東急不動産だまし売り裁判と自己責任論

林田力

東急不動産だまし売り裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟)は自己責任論との闘いである。無価値の問題物件をだまし売りされても泣き寝入りしろとの要求である。しかし、東急不動産だまし売り裁判を消費者の自己責任論で批判することは筋違いである。自己責任は情報非対称性がない市場での取引を前提とする。東急リバブル東急不動産は不利益事実を持っているにもかかわらず、隠蔽して営業しており、消費者の自己責任にはならない。逆に東急不動産だまし売り裁判では東急リバブル東急不動産の事業者の責任を追及した。

この自己責任論は社会的弱者にのみ責任を押し付け、社会的強者は責任を負わないという不公平さを特徴とする。このように自己責任論の問題を不公平という観点で捉えることは重要である。

表面的な自己責任論批判は「個々人に責任を負わせるな」「社会全体で負担しよう」となりがちである。それは一億総懺悔の無責任状態になりかねない。希望のまち東京in東部第47回市民カフェでは日本企業は責任を追及されるべき人が追及されていないという不満が指摘された。

自己責任論の克服は貧困問題など社会問題の解決のために非常に重要である。これは「足立区政を語る集い」(2015年5月21日)でも指摘された。そこでは自己責任論の本質を正確につかむ必要がある。自己責任論は新自由主義の産物というよりも、特殊日本的精神論の産物ではないか。「頑張れば何とかなる」という思想である。問題は、この精神論が右翼左翼問わず、日本の伝統的組織にあまねく存在していることである。それが自己責任論の克服を迷走させている。

これは特にブラック企業問題で実感する。ワタミ過労自殺に対し、渡辺美樹は「彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました」と言い放った。経営者への責任追及を従業員皆で取り組む問題に転嫁した。

また、「365日24時間死ぬまで働け」への批判に対し、以下のように反論する。「365日24時間という気構えでやろうということだ。みんなで助け合いながら一人一人の成長に寄り添っていこう、という話だ。この1行だけで『ブラック』というのはおかしい」(「参院の注目新人「ブラックじゃない」渡辺美樹氏」朝日新聞2013年8月2日)。

このようなブラック企業の論理を見れば、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」という思想が最低生活できるレベルの低賃金で、能力の限界まで働かせることの正当化を促進させているように思えてならない(これをもって共産主義思想そのものを否定するつもりはないが、それは新自由主義も同じである。新自由主義思想の間違った使われ方があることをもって、新自由主義思想を否定することにはならい)。

逆にブラック企業に対しては、小説『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー的な「給料分以上の仕事をしない」という姿勢でなければ対抗できないのではないか。自己責任論を乗り越えるためには新自由主義の否定ではなく、新自由主義の基礎にある個人主義の徹底が必要であるように思える。



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