Last Update: 2012/04/01

林田力:世田谷区民が二子玉川ライズのビル風問題を世田谷区と協議

林田力


林田力


世田谷区民が二子玉川ライズのビル風問題を世田谷区と協議


東京都の世田谷区民4名が2012年3月23日、世田谷区役所で板垣正幸・副区長や春日敏男・生活拠点整備担当部長ら区職員と二子玉川東地区再開発(街の名称:二子玉川ライズ)のビル風問題を協議した。

林田力も同席した協議では再開発によって生じた問題を直視するという世田谷区の姿勢の変化を実感した。これは大型開発の見直しを公約に掲げて2011年4月に当選した保坂展人区長就任による肯定的な変化である。一方で世田谷区自身の街づくりの問題として対応を求める区民らに対し、世田谷区は事業者(二子玉川東地区再開発組合)任せの姿勢が目立ち、区民との温度差も浮き彫りになった。

世田谷区玉川の二子玉川ライズでは2011年3月に二子玉川ライズ・ショッピングセンターが開業するなどしているが、高層ビルによる周辺住環境の悪化が問題になっている。二子玉川ライズから油の悪臭が出るという問題もある(区長宛て住民文書2011年12月1日)。

深刻な問題はビル風である。4月には女性がビル風に煽られて転倒し、骨折する事故が起きた(林田力「二子玉川再開発説明会で住民の懸念続出=東京・世田谷」PJニュース2011年5月16日)。2012年2月18日には男性がビル風で転倒し、頬や左手甲、左太ももを負傷した。

このままでは二子玉川ライズが世田谷区玉川を老若男女が住めない場所にしてしまいそうである。足尾銅山鉱毒事件の告発で知られる田中正造は「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」と言っている。二子玉川ライズは真の文明とは程遠い。

区民らはビル風の問題を中心に一年以上、世田谷区と協議を続けている。再開発組合は風対策として植栽の配置などをしているが、区民らは「こんな風対策では、時間と費用の無駄」として抜本的な対策を要求する(区長宛て住民文書2011年12月1日)。問題解決のために過去の風速データの開示と、常時歩行者に現在の風速を表示し、警告する指示記録計の設置などを求めている。

「風速を住民が見える様、風速の指示、そして記録を求め、また当然のこととして、音声での危険発信を求めました」(区長宛て「二子玉川第一期工事が及ぼす玉川1丁目多摩堤通り界隈のビル風について」2011年8月1日)

このうち、風速データの開示については12月にデータを保有する再開発組合が拒否したことを理由に世田谷区が断ってきた。それを受けて、今回の協議になった。

協議では世田谷区側は再開発組合が「訴訟の関係で差し控えたい」と拒否した理由を説明したが、区民側は再開発組合を言い訳に出すのではなく、世田谷区が測定することを求めた。これに対して事業者が第一義的には対応する問題とし、平行線となった。

このギャップはビル風の対策でも繰り返された。再開発組合の建設した高層ビルが住民被害の元凶である点は双方の共通認識である。このために世田谷区は再開発組合が対応する問題とし、自らは再開発組合を指導する立場と位置付ける。しかし、区民側は二子玉川ライズによって安心して生活できなくなった現状を区民の安全のために世田谷区が責任を持って対処することを求める。世田谷区の掲げる「安心安全の街づくり」が脅かされているためである。

このギャップは住民側と世田谷区長の両者の陳述を併記するという画期的な決着となった二子玉川再開発住民訴訟でも現れていた。住民側が再開発の問題について「世田谷区のまちづくりとして十分な対策を講ずる」ことを求めたのに対し、世田谷区長側の陳述は「事業者に求めてまいります」「事業者に実施させてまいります」と事業者に実施させることを念頭に置いていた(林田力「二子玉川再開発住民訴訟終結で公害行政から一歩踏み出した保坂世田谷区政」PJニュース2012年3月19日)。

再開発組合に対処させるという世田谷区の論理は責任追及論としては必ずしも誤りではない。再開発組合が再開発の利益だけを得て、害悪を世田谷区に尻拭いさせることはアンフェアである。それは再開発組合が本来負うべきコストを税金で肩代わりすることになる。植栽など現在行われている風対策について協議で区職員は「世田谷区は一円も負担していない」と胸を張ったが、原因企業に負担させる姿勢は区民らの論点とは乖離するが、評価できる。

しかし、世田谷区の論理は住民に対する責任という意識が抜けている。たとえばビル風によって二子玉川ライズに面する多摩堤通りの横断歩道の通過が困難になっている。区道管理者の世田谷区がビル風を起こした訳ではない。世田谷区にとっても二子玉川ライズのビル風は迷惑な話である。しかし、道路管理者として世田谷区は安全な道路を提供する義務がある。区の道路上でビル風が安全な通行を阻害しているならば対策を行う義務がある。その疑いがあるならば事故を防ぐために調査する義務がある。

また、再開発組合が二子玉川ライズによる住環境破壊の主犯であるとして、世田谷区は無関係な第三者ではない。むしろ従犯的な立場である。世田谷区は二子玉川ライズを推進し、莫大な補助金を投入している。世田谷区が都市計画を変更し、容積率を緩和したから高層ビルの建築が可能になった。建築規制によって守られていた住環境を破壊できるようにした存在は世田谷区であった。

加えて大きな問題は「事業者を指導する」という世田谷区の姿勢が言葉とは裏腹に風対策をやらない言い訳として使われているように区民らに受け止められていることである。区民らの文書には以下の表現がある。

「組合にワシヅカミにされているかのごとき世田谷区」(区長宛て「二子玉川第一期工事が及ぼす玉川1丁目多摩堤通り界隈のビル風について」2011年8月1日)

「行政側の姿勢が、住民のみの時と、再開発組合が参加した時と、姿勢が変わる。(中略)組合の主張をそのまま受け入れた姿勢になる」(区長宛て住民文書2011年12月1日)

原因が二子玉川ライズにあるとして再開発組合に対策させることは一案である。しかし、再開発組合に指導したが、断られたので何もできませんという言い訳を住民側に押しつけることは正当化できない。ところが、世田谷区側は再開発組合への指導に終始し、データの開示拒否など指導に応じない場合も、そのままにした。

しかも、住民側文書によると、2011年11月14日の区民、世田谷区、再開発組合の三者協議では世田谷区から「ビル風対策は、再開発組合の配慮によって、やっていただいているのだから、区としては、こうしろああしろとは言えない」との説明がなされたという(区長宛て「現状についてのご報告」2012年1月26日)。

一方で今回の協議では世田谷区にも僅かながら自らの問題として対処する姿勢が現れた。協議で世田谷区側はハンディタイプの風速計を2台購入したことを明らかにし、区民らと共に現地で風速を測定してデータを積み上げていく意向を示した。11月14日の協議では世田谷区側は区として風速計を購入することは考えていないと主張していた(区長宛て住民文書2011年12月1日)。

但し、世田谷区の購入した風速計は区民らが求める常時風速を記録し、付近を通行する歩行者に表示する指示記録計とは程遠い。区民への貸し出しをしない点も区民の要望を満たさない。板垣副区長は「歩みとしては遅いけれども、半歩でも踏み出したい」と区民らを満足させるレベルではないことを自覚しつつも、前向きな姿勢をアピールしていた。


二子玉川ライズの治安面の不安と役所仕事の杜撰


協議ではビル風以外の問題も明らかになった。区民らは再開発で拡張された交通広場に深夜に若者らがスケボーやローラースケートなどで遊んでいる実態が説明された。周辺住民は騒音被害を受け、治安面の不安を抱えている。

何ら事実の裏付けのない幼稚な先入観では狭い道路の木造密集地域よりも再開発地域の方が治安は良さそうなイメージを勝手に抱く。それが再開発推進理由に語られることもある。それが幻想にすぎず、むしろ再開発によって治安面の不安が増大する実態が二子玉川ライズで浮き彫りになった。

この問題に対して世田谷区側は限定的な対策になるが、立ち入り禁止の掲示を設置すると予定と回答した。ここで区民らは、お役所仕事の杜撰さを目の当たりにすることになる。世田谷区側は既に掲示を注文したと言いながらも、いつできるかを明言しなかった。

でき次第対応するということで4月に入ってすぐというような感触を示すものの、何日までという締切日を明言しない。それならば「4月中には実施する」と言えばいいが、そのように問うと「もっと早くできる可能性が高い」と答える。それならば早目の締切日を設ければいい話であるが、それはしない。

納期を決めずに発注することは通常の商慣習とは逸脱しており、区民側は現場に直接確認する意向を示した。これに対し、上司が担当者に電話確認を要請することでとりなした。電話で確認したところ、警察署と文案を調整中で、まだ発注していない事実が判明した。

ここには「己の信念を持ち合わせておらず、全て他人任せ」(区長宛て「現状についてのご報告」2012年1月26日)と批判される職員の体質が浮き彫りになる。仕事を自分でコントロールしようとはしない。関係する他人の作業次第であるから、楽観的な予測はできても期日を提示することはできない。

担当者には「住民の依頼は後回しにしよう」というような悪意は感じられない。むしろ早く掲示できるならば掲示したいという善意に満ちている。保坂区政になって住民の方を向いて仕事をするように変化しつつあると評価してもいい。しかし、仕事の進め方を自分でコントロールするというような仕事意識は簡単に変わるものではない。近時は民間の流儀を役所に持ち込もうという首長が熱烈に支持される傾向にあるが、そのような有権者の気持ちも理解できた。


空き家問題の雑談


協議終了後も雑談的に話が進んだ。世田谷区側は空き家や老人の一人住まいの増加を指摘した。若年層向けのシェアハウスに活用するという若年層の住宅難も解消する一石二鳥のアイデアなども披露した。これは名案である。

住まいの分野では格差社会に乗じて賃借人を食い物にする貧困ビジネスが跋扈している。ゼロゼロ物件などでは僅か一日の家賃滞納に過酷な追い出し屋の嫌がらせや高額な違約金請求が行われ、社会問題になっている。サラ金でも行われない未明の家賃取り立てや嫌がらせの貼り紙を繰り返す。また、無断で家屋の鍵を交換して高額の鍵交換費用を請求する。さらに無断で家屋に浸入して家財を処分・換金してしまうなどの人権侵害が行われている。

ゼロゼロ物件業者のような悪質な不動産業者を規制することが求められ、そのような動きは現実にある。一方でゼロゼロ物件のような貧困ビジネスでなければ契約できない経済的弱者がいることも格差社会の現実である。住まいの貧困問題の根本的な解決には公的セクターが廉価で良質な受託を供給することが求められる。それ故にアイデアの具体化を期待したい。

但し、それまで渋面で区民の話を聞いていた職員が、雑談では目を輝かせて話をする姿を見ると「何だかな」と思ってしまう。住民への対応は後ろ向きの仕事で、行政課題を解決するプロジェクトは前向きな仕事というような意識が根強いのだろうか。

そのような考えは根本的な誤りであるが、意識変革が容易にできないことも事実である。二子玉川ライズに反対する住民運動には住民で街づくり案を作成して提案するというような側面もある。住民運動の問題意識と行政職員の意欲やうまく合致することを期待したい。


二子玉川ライズのビル風問題協議内容


住民「二子玉川ライズのビル風による事故が把握している範囲で三件も起きている。風速などデータを出す、いつでも出すという話であった。それが昨年12月に出せないと言ってきた。急にデータを出せなくなったことに行政は責任を感じていないのか。区長は安心安全の街づくりを約束している。それが東急に丸投げだったとは呆れて物も言えない」

世田谷区「データの開示を求めたところ、二子玉川東地区市街地再開発組合が『訴訟の関係で差し控えたい』と拒絶した」

住民「今日は再開発組合の話を聞きにきたのではない。世田谷区としてデータを把握して対応すべきである。ペテンである」

世田谷区「データは出している」

住民「以前提示された情報はポイントが絞られたもの。全部見なければ分からない」

世田谷区「地域の方の要望には丁寧に対応するようにしている」

住民「一年以上経過しても、測定用の機器を買わない。これはどういうことか」

世田谷区「再開発組合に風対策を指導する。今後も指導を継続する」

住民「業者がやらないならば世田谷区がやるという意識が必要」

世田谷区「対策をしていない訳ではない。植栽やパネル、信号待ちの歩行者用の手すりを設置している」

住民「電光掲示板を設置して風速をリアルタイムに歩行者に表示するとの要望が無視されている」

世田谷区「電光掲示板の要望については再開発組合に伝える」

住民「再開発組合はやらない。民間業者は事業が終わった後に金を出してコスト負担をしない。世田谷区の実施を求めている。世田谷区が風速を計測してデータを開示する」

世田谷区「引き続き再開発組合にデータ開示を求めたい」

住民「風対策は技術の専門家であるコンサルタントに調査を外部委託することが公正である」

世田谷区「再開発組合が行うべきもので、区として支出する予定はない」

住民「外部委託した場合の費用について見積もりをしているか」

世田谷区「見積もりはしていない」

住民「二子玉川ライズの現状が事前の環境アセスメントとずれているとの感覚はあるか。東急に期待してもダメである」

世田谷区「区で風速計を2台購入した」

住民「住民には何の相談もなかった。安物買いの銭失いのような買い物ではないか。先週末にビル風が強かったために世田谷区に実地検分を依頼したが、『来ない』との結論であった」

世田谷区「転倒して負傷した住民にはお見舞い申し上げる。区道の管理について過失が認められない。見舞金には応じかねる」

住民「賠償責任ではなく、見舞金を求めている。腕が上がらなくなった負傷者は何の挨拶もないと不満である」

世田谷区「区長への面談の調整の要望については、板垣副区長が責任を持って取り組む」

住民「区長は『いつでも自分の部屋に来い』と言っている」

住民「風速計の仕様を教えてほしい。誰が購入を決めたのか」

世田谷区「手元に資料がない」

住民「10分間計測し続けたとして、そのピークの風速を測定できるものか」

世田谷区「測定できる」

住民「ハンディタイプか、スタンドはあるか」

世田谷区「ハンディタイプで、スタンドはない」

住民「もし一時間の平均風速やピークの風速を測定する場合、一時間ずっと手に持ち続けなければならない。夜間や休日の風速を出てきて測定してくれるのか」

世田谷区「まずは測定して、住民に教えたい」

住民「住民への貸し出し用は用意しないのか」

世田谷区「現状では考えていない」

住民「騒音計の貸し出しと同じである。風は自然現象であるが、ビル風は高層ビルという人工物を原因とする人工的な害である。貸し出し用の風速計を用意することは当然である」

住民「世田谷区の状況把握は粗末である。四六時中データを取り、ビルの影響の有無を把握する必要がある。このような状況でどうするつもりか。指示記録計の装備を求めている。それで分析はできるのか。区の語るデータは生データではない。安心安全の街づくりは東急に丸投げになっている」

世田谷区「貸し出しはしないが、住民と一緒のところで測定したい」

住民「先週末に『測定してください』と依頼したが、区の職員は出てこなかった」

住民「二子玉川ライズの高層ビルにより、風環境はどのように変わったのか。風が強くなったのか。風が強い場所で計測しただけでは不十分である。風速計を買って測定したつもりにならないで下さい。個人でも測定はできる。行政でできない訳がない。再開発組合任せにするのか。あなた方が受けて立つことが当然である」

住民「子どもの頃から住んでいて、凧揚げをしていたからわかるが、ちょっと上に行くと風が強くなる。二子玉川ライズの高層ビルができたため、高いところの風がビルにぶつかり、降りてくる」

世田谷区「一定規模以上の開発ではアセスが義務付けられている。事前だけでなく、事後アセスもしなければならない。事業者に実施を義務付けている制度である」

住民「再開発組合が制度の趣旨に則ってアセスを実施すると思うか。いい加減で、まやかしに過ぎない。再開発組合が事前アセスで風のデータとして、どこの場所のものを使ったか御存知ですか。丸の内のものを利用している」

【林田力コメント】二子玉川ライズの風洞実験のための風のデータは東京都千代田区大手町の東京管区気象台のものを利用した。このために多摩川沿いで風の強い玉川地域の実情を反映していないのではないかと疑問視されている(林田力「二子玉川再開発説明会で住民の懸念続出=東京・世田谷」PJニュース2011年5月16日)。

住民「再開発組合のアセスでは強風の出現頻度でレベル付けしているが、頻度の問題ではない。頻度は少なくても、強い風が吹けば転倒事故などが起きる。しかも事後アセスは2期事業竣工後のため、数年後になる。それまでにも事故が起きる。世田谷区が状況を把握すべき」

世田谷区「まずは住民と一緒に測定し、積み上げていきたい」

住民「ハンディタイプの風速計は玩具のようなものである」

世田谷区「0.1歩でもお互いに確認し合いたい」

住民「2期工事の見直しも考えるべきである。対策をしないから事故が起きる。世田谷区の職員には区民のためにやろうという気持ちがない。職員は区外に家を持ち、区内で育ってきた人間の声に耳を貸さない。これはどういうことか。住民はガス抜きを求めていない。木を植えても効果はない。住民をごまかすだけのテクニックで定年を待つだけならばペテンであり、詐欺である」

世田谷区「改善しなければならないという思いは区も一緒」

住民「区の行動に限界があるとは思わない。世田谷区は東急電鉄に舐められている。世田谷区長と東急電鉄の間には密約があると皆が言っている」

住民「我々も全ての問題を把握している訳ではない。自転車に乗っていた子どもがビル風で転倒したという話も聞いている。車道に面した場所で、車に轢かれる危険もあった。住民説明会が必要である。そのように提案したが、動きがない」

住民「ビル風は南風ばかりが問題とされているが、北風も強い。2月18日と3月15日に測定した。両日とも北西の風が吹いていた。3分間計測し、最高値を求めた。2月18日は多摩川の河原では毎秒3から5メートルの風であった。転倒者が出た『二子玉川ライズ オフィス』そばの多摩堤通りでは風速6.2メートル、マンション『二子玉川ライズ タワー&レジデンス』そばでは9メートルにもなった。大井町線の線路とオークモールに挟まれた通路では駅寄りの出口で7.5メートル、上野毛方面の出口で9.7メートルになった。この風速9.7メートルは歩けないレベルである。この数値はピークであるだけでなく、ずっとこのくらいの数値であった。この通路では駅寄りの出口と下の御げ方面の出口で反対方向の風が吹いているため、歩行者の危険が高い。

3月15日は『二子玉川ライズ オフィス』そばの多摩堤通りでは6.7メートルになった。大井町線の線路とオークモールに挟まれた通路では駅寄りの出口で9.6メートル、上野毛方面の出口で10.2メートルになった。15日の深夜も相当吹いていた。

大井町線の線路とオークモールに挟まれた通路には警備員が巡回していたが、警備員には歩行者を補助する気配はなかった。再開発組合には意識がない。世田谷区は把握しているのか。今まではどうであったのか。今後はどうするのか。」

住民「『再開発組合が指導に応じない』は言い訳にならない。区職員の仕事ができないことを区民に晒さなくてもいい。計画は、いつまでに実施するということを明らかにする。去年の三月から要請していたが、一年経ってもやらない」

住民「植栽にどれほどの効果があるのか教えて下さい。長い年月を経て樹木が成長すれば防風林になるケースもあるが、二子玉川ライズの場合は何年経ってもダメである。樹木とビルの位置関係では枝が伸びるとビルにぶつかり、伐採されてしまう」

世田谷区「環境をより良くしたいと考えている」

住民「悪いものを良くすることは、より良くとはならない」

世田谷区「風が強いところもあれば弱いところもある」

住民「客観的な過失があるから、事故が起きた」

世田谷区「道路の管理責任とは段差などがないことを指す」

住民「横断歩道を渡っている人の安全を確保してほしい。それができなければ、責任を果たしてほしい。裁判がどうのこうのは逃げ口上である」

住民「再開発前の風は今ほど強くなかった。多摩堤通りも今より狭かったために横断歩道を渡る危険も小さかった。二子玉川ライズによって危険は拡大している。因果関係を知りたい。事故が起きた時間の風のデータを出せないという。隠蔽である」

住民「ビル風で転倒事故が起きたことを問題視している。段差がないから管理責任を負わないという話は理由にならない。安心安全の街づくりは事業者任せか」

世田谷区「行政と事業者には各々の役割がある」

住民「その主張には二子玉川ライズを世田谷区が推進してきた事実が抜けている。責任の一端は世田谷区にある。『組合に指導しています』だけでは済まない。その指導も甘っちょろい」

住民「再開発組合に義務があるならば、しっかり要求しなさい」

世田谷区「風対策の費用負担は全て再開発組合が行っている。世田谷区は支出していない」

住民「二子玉川ライズではビル風のために風が回っているから、通常よりも危険である。風速8メートルになる前から歩行者に注意喚起しなさい。いきなり空襲警報を出しても対応できない。警戒警報が必要。しっかり区長の考えを聞きたい」

世田谷区「指示記録計設置の要望は、私(板垣)の方からも再開発組合に申し入れる」

住民「再開発組合に任せるという世田谷区の常識は我々の非常識。『努力している』と言う人間は努力していない。『勉強している』と言う学生が勉強していないことと同じである。住民は自らの義務を果たしている。肩透かしやごまかしはしないで欲しい。横綱相撲を期待する。所管は自分達のミスに気付いていない。失敗に学ぶ勇気がない。『一人は万人のために万人は一人のために』の精神で行動を望む。

風速計の貸し出しがなければ住民が困る。誠実さが欠けている。やるべきことをやってみせて下さい。計画は日にちを定めてほしい。想定外は最早許されない。まだまだ安心安全について意識が浅い。地域住民は納得できない」

世田谷区「一つでも皆さんが安心できるように頑張っていく。歩みとしては遅いけれども、努力していることは……」

住民「努力は認めない」

世田谷区「努力は評価しないと言われたばかりであった。半歩でも踏み出したい」

住民「再開発組合の回答次第で前に進めないという状況は困る。六本木ヒルズの回転ドアでは子どもの死亡事故が起きた。森ビルでは負の遺産として社員に見せている」

住民「交通広場で夜間にスケボーやローラースケートをする連中がいて近所迷惑になっている。非常識な連中をどうするか」

世田谷区「立ち入り禁止の掲示をする。すでに注文しているが、予算の関係で支払いは来年度になる。設置時期は分からない」

住民「注文する時に納期を定めないのか」

担当者が電話で確認したところ、警察署と文案を調整中で、まだ発注していない事実が判明した。お役所仕事の杜撰さを目の当たりにすることになった。

住民「指示記録計を設置し、テロップで歩行者に注意喚起すべき。ハンディタイプの風速計では目的を達成できない。強風時には随時区役所の人が測定に来るのか。先週は養成したが、拒否された。住民は二十四時間生活している。風速はビルの影響を受けていない場所でも測定する必要がある。『二子玉川ライズ オフィス』の屋上でも測定してほしい。多摩川からの風が『二子玉川ライズ オフィス』にぶつかる。ちょうど川が曲がっている場所である。

世田谷区は根本的な対策を何もしていない。何をしても横断歩道を渡る人には風は防げない。排ガスや騒音防止のために道路をシェルターで覆った例がある。世田谷区には根本的な対策を求める。専門家を入れて下さい」

住民「謝罪文は受け取れないので直して下さい」

住民「夜中のビル風の音は酷い。一晩中、ヒューという音がする。工事の騒音も酷かった」

住民「『二子玉川ライズ オフィス』の16階は修正すべきであった。角をとればビル風は多少弱くなっただろう。あの高さのビルができたためにガレリアは真っ暗である」

世田谷区「省エネと聞いている」

【林田力コメント】二子玉川ライズ・ショッピングセンターは環境省「省エネ・照明デザインアワード2011」商業・宿泊施設部門グランプリを受賞した。しかし、二子玉川ライズ・ショッピングセンターが省エネに相応しくないことが次の住民発言により明らかになる。

住民「本来ならば自然光で十分な場所で、電気で照明しようという考えがエコに反する。設計から間違っている。二子玉川ライズのイベントは暗いところで行っている。植木の一つも置いておらず、変である。

世田谷区の方針に反している。世田谷区の水と緑のコンセプトから外れる。陽当たりがよい場所は『二子玉川ライズ オフィス』の窓際だけだが、事務所では直射日光は望ましくなく、シャッターを降ろしている。二子玉川ライズは賑わいの拠点にもなっていない」

世田谷区「買い物客は多いと聞いている」

住民「平日の午前中は閑散としている。二子玉川ライズには買いたいものがない。高島屋とくらべて格の低さを感じる」

住民「区長は二子玉川ライズの公益性を精査すると言っている。公共性や公益性と言えば教育、福祉、医療、防災対策などのインフラを連想する。二子玉川ライズは教育とは無関係である」

世田谷区「カルチャースクールはある」

住民「カルチャースクールのような商業ベースのものを公共的な教育とは呼べない。川崎市とは大きく違う。川崎市には子ども文化センターなどの施設がある。二子玉川ライズの商業施設にも子ども達が楽しめるものはない。二子玉川ライズの客層は限られている。かつての『いぬたま・ねこたま』やナムコ・ワンダーエッグのような魅力はない」