外環道(都市計画法)異議申立書補正書

林田力

 平成27年7月17日

補 正 書
 
国土交通大臣 太田 昭宏 殿

異議申立人  
                      氏名 林田力

 「異議申立の補正について」(平成27年7月3日付国都計第51号)で補正を命じられた事項について、下記のとおり補正します。


平成26年3月28日国土交通省告示第395号(都市計画法第59条第3項の承認)は、大深度地下を利用する都市計画事業であるために、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法施行令」別表第一の「首都圏の対象地域」住民は、「自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」に該当する。
異議申立でも準用される行政事件訴訟法第9条第2項は「法律上の利益の有無を判断するに当たっては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする」と定める。
都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的」と定める(第1条)。基本理念を「健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきこと」としている(第2条)。
本件処分は大深度地下を利用する都市計画事業であり、上記目的や基本理念においても、大深度地下利用の性質を考慮したものとなる。大深度地下は通常利用されない空間である。「人口の集中度、土地利用の状況その他の事情を勘案し、公共の利益となる事業を円滑に遂行するため、大深度地下を使用する社会的経済的必要性が存在する地域」に限って認められる(大深度法第3条)。
具体的な対象地域は首都圏、近畿圏、中京圏と広域の都市圏である。広域都市圏は社会・経済的な繋がりを持ち、その大深度地下利用は広域都市圏全体の視点で適正かつ合理的な利用であることが求められる。大深度を利用する事業は必然的に巨大なものになる。大深度を利用する事業の巨大性や影響の不確定性から、影響住民の範囲が広がることは当然である。
大深度地下は、利用したい事業者が好き勝手に利用して良いものではない。大深度地下は「残された貴重な空間である」(臨時大深度地下利用調査会答申)。「大深度地下の利用,施設配置については,早い者勝ちや虫食い的な乱開発を避けるため,事業間,施設間で空間の利用調整を行い,適正かつ合理的な利用を図ることが求められている」(家田仁他「大深度地下利用の経済合理性」運輸政策研究Vol.4 No.3、2001年、2頁)。そのために大深度法は認可制としている。
大深度法地下は言わば対象地域住民の公共財産である。対象地域の大深度地下が適正かつ合理的に公共の利益となる事業のために利用されること、または要件を満たす事業がないために利用されないことは、対象地域住民の法律上保護された利益である。対象地域住民は、不適正・非合理な大深度地下を利用する都市計画によって、法律上保護された利益を侵害される。これは単なる反射的利益ではなく、大深度地下をどのように利用するかという対象地域住民の法律上保護された利益である。
大深度利用は発展途上の技術であり、影響範囲は未知数である。現実に世田谷区大蔵の外環道工事現場では死亡事故が起きている。地下へ穴を開ける作業中に足場用の鉄筋約40本(4トン)が落下し、下にいた作業員3名が下敷きになった(「鉄筋落下で作業員1人死亡 2人重傷 東京・外環道」朝日新聞2014年5月8日)。それだけの巨大事業である。住民の法律上保護された利益は沿線基礎自治体の住民に限定されない。

また、外環道は国策道路である。沿線住民の生活道路ではない。この点からも住民の法律上保護された利益は沿線住民に限定されない。外環道は都心部への通過交通流入を回避するバイパス道路として計画されているが、バイパス道路を作るべきか、作るとしてどのように作るかは首都圏住民全体がステークホルダーであり、法律上の利益を有している。
外環道は16kmに約1兆3千億円もの巨費を使うことは、税金の無駄遣いである。外環道には需要がない。人口減少、高齢化は、車減少社会をもたらしている。また、若年層の車離れが指摘されている。将来交通量予測及び費用便益は首都圏1都3県の道路を対象として計算したと国は述べている。数分、数秒の走行時間短縮のための約1兆3千億円は、巨大な道路建設で過剰投資である。
外環道は通過交通減少にも寄与しない。異議申立人も参加した住民説明会(2013年9月5日、世田谷区立明正小学校)でも住民から「中央環状線開通以後も都心の通過交通量は増えている。これは外環ができても変わらない」と指摘された(林田力『二子玉川ライズ反対運動11外環道』「外環道・大深度使用認可申請説明会」)。
社会保障政策に必要な予算は不足していることは明らかである。将来世代には、年金の仕組みを支えること、放射性廃棄物の処理、1000兆円の借金返済などが押し付けられる。このような状況で外環道建設に巨額の税金を投入する余裕はない。外環道建設に拒否を投じるならば「すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」(日本国憲法第25条第2項)が疎かになる。
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は2015年6月1日に「財政健全化計画等に関する建議」を提出した。公共事業については、新規投資をこれまで以上に厳選するよう求めた上で、全体の公共事業関係費を増やさないよう釘を刺している。全ての都市計画道路をゼロベースで見直すことが求められる。
数千年の歴史を有するマヤ文明は神殿ピラミッドという巨大公共事業が衰退を招いたとされる(青山和夫、米延仁志、坂井正人、高宮広土『マヤ・アンデス・琉球 環境考古学で読み解く「敗者の文明」』朝日新聞出版、2014年)。これは外環道の問題に重なる。
これ以上、将来世代に負荷をかけることは対象地域住民の法律上保護された利益を侵害する。外環道建設の強行は国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(日本国憲法第25条第1項)を侵害する。

そもそも行政不服審査法第1条第1項は「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開く」と定めており、適格性を厳格に解して異議申立を門前払いすることは法の趣旨に反する。
「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする」
行政不服審査制度研究報告書は不服申立適格について「行政事件訴訟法第9条第2項の趣旨・運用も注視しながら柔軟に対応していく必要がある」と述べている。不服申立適格を限定せず、柔軟に対応することが行政の方針である。
「今回、不服申立適格を拡張する可能性も含めて検討したが、「処分」についての不服審査の仕組みにおいては、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟との連続性にも配慮し、不服申立適格については現行の取扱いを維持すべきと考えられ、行政事件訴訟法第9条第2項の趣旨・運用も注視しながら柔軟に対応していく必要があるとの検討結果に達した」(行政不服審査制度研究会「行政不服審査制度研究報告書」5頁、平成18年3月)
行政の適正な運営確保の観点からは、厳密な意味で個人の権利侵害にあたる場合でなくても、不服申立人適格が認められてしかるべきである。なぜなら、不服申立てにおいては、違法性だけでなく不当性についても主張できるため、本来、不服申立人適格は、行政事件訴訟法の原告適格より広く認められるべきものである。
「行政不服審査法の改正に関する「国民の声」」でも「行政事件訴訟法の原告適格よりも広く改正すべき」が、「拡大された行政事件訴訟法の原告適格と同じ範囲であることを明確にするべき」「不服申立人適格の規定を変更する必要はない」よりも圧倒的に多い。
本件に参考になる声には以下がある。「裁判の原告適格も狭すぎるとは思うが、不当な行政運営は裁判上の利害関係範囲を超えて、行政区内の住民に広く影響を及ぼすので、最大限広く解釈するべきだと思う」(「行政不服審査法の改正に関する「国民の声」」行政救済制度検討チーム第2回会合資料、2010年11月1日)
以上より、今回の補正命令書の「事業区域内に土地または物件に関する権利を有する」との記述は、異議申立人適格を極端に狭く解釈するものであり、不当な行為であるため、強く抗議し、併せて申立人適格の基準を直ちに改めるように要求する。
「外環の2」について東京都は市民参加・住民参加の原則を採用しながら、実際にはそれを無視した行政基準によって手続きを進め、住民との信頼関係を自ら壊したと批判されている(小山雄一郎「「外環の2」計画をめぐるコミュニケーション過程を検証する―いかにして行政は沿線住民との関係を悪化させてきたのか―」玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要第7号、2014年)。国土交通省が一方的な基準によって不服申立適格を狭く解釈し、住民の不服申立を切り捨てることは東京都と同じ轍を踏むことになる。そのようなことがないよう強く求める。

林田力


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