宇都宮健児氏の都知事選出馬を歓迎

林田力

宇都宮健児氏が2013年12月28日に「日本のピンチを希望に変えるtalk talk talk!」で東京都知事選挙への出馬を表明した。私は2012年の東京都知事選挙に際して東部勝手連や「人にやさしい街づくりをめざし、宇都宮さんを応援する会」に参加した。大型開発を抑制し、ブラック企業問題や住まいの貧困に取り組むことができる人物として宇都宮氏の出馬を歓迎する。

宇都宮氏はYahoo!ニュース配信のインタビュー記事ではブラック企業対策や住まいの貧困対策(空き家活用、家賃補助)を訴えている(志葉玲「【速報】都知事選、宇都宮健児氏「多くの人々の応援得られたら、それに応える覚悟ある」Yahoo!ニュース2013年12月22日)。これらは見落とされていた問題であり、若者など苦しむ人々に切実な問題である。

2013年は脱法ハウスやブラック企業など貧困問題が深刻化した。脱法ハウスは制度的には違法ということで決着したが、脱法ハウスに住まざるを得ない住まいの貧困は依然として問題である。2014年は単に前回の次点候補者という以上に反貧困の宇都宮氏に期待する理由がある。2012年の選挙戦では反貧困では実績があり、それ以外の問題意識を持つ層をどこまで取り込むかが課題であった。そのために反貧困は抑えられる傾向があったが、むしろ2014年は前面に出すべきである。

一方で宇都宮氏が「日本のピンチを希望に変えるtalk talk talk!」での政策は新鮮味がなかった。新しい内容は首都直下地震対策くらいであった。これは大型開発抑制の論理になるが、積極的な攻めの材料にはなりにくい。「日本のピンチを希望に変えるtalk talk talk!」は「民主主義社会に秘密保護法はいらない!」実行委員会主催の集会である。左翼教条主義の色が付き過ぎることは前回選挙の反省点であるが、この集会では趣旨に合ったものである。

管見は東京都知事選挙で脱原発や秘密保護法反対、STOP THE ABEを声高に叫ぶことは消極的である。前回の東京都知事選挙でも宇都宮選挙が脱原発に傾斜したことを批判した。脱原発や秘密保護法違憲を唱える知事が誕生したという事実を脱原発や秘密保護法反対の運動の推進剤に利用することは正しい。しかし、ここで問題にすることは当選させるために有益かということである。イデオロギー対立の強い国政マターだけを唱えても東京都知事選挙で支持は広がらない。

一方で、いくら戦略的に触れないことが正しいとしても、それは支持する側のモチベーションに関わる問題である。高田健氏は「安倍さんと戦う候補者でなければ私達の力が湧かない」と語る。これは正直な思いである。それ故にイデオロギー対立の強い国政マターだけにしないことが重要になる。そこでブラック企業対策や住まいの貧困対策が意味を持つ。

市民派には宇都宮氏ではなく、勝てる候補・幅広い支持が得られる候補への待望があることも事実である。これに対して集会では宇都宮氏である理由を説明している。海渡雄一弁護士は「政策を担える人が他にいるか」と主張する。高田健氏に至っては「宇都宮さんでなくてもいい」とまで言った上で「そのような人はいない」と言う。

管見も宇都宮氏に絶対的な拘りがある訳ではない。政策が合致した上で左翼教条主義の色がない人ならば大歓迎である。宇都宮氏の出馬宣言は市民派候補として様々な名前が出ている中で宇都宮氏が先制したものであり、他の人が後から出馬宣言することに遠慮は不要である。宇都宮氏では勝てないとの声もある中で、宇都宮氏が出馬したから見合わせるというような人物では到底勝つ見込みはない。もし新たに出馬表明する候補者がいたならば、その際に検討すればいい。具体的に出馬意思がある人が宇都宮氏しかいなければ「宇都宮氏が妥当か否か」が問題である。明らかになっていない人物を待っても仕方がない。

市民派では宇都宮氏以外の名前も取りざたされている。私は東急不動産だまし売り裁判から東急不買運動を実践した立場であるが、それは東芝不買運動に触発された面もある。もし既存の革新政党も守旧派に思えるような消費者の立場に立ったラディカルな候補者を打ち出すことができるならば面白いとは思う。但し、今までの支持層を包含して、さらに広がりを得られる人はハードルが高い。あちらの支持を狙えば、こちらが離反するトレードオフになりがちである。

先制的な出馬宣言に対して「話が違う」と腹を立てている人もいると聞く。この点について、もし水面下の調整という名目で党派的対立が固定化して身動きとれない状況に陥っていたならば、局面打開の有効な方策になる。これは政治家として、都知事として必要な能力である。当選したとしても議会の壁がある。政策を実現するためには世論の支持を背景に進めることも必要である。それはハシズムと重なる手法と嫌悪する向きもあるかもしれないが、手法は学ぶ価値がある。

前回選挙の得票数が当選に遠く及ばない事実は、それほど気にすることはない。日本共産党も2012年12月の衆議院議員選挙では沈み、将来的には消滅するのではないかとの声もあったが、僅か半年後の都議選・参院選で躍進した。そこには都議選での外環道などの具体的な大型開発批判や参院選でのブラック企業批判がある。主張の見せ方を変えることで支持を広げた。宇都宮氏にもポテンシャルはある。政策の出し方が重要になる。

2012年の宇都宮選挙では勝手連側に選対との連絡がうまくいかなかったという不満が生じた。事実上の都知事選決起集会となった「日本のピンチを希望に変えるtalk talk talk!」では地域別に別れてグループディスカッションする時間が設けられた。前回の課題を踏まえた動きとして評価する。選対への不満から一部は選対への過激な意見も出ているが、選対は選対で考えていると感じられた。


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