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いま若者は?(足立のアレフ、格差、貧困、こころ)

林田力

希望のまち東京in東部と貧困問題

希望のまち東京in東部が貧困問題に取り組むきっかけは、2013年の足立区舎人の貧困ビジネス進出問題です。
●「特定非営利活動法人やすらぎの里」(中野区弥生町)が無料低額宿泊所「やすらぎの里 舎人寮」を建設しようとしました。
●これが貧困ビジネスであるとして住民反対運動が起きました。
●住民らは「無料低額宿泊所等の設置運営に関し、国において制度の整備を求める意見書提出についての陳情」を足立区議会に提出し、2013年7月3日に採択されました。

都政わいわい勉強会in東部地区 「貧困ビジネスを考える」

この足立区舎人の貧困ビジネス進出問題をテーマとして勉強会を開催しました(都政わいわい勉強会in東部地区「貧困ビジネスを考える」2013年10月26日、すみだ産業会館)。
貧困ビジネス規制は当然として、貧困ビジネスに住まざるを得ない人々の住まいの貧困の解決が求められるとの意見が出ました。
そこで、希望のまち東京in東部は、足立区長と足立区議会宛に「区内の空き家の実態調査の実施とそれに基づく施策策定を求める陳情」を提出。空き家をシェアハウスなど低所得者向け住宅に活用することなどの検討を求めました。

希望の政策を語り合う集い

希望のまち東京in東部は2014年11月1日には貧困問題をメインテーマに「希望の政策を語り合う集い」(東京芸術センター)を開催しました。
●伊藤和彦区議と、おぐら修平区議が参加。
●「あだち若者サポートステーション」取り組みを一定評価。

あだち若者サポートステーション

・定型的な職業訓練だけでなく、「コミュニケーションセミナー」など社会への適応支援を行います。
・ハローワークが同じ建物内にあり、縦割り行政の弊害を回避しています。
・産業経済部就労支援課が所管です。福祉的な機能でありながら、経済部署が所管しているところがユニークです。

あだち若者サポートステーションの取り組みの一つに「仕事道場」があります。これはコミュニケーション能力等の乏しいニート等がNPO職員の指導のもと、地域の事業所で就労体験(訓練)を行います。平均就労期間は約3.9か月であります。2009年度から開始され、2012年7月までの訓練受講者57名中36名が卒業し27名が就職しました。

アレフ問題

希望のまち東京in東部は2015年4月12日に足立区入谷のアレフ施設周辺を見学しました。白い建物がアレフ施設です。足立区内にはアレフの施設が3施設あり、約100人の信者が居住しています(平成25年度第一回足立区青少年問題協議会、2013年7月8日)。

敷地の入口には、「ご用の方は、インターフォンを押してください」との貼り紙がありました。

周辺には反対運動の幟が林立しています。住民らは「足立入谷地域オウム真理教(アレフ)対策住民協議会」を結成し、アレフへの抗議活動を行っています。

若者の格差

格差の拡大・固定化は深刻です。ワーキングプアが増えています。給与所得者のうち、年収200万円未満の割合は年々増えています(国税庁「民間給与実態統計」)。

特に一人親家庭の貧困は深刻です。「母子家庭の貧困率は5割を越え、就労による収入は平均181万円です。これは子どもがいる他の世帯に比べて400万円低く、その5割以上が非正規雇用」(NHKハートネットTV「【取材記】母子家庭の貧困は自己責任?」2014年04月30日)

非正規労働者の割合も年々増加しています(不破雷蔵「パート・アルバイトだけで1320万人…非正規社員の現状」2014年3月15日)。

非正規労働者の賃金は正規労働者に比べて低い上に年齢の変化もありません。希望が持てない状態です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2008年、厚生労働省「派遣労働者実態調査」2008年)。

この非正規雇用は足立区政においても大きな論点です。足立区は2006年(平成18年)に「足立区における公共サービス改革の推進に関する条例」を全国で初めて制定するなど行政改革の先進自治体です。これは裏返せば官製ワーキングプアを拡大するブラック自治体と批判されていることを意味します。

現実に足立区の指定管理者制度では労働紛争が起きています。足立区立花畑図書館館長不当解雇訴訟や足立区立竹の塚図書館副館長雇い止め訴訟です。竹の塚図書館副館長雇い止め訴訟は2015年3月12日に東京地裁で判決が出て、労働契約上の地位確認を認め、未払い賃金の支払いを命じました。

足立区固有の特徴として、図書館分野とは縁遠い業界の地元業者が指定管理者となっています。花畑図書館館長不当解雇訴訟は株式会社グランディオサービス(機器販売)、竹の塚図書館副館長雇い止め訴訟は株式会社トミテック(金属加工業)が指定管理者でした。相対的に中小規模の企業が図書館分野のノウハウを持たずに指定管理者になったことによる混乱という面があります。

但し、地元業者の活用は地元経済への貢献という点では肯定できる面もあります。東急コミュニティーが着服横領事件で港区から指名停止になるなど大手業者だから安全というものでもありません。足立区ではスイミングクラブ運営企業が指定管理者になっている例があるが、これは図書館とは縁遠い業種ですが、集客業のノウハウを活かした水平戦略と評価することもできます。

また、指定管理者制度下の労働紛争は、花畑図書館館長は46歳男性(解雇時)、竹の塚図書館副館長は52歳女性(地裁判決時)と若者の雇用問題ではありません。

逆に行政改革を推進する側は民間委託の推進による「若年層雇用の創出」を主張します(日本公共サービス研究会「中間報告書~ 幹事自治体・足立区の視点から~」7頁、2013年6月)。従来型の民間委託が官製ワーキングプアを生んだことを認めつつ、戸籍業務など専門定型業務の外部化により、若者の雇用創出を指摘します。

「行政の専門定型業務は、教育研修になじみやすいうえ付加価値が高い。これを雇用政策に活用すれば、実効性の高い雇用政策が実現される」(日本公共サービス研究会「高度・次世代ワークシェアリングによる新自治体改革をめざす」2014年)。

若者の格差問題を考える場合は世代間格差があります。金融資産の保有者は高齢世代に偏っています。かつては年功序列賃金で高齢になれば資産が蓄積されると言われましたが、ブラック企業などに苦しむ今の若者が高齢者になれば資産が増えているとは言えません。

高齢者の貧困者も存在する中で、若者問題を重視すべき理由は、この世代間格差・世代間不公正です。貧弱な公的福祉の代替であった企業内福祉などの恩恵を受けずに自己責任の結果だけを負わされている世代への対応が必要と考えます。

若者の貧困

まず若者の貧困の実態を知らなければなりません。ネットカフェを渡り歩く少女がいます。母子家庭である。義父との折り合いが悪く家出します。「自分は生きていて良いか」と少女に言わせてしまう社会があってよいでしょうか(「漂流チルドレン 家出少女のリナ 「生きててええの?」」毎日新聞2013年12月13日)。

住まいの貧困は深刻です。不健康で危険な脱法ハウスが増えています(「「脱法ルーム」増殖」東京新聞2013年6月13日)。一昔前の貧困ビジネスはゼロゼロ物件であったが、社会問題化や行政処分などで下火になり、新たな形態として台頭した。

一方で「居場所は脱法ハウスだけ」と語る女性がいます(「「居場所、脱法ハウスだけ 少ない収入、親に頼れず 増加する『女性専用』元住人」」毎日新聞2013年8月5日)。公的福祉が貧弱な日本では貧困ビジネスがセーフティネットであるかのような装いを持ってしまいます。

「シェアハウス」のうち約8割の2000棟以上が、国などの基準で「不適合」とされる可能性が高い(「シェアハウス 8割が不適合 「寄宿舎」基準、業界懸念」毎日新聞2013年9月25日)。これは事務所や倉庫と称して細かく仕切った施設に住まわせるケースだけでなく、住宅を転用する普通のシェアハウスも規制対象となることの問題です。その後、国土交通省は規制緩和を発表しました。

若者のこころ

オウム真理教(アレフ)の問題に戻ります。アレフ問題の深刻な点は若い世代を中心に新しい信者が増えている点です。若い世代がオウムに惹かれる理由として大きく3点が考えられる。

第一に地下鉄サリン事件をリアルタイムで経験していない世代が増えています。この対策として、足立区では2013年4月にチラシ「大学生の皆さん、甘い誘いにご用心、オウム真理教って知っていますか」を区内の大学に配布しました。

第二に貧困と格差の拡大による閉塞感が広がっています。

第三に脱原発運動などの盛り上がりの負の効果として、陰謀論やカルト的体質も日の目を見るようになりました。オウムだけを異常視できるのかという問題があります。現実にアレフは勧誘に際し、「サリン事件は陰謀だった」などと説明しているという(「「サリン事件は陰謀」と洗脳…増えた信者・資金 でも出家信者は高齢化」産経新聞2014年12月1日)。逆に一部のインターネット上の市民派は不正選挙を唱えていますが、それは選挙に惨敗したオウム真理教が主張していたものでした。

政治学者・丸山眞男はオウム真理教が「他者感覚の無さ」という点で日本社会と類似すると指摘しました。自分達の世界で完結し、横につながらないと批判します。アレフ問題は市民派の健全性も問われます。




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