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二子玉川東地区再開発見直しを求める集い

初出:林田力「二子玉川東地区再開発・見直しを求める集い」JANJAN 2008年1月20日

「にこたまの環境を守る会」(野崎宏会長)主催で「わたしたちのまち二子玉川を守る集い」が2008年1月14日、二子玉川地区会館(世田谷区)で開催された。二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(以下、二子玉川東地区再開発)による住環境悪化に対する住民らの懸念の高さが浮かび上がった。

守る会は二子玉川東地区再開発の見直しを求めて活動している団体である。二子玉川東地区再開発では東京都世田谷区玉川の土地に超高層ビルの建設や道路の拡幅を計画する。

守る会が再開発に反対する主な理由は以下の通りである。
・再開発により、環境が破壊される。具体的には超高層ビル群による景観破壊、日照阻害、風害、電波障害、交通量増大による大気汚染などである。
・事業予定地の85%以上を東急電鉄、東急不動産らの東急グループが所有しており、開発目的に公共性が全くない。
・地権者や住民に十分な説明もなく世田谷区と東急グループ中心に進められている。
・東急の利益中心の開発関連事業に約10年間で700億円の税金が投入される。一方で世田谷区では保育園、幼稚園の保育料値上げ、各種施設使用料値上げなど、区民の負担増加が見込まれている。

「集い」の正式タイトルは「今からでも遅くない、この再開発はやめ、やり直そう、わたしたちのまち二子玉川を守る集い」である。守る会メンバーが事前にチラシ配布や電子メールで参加を呼びかけていた。参加者の中には個人的立場と断りを入れつつ、世田谷区議会議員もいた。

「集い」は大きく3部のパートに分かれた。最初に主催者側からの説明、次に参加者から再開発事業で困ったことについて意見聴取、最後に再開発事業を見直させるためのアクションについて議論した。

主催者側の説明では、冒頭で野崎会長が挨拶した。「長年、東急沿線に住み、東急ファンだった。しかし、住民のことを考えず、利益優先で再開発を進める東急の姿を見て、現在は東急不安になっている」と冗談を交えて語り、会場の笑いを誘った。

再開発事業の問題点説明では「市民政策を実現する会・せたがや」の成田康裕氏が中心となった。成田氏は東急大井町線等々力駅の地下化への反対運動を進めた人物である。本来はパワーポイントで作成した資料をプロジェクタで映す予定であったが、機械の調子が悪いとのことで、急遽、紙で配布した資料で説明することになった。
主な説明内容は以下の通りである。

・住宅地で100メートルを越える超高層ビルが複数棟も建てられる例はない。
・超高層ビルによる不快な圧迫感は形態率という客観的な数値によって実証されている。これは東京都環境影響評価条例に基づく東京都環境影響評価技術指針でも採用されている基準である。圧迫感は主観的な問題にとどまらない。
・超高層ビルが建てられればデジタル放送でも電波障害は発生する。顔が二重に映る。
・再開発予定地周辺は高さ制限が課せられているが、再開発予定地には高さ制限がない。お互い様ではなく、周辺住民が一方的に迷惑を被る再開発である。
・過去に丸子川の洪水で床上浸水になったことが複数回あるが、再開発で盛土を行うため、多摩川へ雨水が流れていかず、周辺地域の浸水被害が拡大する危険がある。

特に最後の浸水被害の問題は深刻である。高層ビル建設による景観破壊や交通量増加による大気汚染は容易に推測がつくが、再開発によって浸水被害が増大するという点は説明されなければ気付かない問題である。
続いて再開発で困っていることについて、参加者の意見を徴収した。様々な意見が出された。主な意見は以下の通りである。

「今の景観が気に入っている。再開発ビルが建つようであったら、引越ししたい」
「バス停の前のケヤキが全て伐採されたのがショックであった。再開発によって自然が失われてしまう」
「再開発地域で盛り土をするため、家の上を道路が通る形になる。排気ガスが心配」
「世田谷区は何故、再開発組合の言いなりになっているのか」
「税金によって地域住民を追い出し、税金によってビルを建て、公害を撒き散らす」
「後世に残す財産がコンクリートの建物だけというのは貧しい」
「超高層マンションでは住民間の確執が生まれるのではないか。地域住民としての一体感は生まれないのではないか」
「再開発組合主催の説明会に出席したが、腹が立って仕方がない。ガス抜きのための説明会であって、住民の意見を聞こうという姿勢は皆無である」

最後に「どうすれば再開発を止められるか」というテーマで議論された。まず成田氏が「必ず止められる。今からでも決して遅くはない」と力説した。既に一部で工事が始まっているが、それらは東急の息のかかった場所である。工事着手の既成事実で住民に諦めさせるのが再開発組合側の狙いである。等々力駅地下化工事を止めさせる運動の中心になった成田氏の発言だけに説得力があった。

会場からは成田氏に同調して、「今からでも止められるという点をもっと強調すべき」との声が出された。チラシには「今からでも遅くない、この再開発はやめ、やり直そう」と書いてあるが、もっと大きく目立つように書いた方が良いとの意見が出された。

別の意見として、「東急ストア・プレッセや東急百貨店での買い物をしない」というものもあった。再開発を実質的に進めているのは東急グループであり、彼らは経済的利益になると判断しているから進めている。従って近隣住民から反発を受ければ経済的損失が生じることを分からせなければならないという意見である。

一方で「電車に乗らない訳にはいかない」ため、不買運動の限界も指摘された。東急電鉄の基幹事業である鉄道事業は地域独占の公益事業という性格を持つ。本来、公共性の高い企業が周辺住民の声を聞かず、反対されている再開発を進めようとしているところに問題があるとの意見が出された。

主催者側からは、二子玉川東地区再開発を巡り、現在2件の訴訟が東京地方裁判所に係属していることが説明された。
・再開発組合に対し、再開発事業の差し止めを求める民事訴訟(平成17年(ワ)第21428号再開発事業差止等請求事件)
・世田谷区に対し、再開発事業への公金支出の差し止めを求める住民訴訟(平成19年(行ウ)第160号公金支出差止請求事件)

野崎会長は「人によっては『裁判までは……』という意見もあるが、裁判から逃げていたら絶対に解決しない」と語る。住民側が裁判まではしてこないと分かれば、事業者側も恐れることなく事業を進め、当然得られるべき譲歩さえ得られなくなるのが実情である。

2回目の集いを2月8日の18時から二子玉川地区会館で開催する予定である。この場で、より具体的な対策を考えていくことが確認された。

今回の「集い」の良かったところは、第1に出席者の意見を広く聞き、議論する姿勢があったことである。この種の運動では中心的に活動している人と、そうでない人とでは知識の差が生じる。そのため、新参の人の発言が古参の人には分かりきっていることも少なくなく、頭ごなし否定したり、一方的な説明が延々と続いたりということになりがちである。今回の集会では主催者側がすぐに回答を全て説明してしまうのではなく、対話の中で答えを出していく姿勢であった。

第2に時間配分を適切に行っていたことである。この種の集会では発表者が夢中になって予定時間以上の時間を費やし、最後は時間切れになることが多い。再開発で困る点について参加者から活発な意見が出されたが、最後の30分間は「再開発を止めるための手立て」を議論する時間として確保した。これら進め方については同種の集会を主催する人々にとって参考になると考える。

参加者からの発言主体の主体では議論の発散や脱線が起こりがちであるが、「集い」では、それほどでもなかった。これは司会の巧みさに加え、参加者間で集約できるほど、二子玉川東地区再開発は問題点が明確化しやすいことを意味していると考える。

にこたまの環境を守る会集会

組織依存ではなく、自立的な住民の反対運動

「にこたまの環境を守る会 公正な判決を求める原告・支援者の集会」が2008年2月23日、東京都世田谷区の上野毛地区会館にて開催された。同会会員を中心に約50名が参加した。集会では住環境を破壊する二子玉川東地区再開発事業の見直しを求めるための活動状況を報告しあった。組織に依存するのではなく、住民が自発的に行動する点が印象的であった。

同会は二子玉川周辺の住民を中心に結成され、二子玉川東地区再開発事業の見直しを求めて活動中である。同会にとって現在は一つの節目に当たる時期である。同会のメンバーら周辺住民らが原告となって、二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高理事長)を相手に再開発事業の差し止めを求めた訴訟が2008年1月28日に結審したためである(記事「二子玉川東地区再開発差止訴訟結審」参照)。

訴訟手続きの点では後は5月12日の判決を待つだけという状況である。しかし、座して待つだけとしないところが同会の素晴らしい点である。同会は現在の二子玉川東地区再開発事業の中止を求めているが、会の目的は「参集する住民の総意で「新たなまちづくりの夢」を語り合い推進すること」である(会則第2条)。判決が出されて終わりではなく、現在の再開発計画の問題・違法性を多くの人々に周知し、地域全体に運動の和を広げ、住民主体のまちづくりを目指す。

今回の集会は、そのために各自の活動を報告しあい、お互いに取り組めることを確認しあう場であった。

最初に野崎宏会長が挨拶した。結審は一つの通過点という。自分達が既成概念にはまってしまっては駄目である。民意を強めて、なすべきことをなしていきたい、と。

続いて再開発差し止め訴訟で代理人を務める渕脇みどり弁護士と吉田悌一郎弁護士が「私たちの闘いを振り返り、今後の展望を切り開くために」と題して話した。

渕脇弁護士は怒りの対象の具体化を目指したと語る。裁判の過程で真実を明らかにしていくことで、何が問題で何が行われているのかが明確になり、怒りの対象が具体化する。怒りはパワーの源であり、同じ怒りを共有する人々の連帯は一層大きな力になる、と。

吉田弁護士は薬害肝炎訴訟原告の例を出しながら、「辛い時こそ頑張り時」と強調した。薬害肝炎訴訟は血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染させられた患者らが国と製造元の製薬会社「ミドリ十字」を引き継いだ「田辺三菱製薬」(大阪市)などに損害賠償を求めた裁判である。

吉田弁護士は「原告にとって大阪高裁の和解骨子案を拒否した時が一番辛かったはず」と語る。和解骨子案を受け入れれば自分達原告には和解金が入るが、同じ被害者でも救済されない人々も出てしまう。一方、拒否すれば自分達も救済されずに終わってしまう可能性もあった。それでも原告側は被害者全員の一律救済との原則論を貫き通し、それが世論を動かし、政治決着となった。そこに至ったのは地道な活動の積み重ねがある、と。

続いて住民から活発な報告がなされた。注目すべきは各住民が自発的に行動していることである。報告された内容は以下の通りである。

1.再開発により、洪水時の周辺地域の浸水被害が悪化しないことの具体的な根拠の説明を世田谷区に要求し、回答待ちの状況である。再開発地域は人工地盤で数メートルの盛り土を行う計画のため、雨水が再開発地域で塞き止められ、洪水被害が起きやすくなることが懸念されるためである。

2.建設会社での業務経験と再開発で建設されるマンションの施工会社の工事所長に直接確認した結果から、盛り土の人工地盤が想像以上に高くなるとの推測を披露した。再開発を推進する側は曖昧な説明しかせずに、住民に真実を知らせないようにしていると主張する。

3.世田谷区議会議員に再開発関連予算の見直しを求めるべく働きかけている。活動を始めた頃に比べると、再開発に反対する議員が数倍に増えた。

4.自分の住む地域で再開発見直しを求める署名活動を始め、世田谷区議会に提出した。

注目すべきは報告された住民の活動は、守る会の執行部が指示を出した結果ではなく、住民各々が自発的に動いていることである。二子玉川東地区再開発事業の見直しを求める運動は決して特定の反対運動家だけが行っている訳ではないことがポイントである。

反対運動にとって組織化は力であるが、反面、組織への依存心も生じやすい。一般のメンバーは「自分がやる」ではなく、「組織がやってくれる」という意識になってしまいがちである。その結果、活動しているのは役員だけとなってしまう危険性がある。

最初の洪水被害が悪化しないことの根拠説明要求を例にすると、周辺住民としては関心事であっても、自分で直接、世田谷区に問い合わせるのは気が引けるという方も少なくないだろう。その結果、自分で問い合わせることよりも、守る会の執行部に対し、「守る会として世田谷区に問い合わせて欲しい」と要望することを選択する人も少なくないと思われる。これを一概に誤りと否定するつもりはない。個人ではまともに取り合ってくれなくても、反対運動組織の代表者名で問い合わせれば、それなりの回答が返る場合もある。しかし、皆が皆、そのような形にしたならば反対運動組織の役員に負荷がかかってしまうことも事実である。

そして役員のみが活動するという状況は反対運動組織にとって不健全である。積極的に活動する役員が何らかの理由で活動を止めてしまえば全体の活動が止まってしまう。「うるさいのは役員だけ」という誤った印象を開発側に与えてしまう可能性もある。開発側の切り崩し工作によって、役員が地域から孤立してしまう恐れさえある。

この意味で守る会は反対運動として強い組織と言える。メンバーが組織に依存するのではなく、自立的に行動している。これは守る会が「二子玉川東地区再開発を考える会」、「駒沢通りの環境を守る会」、富士見台や上野毛の住民有志などの様々なグループから構成される連合型組織として発足した経緯も影響している面もある。何よりメンバー一人一人の意識が高いことが一番の要因である。

活発な活動報告に対しては、江東区東陽町から集会に参加した「スカパー巨大アンテナに反対する住民の会」の門川淑子代表も感心する。スカパー巨大アンテナに反対する住民の会は電磁波から近隣住民の健康・安全を守るため、株式会社スカイ・パーフェクト・コミュニケーションズが東陽町に建設するパラボラアンテナに反対している。しかし、反対運動を進める上で住民の組織化に苦労している面もあり、今回の集会は大いに励みになったと語った。

最後に二子玉川東地区再開発中止を求める決議文を読み上げて集会を終えた。決議文では再開発反対の理由を大きく3点にまとめた。

第1に再開発の内容である。再開発は住環境・自然環境を破壊する。
第2に再開発の進め方である。再開発地域の最大の地権者である東急グループ主導で進められ、住民は蚊帳の外に置かれている。例えば用途地域が変更され、公園になるべき土地に高層ビルが建てられるようになり、東急グループに莫大な利益をもたらすことになる。
第3に税金の無駄遣いである。世田谷区が財政難・受益者負担と称し、区民の負担を増やすならば、再開発事業への公金投入を先ず止めるべきである。

●参考URL
スカパー巨大アンテナに反対する住民の会
http://www.ab.auone-net.jp/~fmt/skphp2.htm

二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足

住民団体「二子玉川東地区再開発を考える会」総会が2008年11月30日に世田谷区玉川総合支所・第1集会室で開催された。総会では「二子玉川東地区再開発を問う住民の会」(略称:二子再開発を問う会)に満場一致で改組することが決議された。

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業は東京都世田谷区の二子玉川駅周辺に高層マンションやホテルなどを建設する計画である。これに対し、世田谷区民を中心として結成された「二子玉川東地区再開発を考える会」は景観破壊など再開発の問題を広く追及する。総会には50名近くの住民らが参加し、小さな子ども連れの家族も出席するなど世代的な広がりを感じさせた。

総会は経過報告や会計報告といった事務的な議事で始まった。司会進行は事務局の飯岡三和子氏が務めた。内容は大きく、「二子再開発を問う会」への改組、再開発差し止め訴訟の方針についての弁護士の説明、会員による討議の3つに分かれる。

第1に改組については世話人の保坂芳男氏が説明した。「考える会」は再開発計画の内容を開示させて、住民が街づくりについて考える判断材料としていきたいとの思いから、この名称になったという。その後、再開発工事が開始され、再開発地域に建設される分譲マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の販売登録が受け付けられるなど再開発の状況は大きく変わった。住民運動も「考え、研究する集団」から「工事を差し止める戦う集団」へと性格が変わった。それに相応しい名前として「二子再開発を問う会」としたいと提案した。

「二子再開発を問う会」は「会の目的」において二子玉川東地区再開発を「周辺住民の迷惑を顧みない東急グループの利益優先の事業」と批判する。そして「安心して住める豊かな自然・住環境」と「住民参加の街づくり」を確かな権利として確立することを目指すとする。

その上で保坂氏は重点的な活動方針を説明する。既に再開発への反対運動は裁判という形で具体化している。二子玉川東地区市街地再開発組合に対して再開発事業の差し止めを求める民事訴訟と世田谷区に対する再開発事業への公金支出の差し止めを求める住民訴訟の2件を提起した。訴訟の原告と支持者によって「にこたまの環境を守る会」が組織され、法廷活動を進めている。これに対し、「問う会」は法廷外の住民運動を拡大し、世論を喚起することが使命と説明する。

続いて「問う会」の体制の説明に移る。住民運動の拡大という使命を実現するため、体制は大きく強化された。世話人は従来の10名弱から20名弱に倍増された。世話人の住所も、これまでは玉川、瀬田、上野毛など再開発隣接地域に偏在していたが、新任の世話人は豪徳寺、等々力、川崎など地理的に広がっている。

第2に再開発差し止め訴訟についての説明である。代理人の淵脇みどり弁護士ら3名の弁護士によって訴訟の方針が説明された。再開発地域周辺の周辺住民ら64名は再開発組合に対して再開発事業の差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴した(平成17年(ワ)第21428号)。東京地裁平成20年5月12日判決は請求を棄却したが、住民は控訴し、現在は東京高裁で係属中である(平成20年(ネ)第3210号)。

原希世巳弁護士は最初に地裁判決の構造を説明する。地裁判決は再開発による圧迫感や景観破壊が権利侵害となることを認めながらも、再開発事業の公共性を理由に権利侵害は受忍限度を超えないとした。この判決は住民にとっては残念な内容であるが、控訴審を勧める上では戦いやすい判決であると解説する。

「再開発に公共性があるから許される」という論理ならば、再開発に公共性がなければ前提が崩れる。そのため、控訴審では都市工学や社会学などの知見を活用して、分譲マンションやホテルを建設する再開発計画に公共性がないことを立証すると述べた。

次に牧戸美佳弁護士が水害の問題について説明した。一審では再開発による水害の危険性について資料が十分ではなく、踏み込めていなかったと振り返る。高層ビルと集中豪雨やヒートアイランド現象の関係など研究成果を踏まえて水害の危険を訴えていくと表明した。

最後に淵脇みどり弁護士は「町全体が東急グループによって私物化され、住民が犠牲になっている」と再開発の状況を分析した。世界的な経済不況の中でハコモノを建設する余裕はなく、地域にあった街づくりを再検討する必要があると力説した。再開発事業をめぐっては多くのステークホルダーが存在するため、様々な分野で支持を広げていくべきとする。

事務局からは2008年12月16日11時から東京高裁822号法廷で行われる控訴審口頭弁論の傍聴の呼びかけがなされた。

第3の住民の討議では再開発の深刻な問題が改めて明らかになった。主な意見を紹介する。
・再開発組合解散後に発生した被害(地盤沈下など)については誰も責任をとろうとしない。
・再開発地域の降雨は水害の危険を高めるので周辺地域に流さず、敷地内で処理することを求めたが、法律の規定以上のことは行おうとしない。
・工事の振動と騒音が酷すぎて、寝ていられない。
・世田谷区の税金が東急グループのハコモノに浪費されているのは区民全員の問題である。

興味深い点は住民が自発的に行動している点である。署名集めや工事中止の申し入れ、日影図の提示依頼など様々な活動を報告しているが、これらの活動は世話人の指揮の下、会として行っているわけでは必ずしもない。各人が問題意識に沿って自発的に動いた結果である。組織に期待するのではなく、各人が活動した結果を組織にフィードバックする。ここには理想的な市民運動の姿がある。住民意識の高さと街づくりへの真剣な思いを感じさせる総会であった。

二子玉川再開発の解決をめざす集会開催

住民団体「にこたまの環境を守る会」は2009年2月28日に「二子玉川再開発の解決をめざす集会」を玉川区民会館(東京都世田谷区)にて開催した。集会では生存条件の破壊反対・公共性に反する事業への公金支出反対・国民主権のまちづくりの3点を骨子とするアピール文を採択した。

「にこたまの環境を守る会」は「二子玉川東地区再開発事業を問う住民の会」など二子玉川東地区第1種市街地再開発事業を問題視する住民団体が結集した上位団体である。周辺住民らによる再開発事業の差し止めを求める民事訴訟や世田谷区に対して公金支出の差し止めを求めた住民訴訟の支援団体となっている。

二子玉川東地区再開発事業は2007年に工事が開始され、高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」などの建設や広告が進められている状態である。しかし、集会に参加した住民達は意気軒昂であった。これには大きく3点の要因がある。

第1に現実に工事が行われていることにより、被害が顕在化し、再開発事業に対する住民の怒りが共通認識として高まっていることがある。

第2にサブプライム問題に端を発した世界同時不況の深刻化がある。100年に一度の不況下でタワーマンションを建設する再開発事業は明らかに時代錯誤的である。これは反対運動の正しさを再確認させる結果となった。集会では「東急グループの「事業遂行能力」の危うさ」という表現までされたほどである。

第3に前々日の26日に鳩山邦夫総務相が東京中央郵便局の局舎取り壊しの見直しを表明したニュースがある。これも鳩山総務相が突然表明したわけではなく、ここに至るまでには局舎保存を求める人々の地道な活動があった。諦めてはいけないという重要性を再認識させた。

集会では世話人の浜田博氏が司会を務めた。浜田氏は冒頭で集会を今後のとりくみの検討・行動提起の場と位置付けた。

続いて同じく世話人の飯岡三和子氏より活動報告及び今後の予定が説明された。大きなものに再開発事業の差し止めを求める民事訴訟の控訴審の証人尋問がある。4月14日14時半から東京高等裁判所822法廷で住民側が申請した坂巻幸雄・証人が洪水や災害問題、公共性について陳述する予定である。坂巻氏は築地市場の豊洲移転の問題点を指摘した人物であり、証言内容が注目される。

次に志村徹麿氏(世話人)が二子玉川再開発問題の解決を目指すアピール文について説明した。内容は大きく3点からなる。

第1に生存条件の破壊を許さないことである。大気汚染や洪水を悪化させる再開発事業は生命と健康を危険に晒す複合被害であると被害の性質を踏み込んでいる。これは周辺住民の不利益は受忍限度に過ぎないとの再開発組合側の主張への反論になる。

第2に公共性に反する事業への公金支出反対である。二子玉川東地区再開発は周辺住民の犠牲によって最大地権者である東急グループが利潤を追求する事業であり、700億円もの税金を投入することは許されないと主張する。ここにおいて再開発反対運動は周辺住民のみならず、全ての納税者が関心を持たなければならない問題となる。

第3に国民主権のまちづくりである。人口減少・高齢化社会で持続可能な経済発展につながるように事業計画を住民参加で見直すべきと提言する。

再開発の訴訟で住民側の代理人を務める淵脇みどり弁護士は「工事の着工を遅らせたことは粘り強い反対運動の成果」と強調した。今や鳩山総務相のような自民党の閣僚までが再開発の見直しを発言する時代である。この時代になるまで再開発事業を遅らせたことは大きな成果であり、価値観の変化を積極的に利用すべきと発言した。また、淵脇弁護士は自らが作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。

後半は住民の意見発表や活動報告にあてられた。深刻な工事被害、行政や議会への積極的な陳情活動など活発な発言がなされた。夜間の工事を工事現場に抗議しても、現場担当者は「東急電鉄の担当者がドンドンやれと言っている」として取り合わなかったという。また、議会への請願では自民党・公明党議員の消極的姿勢に失望したとの感想が述べられた。

印象的な意見として東急電鉄の「新しい街づくり」のキャッチコピーへの批判があった。東急電鉄が「新しい街づくり」を宣伝する何十年も前から、住民は地域に愛着を持って住み続けている。東急電鉄は既存の住民を否定して新しい街づくりをしようとしているとしか思えないと批判した。

集会には竹村津絵、山木きょう子の両世田谷区議会議員(共に生活者ネットワーク)も出席した。竹村議員からは世田谷区の平成21年度予算について簡単に説明した。山木議員は「議会を変えるのは皆様であり、住民がまとまって運動すれば変えられる」とエールを送った。

最後にアピール文を採択して集会は終了した(このアピール文には私も賛同した)。世の中は大きく変わりつつある。「国民主権のまちづくり」という積極的価値を打ち出した住民運動の新たな展開に期待したい。

にこたまの環境を守る会11・3集会開催

「にこたまの環境を守る会11・3集会〜『こんな理不尽な再開発は許せない』の怒りを、これからの運動につなげるための集会」が2009年11月3日に上野毛地区会館(東京都世田谷区)にて開催された。「にこたまの環境を守る会」は二子玉川東地区再開発の問題に取り組む住民団体である。集会では様々な団体の参加者が出席し、再開発の問題の広がりが感じられた。

冒頭挨拶では新井英明副会長が集会の趣旨を説明した。当初は総会として企画したが、形式的な内容は避け、決起集会にしようということで、この形になったとする。

淵脇弁護士からは係属中の2つの裁判について説明がなされた。再開発組合相手の民事訴訟では裁判所が洪水被害に関心を示し、その点の審理を進めているところである。世田谷区相手の住民訴訟では世田谷区が再開発組合の報告書だけで公金の支払いをしている実態が明らかになった。領収書などの添付もない杜撰さである。

両訴訟とも相手方は形式的な反論しかしていない。民事訴訟では洪水時には高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の駐車場を水没させるから問題ないという、まともなマンションならばあり得ない反論がなされた。住民訴訟では再開発によって移り住む新住民が幸せになるから、既存住民は我慢しろと言わんばかりの反対尋問であった。これら相手方の論理の穴を炙り出すことに成功しているとする。最後に淵脇弁護士は二子玉川の美しさを自ら作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。

住民訴訟で証言した岩見良太郎・埼玉大学教授からは日本の都市計画の異常性が説明された。開発が善とされ、高層ビルを建てて企業が金儲けする計画が経済成長するということで公共性があると正当化されてしまう。本当の公共性は何かということを考えなければならない。

そこで公共性の判断基準として「地域環境の優れた資質を引き継ぎ発展させるまちづくり」など5つの公準を立て、二子玉川東地区再開発が公共性を満たしていないことを意見書や証人尋問で示したという。最後に岩見教授は二子玉川の住民運動は日本中のまちづくりに影響を及ぼす可能性があるし、そのようになるべきであるとエールを送った。

集会では他団体からの参加者も発言し、交流を深めた。代表的な団体は以下の通りである。
・二子玉川東地区住民まちづくり協議会
・二子玉川の環境と安全を考える会
・玉川1丁目の住環境を守る会
・外環道検討委員会
・景観と住環境を考える全国ネットワーク
・八ツ場ダムをストップさせる東京の会

特に印象的であった内容は二子玉川の環境と安全を考える会の発言であった。これは二子玉川南地区の大規模堤防計画の見直しを求める団体である。巨大な堤防ができると、玉川一丁目は堤防と再開発地域で挟まれた、すり鉢の底のようになり、かえって洪水被害が増大する。これは再開発地域の北側が再開発地域の人工地盤によって洪水被害が激化することと同じである。堤防と再開発は同根の問題であり、共通の認識の下に戦わなければならないと主張した。

また、景観と住環境を考える全国ネットワークの小磯盟四郎副代表は人口減少によって住宅が余りつつあり、放置マンションが出始めていると説明した。この中で「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」のような巨大マンション建設は幽霊マンションを作ることになるとしか思えないと批判した。

住民からは様々な意見が出されたが、工事被害の深刻さが改めて浮き彫りになった。工事の重層的な下請け構造で、責任が有耶無耶にされる。元請けの東急建設らに約束させた内容が下請けや孫受け会社まで徹底されない。工事会社は説明会を開催せず、戸別訪問で済ませようとするため、被害の実態を共有して共同行動することの重要性が確認された。

また、その場しのぎの工事会社の説明のエピソードも披露された。住民が工事会社に夜間工事を抗議したところ、「急に決まった工事で、人手がないから夜にやる」と開き直られたという。そもそも工事が急に決まること自体が不自然である上、優先度が高い工事ならば他の現場の要員を使えばよく、あえて夜間に行う必要はないと改めて抗議した。

これを受けて、工事は機械掘りから手掘りに変わり、騒音・振動は緩和された。工事を手掘りで進めるということは時間的余裕があることになる。つまり緊急性のある工事だから住民は我慢しろという当初の工事会社の説明は崩れた。再開発事業自体がだましだましで進められており、工事説明も住民をごまかそうとする傾向がある。このために企業の説明を疑う姿勢が必要と指摘された。

目の前で行われている工事被害対策というミクロの世界から、他団体と共通するまちづくりの問題共有というマクロの世界までを包含する有意義な集会であった。