国家戦略特区は、何を狙うか

文責:林田力

希望のまち東京をつくる会は2014年6月6日、第3回希望政策フォーラム「国家戦略特区は、何を狙うか」を月島社会教育会館ホール(東京都中央区月島)で開催した。江東区東陽の希望のまち東京in東部事務所でもサテライト開催した。

「国家戦略特区は、何を狙うか」では冒頭で熊谷伸一郎氏が希望政策フォーラムの趣旨を説明した。

続いて奈須りえ・前大田区議会議員が国家戦略特区の概要を話した。東京23区は自治権の拡大に逆行している。東京都の職員が特別区の幹部になる傾向がある。23区は税収が豊かであるが、都民の生活に還元されていない。政権は大企業のホワイトカラーまで既得権益と考えている。労働者を既得権者としているのではないか。法で守られた国民を既得権者としている。

東京は9区が国家戦略特区に指定された。国家戦略特区は経済のための生活であり、生活のための経済ではない。規制緩和で儲けられる業者がルールを決める。利益相反ではないか。住民不在の制度である。国民が関与できない。

外国人労働者問題は難しい問題であるが、特区の外国人労働者は安い賃金で使われる。きちんと働ける状況を作っていかなければならない。今は箱モノの開発が進められている。一時的なバブルを作る。市民の生活には還元されない。

郭洋春・立教大学経済学部教授は特区制度の経済的背景、経済成長に国家戦略特区が用いられる意味を説明した。特区は民間活力を引き出すことによる地域経済の活性化が狙いである。これ自体は諸外国に例がある。地域経済の活性化が狙いならば、既に活性化している東京に作る意味はない。疲弊している地方に作るならば意味はある。大都市を特区にすると地方との格差が拡大する。安倍政権の国家戦略特区は東京や都市圏への一極集中をさらに進めるものである。

国家戦略特区は新自由主義の台頭と関係がある。中曽根改革や小泉構造改革は特定の産業を狙った限定的な改革であった。安倍首相は残された部分を全面的に改革しようとしている。特区は特定の地域だけで、地域外は関係ないと思いがちである。それが国民を徐々に慣らせてしまう。国民の反対意識を麻痺させる。特区で認められると他の地域でも認められる。特区だから限定的とはならない。

混合診療によって健康保険制度が崩壊すれば高額の医療費が請求される。盲腸の手術で五百万円請求された例がある。国家戦略特区は外国の企業のための制度である。アメリカの企業のために、どうぞ自由に日本の地域を使ってくださいという制度である。

宇都宮健児・日弁連元会長は国家戦略特区で憲法がないがしろにされてしまうのではないかとのテーマで話した。まず国家戦略特区には雇用の問題がある。解雇しやすくする。今は他のところで議論されているが、残業代を払わなくてよくする。このためにブラック特区と批判された。労働者派遣法の改悪を安倍政権は考えている。特区以外のところでも同じような規制緩和政策が進められている。

医療制度が特区によって破壊されていくと、お金がないから病院にかかれない医療難民が増える。医療費を払えずに手術が受けられなくなる。命に格差が生まれてしまう。ある人は助けられて、ある人は助けられない。とんでもない社会になる。

容積率を緩和して高層ビルを建てられるようにする。ゼネコンには嬉しいが、商店街には問題である。大企業の一人勝ちということになりかねない。

日本は貧困と格差が広がっている。国民健康保険の滞納者が増えており、本当は国民皆保険制度を強めなければならない。住まいの貧困も深刻である。脱法ハウスに住まざるを得ない。都民の暮らしは悪化している。

質疑応答では内田聖子・アジア太平洋資料センター事務局長が司会をした。

内田「虎ノ門再開発は国家戦略特区と関わりがある。森ビルは巨大なビルを今後も建てると意気込んでいる。東京の風景が変わってしまう、金の流れが変わることを危惧している」

質問「外資を呼び込むことによる利益はどこに行くのか」

郭「本国の本社に送金することが外資の望みである」

質問「税金が都民のために使われていない」

奈須「2020年まで稼いで後は知らないという考えで進めているように見える。地方交付税の不交付団体は財政が豊かな自治体であることを意味する。そのような自治体で待機児童が出ていることが問題である」

質問「国家戦略特区では、労働者が早期退職を迫られるようになるのではないか」

宇都宮「早期退職を迫られるかどうかは分からないが、有期雇用の問題で5年以上勤めたら、それ以上勤めた場合に無期に転換できる制度がある。ところが、企業が5年で雇い止めにする就業規制を作り、問題になった。これで労働組合などを作って闘っているところがある」

質問「国家戦略特区のような無法地帯が何故許されるのか」

宇都宮「憲法上の最高の価値は人格権である。特区は市民の基本的人権を侵害する制度である。声をあげていかなければならない」

質問「医師会は反対しているか」

那須「医師会は反対しているが、個々の医師には色々な考えがある。混合診療で経営が楽になるとの期待がある。しかし、製薬会社などが儲かるだけで医師の手元に残るかは分からない」

郭「韓国の医師がストを行った。韓国では、なし崩し的に規制緩和が進み、中小病院が潰れている。残った病院も大病院の系列化している」

質問「国家戦略特区を止めるために住民ができることはないか」

那須「区議会で議論は少ない。与党議員からは特区を歓迎する質問が出ている。日本国憲法の規定によって住民投票を求める運動は意味があると考える。特区に指定されていない地域の人は無関係と思いがちであるが、特区に働く人、特区の病院に通う人もいる」

郭「復興支援をしながらオリンピックを成功させなければならない。しかし、東京のインフラ整備に注力して、東北の復興支援は滞っている。日本は何やっているのかという話になる」

宇都宮「都議会の議論をウォッチする。築地の問題もウォッチする。カジノも問題である。カジノは依存症や犯罪、ホームレスを増やす」

那須「地方分権は企業分権になっている。リーマンショック以来、マネーゲームの場がなくなっている。その投資のネタが特区などである。投資家が絶対儲ける仕組みを作る。統治機構がメチャクチャになっている。住民自治は何なのかを考える時期である」

サテライト会場の希望のまち東京in東部事務所では盲腸手術で500万円請求に驚いた人が多く、混合診療への危機感が高かった。国家戦略特区は幅広い問題であるため、捉えにくいところがあるが、手術の費用で500万円請求という具体的事実はインパクトがある。

また、手軽に進められてしまいそうな問題として、容積率緩和に警戒する意見が出された。疑問として区議会で特区指定反対の激論がなされた訳でもないのに、特区の指定が9区だけになった点が不思議との声があった。

サテライト中継はユーストリームを主体としたが、頻繁に待機状態になり、品質に難がある。その場合はツイキャスに切り替えた。しかし、ツイキャスはパソコン画面で見る場合と異なり、放映して視聴する上では画質・音質共に厳しいものがある。



「国家戦略特区は、何を狙うか」サテライト開催

第3回希望政策フォーラム「国家戦略特区は、何を狙うか」を希望のまち東京in東部事務所でサテライト開催します。
月島社会教育会館ホールで進行中のシンポジウムをインターネットで生中継します。
大きなスクリーンで一緒に鑑賞しながら、ツイッターなどでどんどん意見を出して、月島の会場に参加しましょう!
日時:6月6日(金)19:00〜20:50終了(18:30開場)
場所:希望のまち東京in東部事務所
http://www.hayariki.net/tobu/access.html
住所:江東区東陽3丁目21番5号松葉ビル202号室(1階がお寿司屋さんの建物の2階です)
交通:東京メトロ東西線木場駅2番出口・徒歩4分、東陽町駅2番出口・徒歩6分
   都営バス東陽三丁目バス停・徒歩1分
参加費:無料 予約:不要

サテライト環境
希望のまち東京in東部
どうなる!?東京の暮らし 医療制度は? 雇用が変わる? 国家戦略特区って何?
国家戦略特区とは何か。各自治体への影響は。
いったい何が、どう危険なのか。

宇都宮けんじと市民一緒に都政の問題を考えながら対話を重ねて、共に政策をつくり上げていく希望政策フォーラム。その模様はインターネットで中継し、会場からの意見やTwitterなどで寄せられた意見も取り入れながら議論を進めていきます。(ハッシュタグ #UKask)
第3回目の今回は、「国家戦略特区」を取り上げます。東京都23区のうち9区が指定となり都民の生活に大きな影響を及ぼすことが必至なこの法案の概要や現状、私たちの暮らしが具体的にどう変わるのかなどを考えながら話し合っていきます。

◇出演◇
宇都宮けんじ 弁護士・日弁連元会長
多重債務問題、消費者金融問題の専門家。宮部みゆきの小説『火車』に登場する弁護士のモデル。反貧困ネットワーク代表や年越し派遣村名誉村長を務めるなど「たたかう弁護士」として知られる。 2013 年に続き 2014年都知事選に出馬、982,594票を集め、2位に。Twitter:@utsunomiyakenji

奈須りえ 市民政策アナリスト・前大田区議会議員
大田区議会議員を2003年~2012年の3期務める(東京都・生活者ネットワーク)。2013年都議選に出馬するも惜しくも落選。議員経験を活かし行政情報、議会情報を集積、分析し発信中。国家戦 略特区が引き起こす問題を誰よりも早く発信してきた。市民政策アナリスト。環境総合研究所非常勤職員。Twitter:@nasurie

郭洋春 立教大学経済学部教授
開発経済学、アジア経済論が専門。著書は『開発経済学』(法律文化社、2010年2月発刊予定)。佐久間孝正・林倬史・郭洋春編著『移動するアジア』(明石書店、2007年)。郭洋春・戸崎純・横山正樹編『環境平和学』(法律文化社、2005年)。その他多数。Twitter:@yckaku

内田聖子 アジア太平洋資料センター事務局長
自由貿易、多国籍企業などの調査研究、政策提言、キャンペーンなどを行う。TPPに関しては国際NGOとして交渉をウォッチ、TPP反対の立場からの発言を行う。「STOP TPP官邸前アクション」呼びかけ人。Twitter:@uchidashoko

【実イベント概要】
◇主催◇希望のまち東京をつくる会
◇日時◇2014年6月6日(金)19:00開始(18:30受付開始、20:50終了)
◇会場◇月島社会教育会館ホール(東京都中央区月島4-1-1)
◇入場料◇1000円(障害者、大学生・22歳以下は無料)
◇託児あり◇

◇ネットからの質問も受け付けます◇
・Twitterで、#UKask のハッシュタグつきで、つぶやく。
・ツイキャスhttp://twitcasting.tv/teamutsuken の視聴画面に、書き込む。
◇詳細◇
宇都宮けんじブログ http://utsu-ken.seesaa.net/article/396382845.html
Facebook https://www.facebook.com/events/1437272839862221/

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