を理解しようとして理解できなかった葛藤が浮かび上がる。

『信長のシェフ 4』は姉川の合戦がメインである。ケンが姉川の合戦の勝利の影の立役者になるが、農民を狩り出した浅井朝倉軍と職業軍人中心の織田軍の相違を上手に利用している。

『信長のシェフ 6』は信長包囲網という織田家にとって苦境の時代が描かれる。ケンの同時代人も登場し、ストーリーも大きく動き出しそうである。

織田信長は森可成を失うという打撃を受けた。森可成は羽柴秀吉、明智光秀、柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益ら後年活躍する家臣と比べると知名度が低いが、存在感の大きさが理解できる。森可成の重要性は同じくタイムスリップ物の石井あゆみ『信長協奏曲』でも描かれた。



『信長のシェフ 7』では松永弾正が登場する。松永弾正は下剋上の典型とされ、横暴な人物に描かれることが多い。同じくタイムスリップ物の石井あゆみ『信長協奏曲』ではヤクザになっているほどである。これに対して『信長のシェフ』では一見すると好好爺であり、意外性がある。この松永弾正がどのようにして織田信長を裏切るのかも興味深い。

また、『信長のシェフ 7』では森可成という重鎮を失った後の信長と家臣団のすきま風が描かれる。本能寺の変の背景を連想させ、興味深い。

歴史的事件では比叡山延暦寺焼き討ちが描かれる。延暦寺焼き討ちは信長の残酷さを物語るエピソードである。信長を好意的に描く『信長のシェフ』がどのように延暦寺焼き討ちを描くのか注目されたが、新鮮な歴史解釈を提示した。

出番は少ないものの『信長のシェフ 7』でも夏は登場する。鍛冶という本業でケンの役に立っている。ドラマの夏(志田未来)のようにケンに突っかかってくることはなく、自然体で接している。やはりドラマの夏のヤンキー風演出は残念であったと再認識した(林田力『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』「『信長のシェフ』ヤンキー風ヒロインが唯一残念」)。

(林田力)


東急不動産(金指潔社長)ソリューション営業本部係長・高田知弘容疑者(逮捕当時36歳)が顧客女性に嫌がらせ電話を繰り返したとして2010年8月18日に逮捕された。高田容疑者は2009年12月から2010年6月に取引相手であったホテル運営会社社長の携帯電話に番号非通知設定で、嫌がらせ電話を繰り返した。嫌がらせ電話は、ほとんどが無言電話であったが、「壊れろ、壊れろ」という呻き声で女性を畏怖させたこともあったとされる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産消費者契約法違反訴訟を描くノンフィクション

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告・林田力)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

 裁判における当事者と裁判官の緊迫するやり取りを丹念に再現。個人が不誠実な大企業を相手に闘うドラマがある!

 裁判と並行して明らかになった耐震強度偽装事件の余波や欠陥施工、管理会社・東急コミュニティーの杜撰な管理にも言及し、深刻度を増すマンション問題の現実を明らかにする。東急不動産のために働いた地上げ屋(近隣対策屋、東急不動産工作員)が暗躍し、住環境を破壊する高層マンション建築紛争と共通するマンション建設の闇に触れる。

林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』

 林田力『東急不動産だまし売り裁判購入編』は東急不動産(販売代理・東急リバブル)のマンションだまし売りの実態を物語るノンフィクションである。

 この裁判の経過は林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)で明らかにした。『東急不動産だまし売り裁判』はタイトルの通り、裁判をテーマとした書籍であり、提訴後の出来事を対象とする。問題物件の購入に至った経緯や問題発覚後の東急リバブル・東急不動産の不誠実な対応(これが両社への悪印象を決定的にした)には触れていない。その点を知りたいとの声が読者から少なくなかった。

 そこで『東急不動産だまし売り裁判購入編』では購入からマンションだまし売り発覚までの経緯を明らかにした。被害実態を理解できるように東急不動産マンションの写真も掲載した。また、東急不動産だまし売り被害経験を踏まえた住宅購入ポイントをまとめた。

林田力『二子玉川ライズ反対運動1』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(The Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対する住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。東京都世田谷区の二子玉川(ニコタマ)では街壊しが進行中である。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」や「二子玉川ライズ オフィス」など東急電鉄・東急不動産ら東急グループの営利目的の再開発によって、二子玉川の貴重な自然と近隣住民の住環境が破壊されている。
自然と住環境を守るために住民運動側は住民集会や裁判、議会への陳情など様々な活動に取り組んでいる。『二子玉川ライズ反対運動1』では「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区まちづくり協議会」ら住民団体の活動の一端を紹介する。
また、同じく二子玉川で起きている住民運動である多摩川暫定堤防や三菱地所玉川一丁目マンションへの反対運動についても触れた。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』の著者である林田力が東京都に提出した二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)への意見書及び口頭意見陳述原稿も収録した。

林田力『二子玉川ライズ反対運動2』

林田力『二子玉川ライズ反対運動』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住環境破壊の実態や反対住民運動を記録したノンフィクションのシリーズである。
『二子玉川ライズ反対運動2』は最初に二子玉川ライズがダメな理由を明らかにする。続いて裁判や集会など二子玉川ライズ反対運動の活動を述べる。二子玉川ライズ住民訴訟では実質和解という画期的な解決となった。パブリックコメントや新しいせたがやをめざす会など世田谷区政の動き、二子玉川ライズと同じく世田谷区の抱える開発問題である下北沢問題にも言及した。『二子玉川ライズ反対運動2』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動2』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』

林田力『二子玉川ライズ反対運動3』は二子玉川ライズ行政訴訟や二子玉川ライズ情報公開問題を明らかにする。続いて二子玉川ライズ問題に対する様々な観点からのオピニオンを掲載する。二子玉川ライズと東京スカイツリーや中野駅周辺再開発、海のピラミッド(熊本県)などの開発事業と共通する弊害を論じている。
その次は二子玉川ライズのビル風問題である。住民と世田谷区の緊迫感ある協議内容を収録している。さらに世田谷区議会を揺るがしたスキャンダル「二子玉川デジタル・コンテンツ問題」も記載する。『二子玉川ライズ反対運動3』(Kindle)は『二子玉川ライズ反対運動3』(マイブックル)を全面的に再構成したものである。

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』

林田力『二子玉川ライズ反対運動5』(Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 5)は東京都世田谷区の二子玉川東地区市街地再開発(二子玉川ライズ)の問題を取り上げたノンフィクションの5作目である。『二子玉川ライズ反対運動5』では二子玉川ライズの弊害を再構成する。二子玉川ライズ2期事業控訴審や二子玉川ライズ2期事業に対する不服審査請求、住民と世田谷区の風害対策協議などを取り上げる。資料として二子玉川ライズ行政訴訟の裁判文書も収録した。

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』

林田力『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』(Residents' Lawsuit Against FUTAKOTAMAGAWA Rise; Opposition Movement Against FUTAKOTAMAGAWA Rise 6)は二子玉川ライズ住民訴訟にフォーカスした書籍である。二子玉川ライズ住民訴訟は東京都世田谷区の住民らが二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)への公金支出差し止めを求めて世田谷区長を提訴した裁判である。

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』

林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』

林田力『二子玉川ライズ反対運動7』は2013年の二子玉川の環境を守る会総会や世田谷区予算で二子玉川ライズ補助金を支出することの問題点などを報告する。二子玉川ライズでのAV撮影という毛色の変わった住環境破壊の実態も取り上げた。各地のマンション建設反対運動についても紹介する。

林田力『東急コミュニティー解約記』

 林田力『東急コミュニティー解約記』(パブ―)はマンションの管理会社を変更し、管理委託費を大幅に削減した事例の記録である。東急不動産が分譲したマンション・アルス東陽町(東京都江東区)では管理会社を独立系の会社に変更した結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、変更から1年後には一般会計の余剰金を修繕積立金会計に繰り入れるまでになった。

 林田力はアルス301号室の区分所有者であった。物件引渡し後に不利益事実不告知が判明したため、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。売買代金を取り戻すまでは居住しており、管理組合理事長も務め、管理会社変更までの経緯にも関係していた。

 アルスでは売主・東急不動産の指定により、分譲当初から東急不動産の子会社の東急コミュニティー(東京都世田谷区)に管理を委託していた。管理委託費等は東急コミュニティーの言い値で決められている状況であった。しかし東急コミュニティーの杜撰な管理が次々と明らかになり、管理会社変更の機運が高まった。