江東区長所信表明と希望の政策

林田力

希望の政策から山崎孝明江東区長所信表明を検討する。所信表明は平成26年第1回区議会定例会(2014年2月19日)で発表したものである。所信表明では江東区の重要課題として築地市場の豊洲移転整備、中央防波堤埋立地の帰属、防災都市江東の実現、オリンピック・パラリンピックを踏まえた新たな展開の4点を挙げる。

最初の築地市場移転整備は賛成の所信表明と反対の希望の政策が真っ向から対立する。

所信表明「市場に併設される千客万来施設については、現在の築地の賑わいを継承・発展させ、新たな観光名所となるよう求めてまいります。

引き続き、確実な土壌汚染対策、地下鉄8号線の延伸などの総合的な交通対策の実施、「豊洲グリーン・エコアイランド構想」に定める環境まちづくりへの最大限の配慮などを都に対して求めてまいります。」

希望の政策「消費者にとって安全で安心でき、中小の業者がこれまでのように営業を続けられるよう、築地市場を守ります。豊洲移転を見直します。豊洲での土壌汚染対策を強化します。築地市場のあり方については、現地再整備案を含め、改めて、市場で働く人々や地元自治体・住民の意見を聞いて、判断します。築地移転を前提とした都有地の民間売却や大型再開発は行いません。」

まず築地市場移転は都政の問題で江東区が云々する問題ではないという主張が考えられるが、江東区長が重要課題の第一に挙げている様に江東区の問題でもある。希望のまち東京をつくる会の都知事選ふりかえり集会では「築地移転の問題を継続的に取り組んで欲しい」との声が出たが、築地移転反対運動が江東区政にアプローチすることも有意義ではないか。

築地移転見直しの有力な論拠は土壌汚染であるが、推進派も土壌汚染対策をしないとは主張していない。江東区長も確実な土壌汚染対策を東京都に求めると表明している。単純に土壌汚染を問題視するだけでは議論にならない。土壌汚染を主張するならば具体的な主張が必要である。

最後に江東区は卸売市場の移転先であり、受益地と受け止められていることである。新たな観光名所を作ろうと意気込んでいる。それに対して、どう考えるかが問題である。移転先は豊洲といっても豊洲中心部からは「ゆりかもめ」に乗らなければならない場所である。果たして地域経済にどれだけ効果があるのか。

現行の計画では移転後の卸売市場は仲卸業者ではなく、大手流通業者中心になる。そのような市場に現在の築地のような観光地の魅力があるのか。様々な美味しいものを食べたいならばショッピングセンターのフードコートがある。無駄なハコモノになり、地域のお荷物になるのではないか。



中央防波堤埋立地の帰属は江東区と大田区の領土争いである。所信表明は江東区に帰属することは明白と述べる。「改めて申し上げるまでもなく、この埋立地は、長年にわたり、ごみの終末処理をすべて負わされてきた江東区民の犠牲の上に造成された土地であり、本区に帰属することは明白であります」

希望の政策では言及しない。江東区長選挙では誰が候補者でも江東区への帰属を主張し、争点にはならないだろう。江東区にはゴミ戦争という歴史があり、「ごみの終末処理をすべて負わされてきた江東区民の犠牲の上に造成された土地」である。単なる拡張主義ではない。

一方で江東区の面積が増えるということは行政サービスの負担も増大し、既存の住民に利益になるとは限らないことは冷静に考える必要がある。特に埋立地でハコモノを建設するならば、政治家と公務員とゼネコンが喜ぶだけとなる。



防災都市江東の実現について、防災重視という点は誰もが肯定する政策であるが、その手法は明確に対立する。

所信表明「木造住宅密集地域への対策としては、北砂三・四・五丁目地区において、「不燃化特区」の指定を受け、現地ステーションの設置や多様な支援施策を展開することで、燃えないまちづくりを進めてまいります。また、民間建築物の耐震化については、引き続き都と連携し、特定緊急輸送道路沿道建築物を中心に耐震化を進めてまいります。」

これは希望の政策が批判する猪瀬都政の防災対策そのものである。「石原都政を継承した猪瀬都政下での防災対策の重点は、幹線道路の整備とだき合わせた緊急輸送道路の沿道建物の耐震化です。沿道から離れた木造密集地域やさらに多くの一般市街地での木造住宅の耐震・耐火化は自助努力とされています。これでは、首都直下地震被時での犠牲者(中央防災会議は犠牲者を最大2万3000人としています)や家屋倒壊被害を最小限にくいとめることができません。」

希望の政策では「高層建造物における長周期地震動対策」も盛り込んでいる。これは木造が危険で超高層ビルが安全というドグマを打破するものである。

一方で所信表明では「避難所運営等を円滑に行うための地域連携体制の充実や、発災後の被災者生活再建を重視した支援体制の整備」とソフトウェアの防災対策も盛り込んでいる。「希望の政策」の「災害に弱い都市政策を転換し、命と生活を守る防災・減災政策を進めます」はハードウェアに偏っている印象を受ける。現場に近い地域の知恵は積極的に学ぶ価値がある。



所信表明では「災害廃棄物の受入れ」も「防災都市江東の実現」の中で述べている。「東日本大震災のがれき処理は、本区で積極的に受入れを行ったこともあり、本年度で処理がすべて終了いたします」

希望の政策では「脱被ばく政策を進めます」の中で「放射性物質の拡散が心配されている瓦礫の焼却処理については、いったん凍結し、専門家を集めて公開で調査と検討を行います」と述べている。凍結は暴力的な被災地瓦礫受け入れ反対派と一線を画す政策として意味がある。

一方で2月に就任した新都知事が3月に終了予定の事業を凍結することが現実的に可能か疑問の余地がある。希望の政策は素晴らしい政策をまとめたものであるが、現実的なタイムスケジュールの中で計画に落とし込むことも必要である。

所信表明では新たな課題として大島町の災害廃棄物処理を挙げる。「昨年10月の台風26号による被害により、大島町では町内で処理する一般廃棄物の約9年分に相当する災害廃棄物が発生しており、大島町のみで迅速に処理することが困難な状況となっております。このため私は、昨年末にいち早く区内民間事業者による受入れを行ったほか、今後、清掃一部事務組合の清掃工場における処理も含め、一日も早い被災地の復興に向け、引き続き支援を行ってまいります」

これは被災地瓦礫受け入れ反対論に新たな課題を突きつける。希望の政策は「伊豆大島の被災者と災害復興を全面的に支援します」と全面支援を掲げる。もし東北の瓦礫は駄目で大島の瓦礫はOKと主張するならば放射能だけを特別に危険視する放射脳カルトと見られてしまう。

一方でダイオキンシンなど放射能以前の問題から焼却に反対する人々がいる。この立場課ならば災害廃棄物焼却に反対することは一貫性がある。この立場は江東区内の災害廃棄物の焼却も問題である。脱被ばく政策ではなく、もう少し広い視点で考える必要がある。



避難者の支援は所信表明も希望の政策も共通する。総論では誰もが肯定する政策であり、具体的な内容が求められる。

所信表明「本区内の被災避難者の方への支援については、避難生活の長期化に伴い、孤立化防止に取り組んでおりますが、引き続き、避難者の方々の心身を支える支援を行ってまいります」

希望の政策「福島原発事故被害者、とりわけ東京都に避難している6000人以上の避難者に対して、住宅・医療・生活再建支援などの積極的な支援を進めます」



「オリンピック・パラリンピックを踏まえた新たな展開」について東京オリンピック・パラリンピックを歓迎する点では所信表明も希望の政策も共通する。この共通点は放射脳カルト的なオリンピック返上論と一線を画す上で重要である。しかし、そのスタンスは対立する。

所信表明「東京オリンピック・パラリンピックでは、多くの競技が本区で実施されますが、これは、江東区の存在を、日本全国はもとより、世界に知ってもらう絶好の機会であり、本区を訪れる選手や観客の皆さんを、区を挙げて、「下町の人情でおもてなし」したいと思っております」

希望の政策「4000億円をこえる都のオリンピック基金は、大型インフラ開発だけでなく、障がい者も含め都民の誰もがスポーツに日常的にアクセスできる身近なスポーツ施設の整備や、都民の健康づくり、子ども・若者の基礎体力アップ、地域のスポーツ・サークルの振興、引退したスポーツ選手を指導者として養成するしくみづくりなど、ソフト面にも支出します」

所信表明は江東区民からすると、江東区を知ってもらうという目的のため、「おもてなし」に駆り出されるということであり、区民が豊かになるものではない。それに比べると、希望の政策は、あるべき姿勢を示している。現実に夢の島競技場の野球場(12面)と陸上競技場を潰して馬術場を整備するなどスポーツ振興に逆行する計画もある。

オリンピックを契機とした街づくりについては、希望の政策はハコモノ行政・税金の無駄遣い阻止を明確に打ち出している。

所信表明「大会後も見据えた、本区ならではのまちづくりを実現し、次の世代に残していきたい」

希望の政策「コンパクトで、シンプルで、エコロジー重視の大会をめざします。都民の税金を無駄に使わず、自然・生態系を損なわず、大型開発を行わないようにします」


     
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