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林田力『東急不動産だまし売り裁判』TPP問題

TPPは経済的なプラスマイナス論や産業政策ではなく、生活の問題として考える必要がある。弱肉強食の新自由主義経済に投げ込まれることになる。

第一にTPPは国内農林水産業に大打撃を与える。日本とアメリカやオーストラリアは経営規模が異なり、そもそも自由なマーケットで競争させることは不公正である。条件が異なるところで生産性を競うこと自体に無理がある。

国内農林水産業は国民の食料供給基地である。世界は食糧危機の時代に突入する。食料難による輸入途絶の危険は迫っており、食料自給率を上げることが急務である。軍事・食糧・エネルギーが安全保障の三本柱である。

農家が甘やかされているという主張も正しくない。日本の農家への政府補助は欧米よりも少ない。農業には環境を守るという価値がある。林業が崩壊した日本の森は緑の砂漠と言われている。森林に手入れがされなくなった。水田は貯水池であり、土壌の流出を抑えている。水田がなくなると国土の維持が難しくなる。

第二にTPPは東日本大震災からの復興を妨げる。外国からの画一化された安価な農産物の大量輸入は、東北の農林水産業に追い討ちをかける。政府調達の開放や入札仕様書の英語表記、労働力の自由化によって、復興事業が行われても日本人には仕事がないことになる。

第三にTPPは消費者の権利を侵害する。非関税障壁撤廃の名目で、消費者を保護するための規制が緩和される。たとえば遺伝子組み替え作物の表示義務の撤廃、ポストハーベストの使用許可、残留農薬の規制緩和、食品添加物の使用許可、自動車の安全基準緩和などにより、安全安心な商品を求めにくくなる。狂牛病の月例制限も撤廃されかねない。アメリカの狂牛病検査はサンプル検査だけであり、検査なしの牛肉が入ってくる危険がある。

たとえば市民が求め創るマニフェストの会では賃貸借契約書に記載のない退室立ち会い費を受領したグリーンウッド新宿店の宅建業法違反事件を踏まえ、「宅建業法違反業者への迅速な処分と周知公表の徹底」をマニフェストに追加した。悪質な業者の情報が周知されることで救われる業者は大勢いる。しかし、悪質な業者を回避する情報提供が競争上の障壁として妨げられる恐れがある。

第四に医療を金儲け主義に変質させる。たとえば混合診療の解禁である。自由診療は全額負担になっているが、混合診療の解禁によって保険部分の医療が狭められる。全額自費の自由診療が広がり、民間医療保険に入らなければ満足な医療を受けられなくなる。外資系民間保険会社が潤う構図である。保険会社が治療方法を決めてしまう。保険会社の払い渋りにより、医療を受けられなくなる。さらに国民皆保険制度も外国企業参入の障壁として攻撃対象になる。

第五にTPPは自由貿易とは反対にブロック経済化を進める。日本の最大の貿易国は中国であるが、その中国はTPPに参加していない。TPP参加によって日本が中国市場から締め出される危険がある。

第六にTPPによる輸出増加のメリットは限りなく乏しい。日本は内需で経済が回っている国である。雇用は輸出産業ではなく、第三次産業が圧倒的である。日本の輸出依存度は一割程度で貿易立国ではない。しかも福島原発事故によって日本産は輸入規制される。日本の規制値は世界から見れば非常識な値である。世界が日本産を忌避することは当然である。

第七に安価な輸入品の流入は日本経済のメリットではない。インフレ傾向ならば安い輸入品は歓迎できるが、デフレ不況の国に安い輸入品が入るとデフレスパイラルに陥る。

第八に現状でも日本は自由貿易を阻害していない。日本の関税は諸外国と比較して決して高くない。現在の貿易は関税よりも為替レートが重要になっている。自由貿易を推進するならば為替投機の規制こそ必要である。

第九にTPP推進派の動機は日本国民の利益ではなく、米国への従属である。毎日新聞がスクープした政府の内部文書ではオバマ政権の評価を第一としていた。さらにTPP賛成派の吉良州司議員は「日本が国家主権を主張するのは50年早い」と発言したと報道されている。

第十に「早期に参加して有利な条件を獲得する」は虚偽である。交渉参加には事前協議・事前通告が必要であり、日本が参加した時は条件が決まった後である。そして交渉に参加したら、「米国との関係が悪くなる」との脅しが出てくるだろう。

TPP交渉参加に反対する街頭演説会

TPPを考える国民会議は東京の有楽町イトシア前で2011年11月5日に「TPP交渉参加に反対する街頭演説会」を開催した。国民会議世話人の山田正彦・元農林水産相に、田中康夫・新党日本代表、川内博史衆議院議員らTPP批判派の政治家に加え、10月27日のフジテレビ「とくダネ!」での怒りの言動が話題となった中野剛志・京都大学准教授や宮台真司・首都大学東京教授、脱原発の主張で話題となった中学生アイドル・藤波心ら多彩な弁士が登壇した。

冒頭は山田正彦・元農林水産相の挨拶である。

「野田佳彦首相はTPP参加を『党内の議論を集約した後に態度を決めたい』と述べる。私達は懸命に闘っている。交渉参加の前の事前通知・事前協議や混合診療などTPPの問題が政府の内部文書で次々と明らかになっている。TPPは農業だけの問題ではない。何よりも人の移動が心配。NAFTAではメキシコ人労働者の流入で、米国人の失業が増えた。TPPでは遺伝子組み替え食品の表示規制が緩和される懸念がある。将来の日本に禍根を残すことがあってはならない。これまでの貿易交渉では全ての交渉がアメリカに負けてきた。交渉参加を阻止しなければならない。」

会場には日の丸が林立し、「亡国」や「売国」などのプラカードも掲げられるなど、右派の参加者の割合が高かった。山田元農水相の挨拶の冒頭では「民主党引っ込め」とのヤジも飛んだが、終わりは大きな拍手が寄せられた。

続いて「かみさんに内緒で参りました」と語る中野準教授が登壇した。「山田元農水相から乞われて弁士を引き受けたが、街頭演説会とは聞いていなかった」と言う。しかし、「一旦参加を表明すると離脱できない」とTPPになぞらえて会場を笑わせた。

中野氏は政治と歴史の観点からTPPの問題点を指摘する。政治の観点では「APECで参加を表明する理由は、その時期に参加することが米国の政権浮揚につながるため」との毎日新聞報道を紹介し、TPPを進める政治家を「売国」と非難する。

歴史の観点では「2011年は1911年の不平等条約改正から百周年になる」とし、その節目の年に「開国」の名目で関税自主権を放棄するTPPを進めることを「冗談は吉田松陰」と評した。さらに「バカすぎ晋作」「こんなんで日本は井伊直弼」と幕末の歴史上の人物に因んだギャグを連発した。最後は日中戦争を批判した1940年の斉藤隆夫議員の反軍演説をTPP反対になぞらえた演説文を読み上げた。

川内議員はTPPが自由貿易推進の立場からも批判されるべきものであると主張した。WTOやFTAでは例外品目が定められている。これに対して、TPPは全ての関税障壁をなくし、非関税障壁はルールを統一してしまう。これはWTOやFTAとは異質である。野田首相は『政治判断する』と語るが、政治判断の内容を変えてもらわなければならない。TPPは日本を丸裸にする。かつて民主党は『国民の生活が第一』を掲げたが、TPPはアメリカの経済が第一のダメダメな協定である。」

田中代表はTPP参加で日本の製造業が壊滅的打撃を受けると警告した。

「関税自主権回復から百周年の今年に、自ら国家の根幹たる関税自主権を放棄することは子孫の日本人に顔向けできない。TPPは『環太平洋』と言うが、中国などの主要国を網羅していない。アメリカ一人勝ちの保護貿易である。

今や日本の貿易相手国は米国よりも中国の方が重要になっている。TPPに参加すると中国を阻害することになり、中国はEUとFTAを締結し、中国市場をドイツ製品が席巻し、日本の製造業が破壊される危険がある。TPPの『カイコク』は『開く国』ではなく、『壊す国』である。みんなの党はTPP賛成とされるが、川田龍平議員が反対を表明するなど超党派で反対が広がっている。」

田中代表はプレスとのやり取りも披露した。演説会の前にプレス向けに弁士が「TPP交渉参加断固反対」と垂れ幕をもって集合写真を撮影したが、ある記者から拳を突き出したポーズをリクエストされたという。これに対して、田中代表は「メディアは反対運動を左翼運動に見せようとしている」と述べて拒否した。

その上で「TPP反対運動は左翼運動でも労働運動ではない。生活の問題である。是非とも参加表明を阻止しようではないか。」と述べた。

元外交官の孫崎享氏は「TPPはメリットがなく、危険が大きい」と警告した。

「環太平洋と言ってもカナダやメキシコは入っていない。ASEAN諸国もインドネシアなどは入っていない。中国も入っていない。中国経済圏の方を考えるべきではないか。アメリカに追随すれば日本は安泰という考えから脱却すべき。」

宮台氏は「かつてはTPPに賛成していた」と告白する。会場からは「あなたは、いつも最初は間違えるんだよ」とのヤジが飛ぶ。TPPは日米構造協議と同じ構造であると警告する。

「日米構造協議でもたらされた大規模店舗規制法緩和が地方商店街のシャッター商店街化の要因である。日本には外圧によって政策を変えようとする人々がいる。現状の農業政策が問題を抱えており、農業政策を変えなければならないという面があるが、それとTPPは別問題である。」

篠原孝・前農水副大臣は「アメリカのスタンダードに変えさせられる。TPPは多国間の衣を被った日米構造協議」と批判した。地方では「限界集落ではなく、崩壊集落と言われるところもある」と地方の疲弊を訴えた。

藤波氏は「TPPにより東北の復興は阻害される」とし、「TPPは怪我をしてる人に走れと言っていることと同じです」と述べた。

演説会終了後は霞が関や国会議事堂にデモ行進した。

TPPによる日本再占領と崩壊する世界秩序に立ち向かう知恵

TPPによる日本再占領と崩壊する世界秩序に立ち向かう知恵

真相JAPAN 第四回勉強会「TPPによる日本再占領と崩壊する世界秩序に立ち向かう知恵」が11月5日に池袋勤労福祉会館で開催された。第一部は安部芳裕氏の講演である。第二部は安部氏、竹原信一氏、山崎サラ淑子女史、ジェイ・エピセンター氏、高橋清隆氏、天野統康氏をパネラーにしたシンポジウムである。

真相JAPANは東日本大震災を契機に生まれたメールマガジンで、竹原信一ブログ市長へのインタビューやカダフィ大佐の追悼記事など他のメディアとは異なる視点を特色とする。勉強会でもカダフィ大佐の写真が掲示され、オルタナティブな雰囲気を醸し出していた。

『原発震災後の日本の行方〜知られざるTPPの真実』などの著書のある安部氏はTPPの問題点を説明した。最初にTPPが環太平洋戦略的経済連携協定と訳されていることを「誤訳」とする。「Trans-Pacific」は「太平洋横断」になると主張する。

また、参加表明後に条件が提示されるTPP参加方式を詐欺商法と同じとする。

「詳しい情報が分からないのに入るか入らないか決めなければならないことは怪しい。契約の内容を明らかにしないで契約を迫るビジネスは大抵詐欺である。」

TPPのキャッチフレーズとなった「第三の開国」にも手厳しい。

「第一の開国はペリーの砲艦外交による不平等条約の押し付けであり、第二の開国は敗戦による占領である。第三の開国とは不平等条約を押し付けられて、占領されることではないか。」

前原誠司外相の発言「国内総生産(GDP)構成比1.5%の農林水産業を守るために、残り 98.5%を犠牲にしていいのか」によって農林水産業がTPPの抵抗勢力のようにされているが、その嘘も指摘した。

「現在の日本の最大の貿易相手国は中国である。アメリカではTPPを中国封じ込めのブロック経済と見ている。日本がTPPに参加すれば最大の貿易国である中国を失ってしまう。」

さらにTPPが格差拡大という小泉構造改革からの一貫した流れであることを指摘した。「労働者の平均賃金は下がり続けている。労働者への分配率が下がった。郵政民営化は郵便だけの問題ではない。郵貯と簡保をウォール街で運用させることが狙い。鳩山政権が日米構造協議の窓口である日米規制改革委員会を廃止した後でTPPが発生した。日本の貧困率は米国を抜き、格差の激しい国になった。」

米国では「コーポレート・ランドという言葉が流行っている」とする。企業領土である。

「TPPでは投資先の相手国を訴えて、損害を賠償できる。外資が公正な競争を阻害されたかで判断される。多国籍企業に治外法権を与えることになる。国民を法律で守れなくなる。」

NAFTAによってカナダの農家の所得は減った。メキシコは主食のトウモロコシの輸入が増加して自給率が低下した。バイオ燃料ブームでトウモロコシが高騰し、低所得者は買えなくなった。

最後に安部氏はTPPへの対抗策として「まず勉強すること」を挙げた。そして「友人や知人、政治家、マスメディアへの働きかけ」を提言する。さらに「オルタナティブな暮らしの実践」として、「食べ物は信頼できる農家から購入する。仲間内で共同体を作って食糧やエネルギーを自給する」などにより資本主義の影響を受けにくい生活を提案した。

第二部はシンポジウムである。竹原氏はTPPについて、「この国がやりそうなことである。官僚は国民を利用するために法律を作る。略奪国家のやり方」と批判した。

ファイナンシャル・プランナーの天野氏は「日本がアメリカ化していく」との感想を述べた。具体例として医療を挙げる。

「米国の民間保険会社が進出する。政府が負担を減らせば、米国の保険会社がカバーする。人間の生活が金銭の対象になる。」

さらに「アメリカ化すると言っても、日本は実質的にはアメリカの植民地であるため、アメリカよりひどくなる」と警鐘を鳴らした。

ヒップホップアーティストにして国際情勢分析家のジェイ氏は、TPPの方向性を「社会のために個人があるという全体主義」と断じた。

「アメリカのルールを日本に押し付けることは新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)そのもの。右よりの軍事的な全体主義である。」

安部氏「市場原理主義が地球上を覆っているカルト主義。全ての規制を取っ払って企業に任せることで、企業が利益を得る。国という機関を利用して、あらゆる人間から搾取する。」

山崎氏「収奪システムとしての国家。国家を乗っ取って収奪する寄生虫のような人間がいる。最終的な受益者は誰か。日本はアメリカにやられっぱなし。TPPで日本の主張が通ると考えることは夢物語である。マスメディアが真っ先に狙われる。外国人の持ち株比率の撤廃を求められる。」

最後のまとめとして、安倍氏は米国の刑務所ビジネスに注意喚起した。刑務所が民営化され、囚人に低賃金で労働させて企業が儲けるという奴隷社会的な構造がある。一方でTPP反対では国民が政治家に反対を働きかけるようになったことを希望とした。

この勉強会ではTPPを政治支配の問題から捉える視点が特徴である。これまでTPPは経済的なプラスマイナスで論じられる傾向が強かった。最近では反対論から生活の問題と主張されるようになったものの、さらに一歩進めて資本の支配構造まで迫っている。また、日米構造協議や構造改革から一貫した米国の狙いを浮き彫りにする歴史的視点も、目の前の問題に心を奪われがちな日本社会で強調される価値がある。

残念な点は第一部と第二部の時間配分に偏りがあり、パネラー同士や会場とのディスカッションが不十分であったことである。特に阿久根市長として地方の疲弊した実態を体感している竹原氏の発言が欲しかったところである。

一方でTPP反対は新たな害悪への反対であって、反対を貫徹したとしても今の日本の抱える問題を解決するものではない。日本の現状を問題視して改革を志向した竹原氏にとっては反対論だけでは語ることは少ないとも言えるかもしれない。