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再開発全国研究集会で二子玉川ライズ問題を現地視察

区画・再開発連絡会議は2011年10月22日から23日まで区画整理都市再開発対策全国研究集会を開催した。22日の会場は江東区砂町文化センターで、記念講演は「大震災立ち上がる人とまちーいのちと暮らしを抱きしめるまちづくりへ」である。この日の午後全体会では20分程度、環境破壊の二子玉川ライズの問題が報告される。東急グループ主導の二子玉川ライズの問題を東急不動産だまし売り裁判の舞台の江東区で発表する意義は大きい。

23日には世田谷区玉川で現地分科会を開催し、二子玉川東地区再開発問題に携わる住民のガイドで超高層の林立する二子玉川ライズを歩き、環境破壊の実態を明らかにした。
二子玉川駅改札で集合した一行は改札を出たところにあるガレリアで風害を体感した。風がほとんどない状態でも南側の出口に面した箇所だけは風が通り抜ける状態である。住民は「ガレリアで子どもを遊ばせたことがあるが、風が吹くところは嫌がった」と説明する。
ガレリアを南側の出口から出ると、多摩堤通り(補助第125号線)に面する。ここの出入り口は閉鎖されるようになっており、強風時は閉鎖されるという。外側には風速計が設置されている。住民は「風害の調査ならば、もっと多くの場所に風速計を設置するべき」と指摘する。

強風時は閉鎖される出入口(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ出入口

多摩堤通りの歩道には防風板が設置されているが、部分的なもので、高さも人の背丈程度であり、あまり効果は期待できない。防風用の植栽も植えられているが、これも高い樹木ではなく、しかも枯れかけているものもあった。平板な「二子玉川ライズ オフィス」が多摩川からの風を遮るために風の通り道や周辺が強風になる形である。

効果が疑問視されている防風板と植栽(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ防風板 二子玉川ライズ植栽
強風で老婦人が転倒し、骨折した現場(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ横断歩道

ビル風で負傷者を出した事件現場の横断歩道を渡って、二子玉川南地区に入る。この横断歩道を渡りきろうとしたところで、老婦人が転倒して骨折した。ある民家には「東急のカイハツ反対 630台大駐車場 地下5階の掘り下げ、地上82mのビル、630台駐車場入口」と書かれた看板がった。この民家や近所では風害で屋根の部品が飛ばされ、植木鉢がひっくり返る被害に遭ったという。

二子玉川ライズ反対看板(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ反対看板

多摩川に向かうと、暫定堤防建設が進み、昔は眺められた河原が見えなくなっていた。

暫定堤防で河川敷への視界が遮られた多摩川(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ反対看板

再び二子玉川ライズに戻る。ガレリアを抜けた先に交通広場(バスターミナル、タクシープール)がある。バスターミナルなどは駅前にあることが通常であるが、二子玉川では商業施設の奥という奇妙な配置になっている。鉄道とバスを乗り継ぐ人にとっては不便である。住民は「ビル風のために冬場は交通広場が吹きさらしの寒空広場になる」と予想している。
建設中のペデストリアンデッキがII-a街区に接するところまで延びていた。II-a街区を通過して高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の人工地盤に連結する計画である。しかし、二子玉川駅は改札口が1階にあるため、「ペデストリアンデッキを通す意味がないのではないか」と参加者から疑問の声が出た。これに対して「ペデストリアンデッキを道路と位置付けることで容積率を上げることができる」との再開発のカラクリが説明された。
地権者が入居した商業施設「二子玉川ライズ バーズモール」は土曜日なのに閑散としていて、客は少なかった。店舗も不動産屋や保険屋が中心で、物を売る商店街としての魅力に乏しい。ここもビル風が強いために看板には重石を置くなどの対策を採っていた。

ビル風対策で黄色い重石が置かれた看板(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ反対看板

不動産屋では新築分譲マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス タワーイースト」の一室の売り広告が出されていた。広告では「新築・未入居」と記載するが、「不動産の表示に関する公正競争規約」(不動産公正競争規約)に違反する。不動産公正競争規約第18条では「新築」を「建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう」と定義する。事業者は上記に該当する場合に「新築」という用語を使用できる。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は2010年5月に竣工しており、既に竣工から1年以上経過しており、新築ではない。東急不動産物件ではブランズシティ守谷も竣工から1年後も売れ残ったが、そこでも新築表記がなされた(林田力「東急不動産物件で公正競争規約違反表示」JANJAN blog 2010年7月18日)。
この広告では管理費は28000円、修繕積立金は7600円である。管理費は高めであるが、修繕積立金は低い。参加者からは「将来的に困ることになる」との意見が出された。

二子玉川ライズ不動産公正競争規約違反広告(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズ不動産公正競争規約違反広告

「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は二子玉川駅にも販売広告が掲載されており、まだまだ販売活動が続けられている。交通広場でもチラシが配布されていた。チラシには「グッドデザイン賞を受賞いたしました」と書かれていたが、住民からは「景観を破壊するマンションのどこがグッドデザインなのか」と指摘された。また、細長い部屋を横に並べただけという3LDKの間取りに対し、「シェアハウスみたいで、家族としての生活感が描けない」との感想が寄せられた。
続いて「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の人工地盤に登る。ここもビル風が強く、子どもや高齢者には優しくない。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」では竣工時に植栽の杜撰さが購入者の怒りを招いた。立ち枯れや倒れている庭木があったとし、「東急電鉄や東急不動産の態度は一生に一度あるかないかの高額な買い物をした顧客へのものではない」と批判された。今回見た植栽も決して管理が行き届いているとは言えなかった。

管理が行き届いているとは言えない植栽(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズタワー植栽

「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の東側には都市計画公園予定地がある。この公園は7メートル近い盛り土をして、山のようになる。この計画に対し、「ばかげている」との声が上がった。多摩川河川敷との直結を名目にしているが、「東急の再開発で生じた残土の処理を引き受けているだけではないか」と批判された。
公園の盛り土は多摩川の土手と直結するために公園の南側を走る多摩堤通りは、トンネルになる。このトンネルの建設は進められているが、驚くべきことにトンネルの中で片側2車線から1車線に変更される。参加者からは「危険」「事故が起こる」との声が上がった。

トンネル内で車線変更(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
二子玉川ライズタワー植栽

都市計画公園予定地では完成図や模型が展示されていた。公園には60台の駐車場が用意される計画で、渋滞を悪化させる懸念がある。駐車場は「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」に面した場所に予定されているため、「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」住民からも批判が出ている。
公園予定地を一回りした後は駒沢通りを北上する。ここは「まむし坂」と呼ばれる坂道である。この駒沢通りには道路が拡幅される計画があり、再開発反対と連動して反対運動が起きている。拡幅予定地には一戸建て、マンション、松の大木が並ぶ。ここには瀬田隧道の入口もある。瀬田隧道は丸子川につながるトンネル(水道用施設)で、『ウルトラマン』の「ミイラの叫び」のロケ地にもなった。入口は施錠されていて中には入れないが、ひんやりと冷たい風が出ていて、心霊スポットとの噂もある。

瀬田隧道(撮影:林田力、撮影日:2011年10月23日)
瀬田隧道

「まむし坂」を上ると、富士見橋に出る。これは東急大井町線の上に架かる橋で、古くから富士山の見える橋として親しまれてきた。「せたがや百景」に指定された眺望であるが、二子玉川ライズの高層ビルが目に入るようになってしまった。
隣には五島美術館がある。ある住民は「五島美術館の庭で茶会をしたが、高層ビルが見えたことにがっかりし、お茶を飲む気分ではなくなった」と語る。
昼食を挟み、午後は上野毛地区会館で意見交換会となった。
住民の参加者からは二子玉川ライズに対する辛辣な意見が出された。
「再開発の名目である『にぎわいのある街づくり』は東急の金儲けの後付け説明。周辺住民の意向を無視し、居住者を追い出す。」
「人間が生きていられる街にしたい。富士山を見たい。ビルの間から見るのではなく、広い空の富士山を見たい。再開発組合からは『富士山が見たいならば御殿場にも行けばどうですか』と言われて悔しかった。」
「再開発は広域生活拠点を掲げるが、住民の生活を破壊している。存在するものは商業集積だけだが、それは公共性にはならない。」
波多野憲男氏からは「都市計画における『二子玉川を守る会』の運動の意義」と題する発表がなされた。
「再開発は地権者が自分の権利を守るかという点が中心となりがちだが、周囲の人々にとってどうかという点も重要になる。土地利用のルールは独占的土地利用の排除が原則になる。ところが、二子玉川ライズでは駅前の広大な空間の独占的な利用を東急に許してしまった。もともとあった風致地区の指定を変え、都市計画公園の位置を変更してまで、特別に土地の高度利用を認める再開発地区計画によって、開発利益を独占的にもたらす二子玉川ライズは適切な法の適用と運動ではない。本来の都市計画は東急の私的利益を制限することである。」
地域外からの参加者は再開発に巻き込まれた人の共通する無念を語った。「反対していた高齢者が心労などから相次いで入院し、悔しいと語っている」という。
林田力は『東急不動産だまし売り裁判』を踏まえ、東急の「売ったら売りっぱなし」体質を批判した。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」はマンションに住む住民のことさえも考えておらず、売ったら売りっぱなしである。分譲マンションは売ったら売りっぱなしでビジネスとして成立するが、問題は賃貸オフィス中心のII-a街区である。
二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業の説明会で再開発組合は「サブ的なオフィス」と位置付けた。これは都心部のメインのオフィスに劣ることを認めたに等しい。東日本大震災からオフィス分散の需要は高まっているが、都心と世田谷では災害対策の分散にならない。事業として成り立たない可能性が高い。これは公共施設の入居など行政の尻拭いの危険もあり、配布資料(林田力「税金たかりの二子玉川デジタル・コンテンツ問題」)とも関連する問題である。