2014東京都知事選をふりかえる第7回

林田力

日本海賊党はシリーズ「2014東京都知事選をふりかえる」第7回を2014年3月4日にニコニコ生放送などで放送した。今回は東京都知事選立候補者の宇都宮健児氏をゲストに迎えて立候補までの経緯や選挙戦を振り返る。また、今後の展望についても語る。司会は石崎大望氏(宇都宮選対リーダー)、聞き手は山内和彦氏(元川崎市議会議員)、小笠原ひろき氏(2012年衆院選立候補者)、Eri Marui 氏(宇都宮選対サポーターズ)、林田力(東部勝手連代表)である。

山内和彦氏はドキュメンタリー映画『選挙』の主人公である。山内氏は切手・コイン商を営んでいたが、2005年の川崎市議会宮前区補欠選挙で自民党候補の公募に応募し、自民党公認候補として当選している。『選挙』は、この時の自民党流ドブ板選挙の実態を描く。2011年には山内氏は完全無所属で川崎市議選に再出馬した。山内和彦氏は都知事選挙中に多くの候補者の事務所を訪問したが、宇都宮事務所が最もウェルカムな雰囲気であったとする。

小笠原ひろき氏は2012年衆院選に埼玉県第4区(朝霞市、志木市、和光市、新座市)から立候補した人物である。中卒ニートという異色の経歴がネット上で話題になった。



宇都宮氏は2013年12月28日の出馬表明について自身の決断によって行ったことを強調した。このタイミングを逃すと、年末年始に活動できず、選挙戦は準備不足に陥った可能性が高い。正月は元旦だけ休み、2日からは新しいスーツで写真撮影など活動を始めたという。

この直前に出馬表明を年明けまで待つように要請した人がいた。今から考えると細川氏擁立の動きではないか。細川氏は早い段階から準備に動いていたことが分かっている。

出馬表明に対しては、旧選対(運営会議)内部でも消極的な意見が出ていた。旧選対は規約上、宇都宮氏の後援を目的とした組織であり、外部から勝てる候補を担ぐことを目的としていない。そのような動きをする人がいることが本来はおかしいが、そのような動きのために機能不全に陥っていた面があり、自身が決断して動く必要があった。

選挙期間中に最も悩まされたものは一本化問題である。一本化問題とは宇都宮氏から見れば辞退要求である。法律事務所にまで脅迫電話やファックスが寄せられたという。細川護煕氏側に「出馬するな」と言ったことはない。脱原発への関心を高めるという点では好意的に評価している。しかし、辞退要求への対応にリソースを割かなければならなかったことは大きな損失であった。

宇都宮氏に直接会って辞退要求をしてくる人もいる。問題は要求者が辞退を軽く考えていることである。要求者は細川氏に会ったこともない人が多い。細川氏が本当に脱原発を実現するのか、大飯原発の再稼動を許した橋下徹大阪市長のようにならないか、何の確約もない。

また、宇都宮氏を個人的に説得すれば辞退が実現すると考えている点も甘い。選挙事務所には宇都宮氏を応援しようとするボランティアが詰めかけている。彼らを裏切り、彼らの梯子を外すことはできないと述べる。

宇都宮氏は公開討論会欠席という細川陣営の戦術も批判する。宇都宮陣営は公開討論に入念な準備をしてきた。街頭演説に千人単位で集めることは大きいが、有権者全体から見れば僅かである。公開討論会のテレビ放映が有権者に政策を伝える勝負所と位置付けていた。それが細川氏の欠席によって数多くの公開討論会が中止になった。候補者が出演する番組でもクロストークなしのものもあった。国会議員や首相を務めた人物がメディアや他候補の前で自己の政策を堂々と訴えられないことは情けない。本気に脱原発が何よりも優先すると考えているならば、それをメディアに訴えるべきである。

細川氏一人の欠席で公開討論会を中止するマスメディアも問題である。有権者に政策を伝えられなかったことが都知事選への関心の低下を招き、投票率低下の一因にもなった。一候補者の戦術によって公開討論会全体が中止になってしまう事態は、今後のことも考えると大きな問題である。聞き手からは選挙管理委員会が運営する公営の公開討論会開催などのアイデアも出された。

また、投票率低下に関連して、投票率向上の運動の限界も指摘された。「選挙に行こう」と投票することだけを目的とした呼びかけでは誘因にならない。「この人の政策が素晴らしい」「この政策を実現したい」という思いがあって投票に行く。

一本化問題や公開討論会欠席があり、細川陣営について語る宇都宮氏の言葉には怒りや悔しさがにじみ出ていた。それは十分に共感できるものである。一方で他の候補者には温かい。姫路けんじ候補からは選挙後に手紙をもらったという。姫路氏は平和について重点的に訴えたが、それは宇都宮氏の政策と重なるところがあるとして、宇都宮氏の今後の活動に期待する内容であった。宇都宮氏も返事を書いた。また、宇都宮氏は家入一真氏のイベントにも参加する予定である。

今後については選挙の度に集まっては解散するのではなく、運動を続けたいと述べた。そうしなければ候補者擁立に際して有名人を担ごうという青い鳥探しが繰り返されてしまう。但し、組織の形態については検討中とする。

喫緊の課題としては集団的自衛権の解釈改憲阻止を挙げる。これは東京都にとどまらず、全国的な運動を志向する。ここでは批判一辺倒だけでなく、政権内で抵抗する公明党の援護するような運動を考えるべきとした。また、国家戦略特区の問題にも取り組みたいとした。



番組に出演し、宇都宮氏の話を聞いたうえで2点ほど感想を述べる。第一に細川護煕陣営の流儀へのギャップの大きさを再確認した。対立軸は福祉・貧困などの生活密着課題重視と脱原発オンリー路線という政策面だけでない。市民中心と有名人主義、政策本位と浮動票狙いというように戦術面でも対極的である。

「選挙の対立を引きずらず、脱原発運動では一緒にやっていく」ことは当然過ぎるほど当然なことである。しかし、宇都宮流と細川流では運動方針にも差異が生じる。たとえば被災地復興・被災者の生活再建に取り組む脱原発運動と、脱原発だけを唱える脱原発運動である。また、運動の前面に市民を出すのか、有名人を出すのかの相違もある。

宇都宮流と細川流では大きな相違があることは事実であるし、その相違点は宇都宮支持者としては胸を張って誇れるものである。それは今後の運動に展開していきたい、展開していかなければならないものである。故にノーサイドという言葉は建前としては美しいが、現実は厳しいことを認識する必要がある。

運動方針で細川流と妥協することが好いことなのか。場合によっては多数派形成のために止むを得ないことはあるとしても、それは止むを得ないというものでしかない。その意味で脱原発候補の宇都宮・細川ブロックという狭い固定観念に囚われず、家入陣営など別の陣営関係者と交流を深める方向性は建設的である。

第二に今後の運動課題である。集団的自衛権の解釈改憲阻止が左翼的立場にとって喫緊の課題であることは、その通りであろう。脱原発や秘密保護法反対という現代的問題から政治意識を高めた人々が多い番組視聴者層に伝統的な左翼市民運動の問題意識を共有するという意味では教育的である。

出馬直前に宇都宮氏が取り組んでいた運動は秘密保護法反対集会であった。その時その時のタイムリーな課題を追求している。一方で、そのような運動だけでは、その時その時の主要テーマで離合集散を繰り返す運動になる危険もある。宇都宮氏は選挙の度に離合集散するような運動では駄目と語るが、市民運動も同じ問題がある。

ここで期待されるものは同じく宇都宮氏が言及する韓国の市民運動・参与連帯である。参与連帯は地域に密着した課題、生活に密着した課題を継続的に取り組んでいる。そのようなバックボーンがあることで、タイムリーなテーマで集まる一過性の運動から脱皮できる。宇都宮氏の志向する日本版参与連帯に期待したい。

海賊党

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