マンション管理規約からコミュニティ形成削除か

林田力

国土交通省は標準管理規約案からマンション管理組合のコミュニティ形成業務を削除する方針を打ち出した。管理組合の自治を後退させるとの反発もあるが、管理組合の本来業務を明確化し、東急コミュニティー着服横領事件など管理会社依存の問題抑制につながるというプラスの効果もある。

マンション管理組合は区分所有法に規定されるが、そこでは管理組合がコミュニティ活動をするとは書いていない。これ対して国土交通省が作成した標準管理規約第32条15項は管理組合の業務として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」を定める。これが管理組合のコミュニティ活動の根拠になっていた。しかし、福井秀夫・政策研究大学院大学教授を座長とする国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」は2015年3月27日に報告書案をまとめ、コミュニティ形成業務を削除すると打ち出した。

コミュニティ形成業務削除は管理組合の自治を後退させるという反発が強い。一方で肯定的に捉える指摘もある。「自治関連の支出がなくなり、管理組合が純粋に建物などの財産管理だけを担うことになれば、管理費が安くなる可能性もあり、コミュニティ条項削除の判断は、マンション所有者にとっては合理的ともみえる」(伊能肇「マンション管理新規約で組合激震か 役割否定…国交省方針に業界など猛反発」SankeiBiz 2015年4月8日)

私はマンション管理の最大の課題は管理会社依存と考える。悪質な管理会社によってマンション管理が食い物にされている。たとえば東急コミュニティーでは従業員が顧客の資産1,600万円を着服横領した(林田力『東急コミュニティー解約記』「東急コミュニティーで1600万円着服横領」)。東急コミュニティーでは、その前にも360万円の着服横領事件が発覚している(林田力『東急コミュニティー解約記』「東急コミュニティーで360万円着服横領」)。

私のマンションも東急コミュニティーが管理会社であったが、杜撰な管理であった。管理委託契約書には宅配ボックスの定期点検回数は年4回と定められているが、実際は年1回しか実施していなかった。住民が東急コミュニティーに竣工図の閲覧を求めたところ、存在しないとの虚偽の回答をされたこともあった。そのために管理組合は管理会社を独立系の会社に変更した。これによって管理委託費を年間約120万円も削減でき、サービスレベルも向上した。

管理会社の多くは公正な競争入札などで決められたものではない。東急不動産の分譲マンションでは東急コミュニティーが管理会社になるなど系列の管理会社に決まっている。管理会社は顧客である管理組合に選ばれた訳ではないため、市場原理が機能しない。このために悪質な管理会社の解約が重要になる。

問題は多くの管理組合には悪質な管理会社に対抗するだけの主体性がないことである。管理会社の不正をチェックできないし、何人かの住民が気付いたとしても管理組合が解約を意思決定することは簡単ではない。管理組合役員が管理会社に丸め込まれているケースさえある。

この問題意識に立つと、管理組合の自治を後退させるような改革は好ましくないように映る。実際、検討会のトーンには管理組合の役員を区分所有者以外の第三者でも可能にする第三者管理という、管理会社依存を一層推進する危険な方向性も感じられる。一方でコミュニティ形成業務の削除自体は、管理会社のチェックという本来的な役割に専念するメリットがある。

近年竣工したマンションでは「コミュニティ形成」業務としてバーベキュー大会などのイベントが行われている。しかし、それは管理会社のお仕着せであることが多い。実際、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」ではデベロッパーの委員である村裕太氏(三井不動産レジデンシャル)は以下のように述べている。

「売り主としてはコミュニティの形成に必要ないろいろなイベントなどを企画したりサポートしたりというようなことをむしろ積極的にお勧めしたり、お手伝いをしたりというようなことをやっております」

デベロッパーや系列管理会社の企画に乗っかる管理組合が管理会社の不正をチェックし、悪質な管理会社を解約できるか疑問である。管理会社の業務をチェックすることは立派な自治であり、疎かにしてはいけない業務である。そこにつながるならばコミュニティ形成業務の削除は支持できる。


林田力


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