東京急行電鉄(東急電鉄)と東急系列のファイブハンドレッドクラブが千福ニュータウン団地施設管理組合(静岡県裾野市千福が丘)に対し、債務不存在の確認を求めた訴訟の判決が静岡地方裁判所沼津支部3号法廷で2010年11月29日に言い渡された。多くのニュータウン住民が傍聴に集まり、傍聴席は満席となったが、判決内容は住民にとって意外なものであった。
千福ニュータウン団地施設管理組合は千福ニュータウンの住宅や、東急電鉄の別荘地ファイブハンドレッドフォレストやゴルフ場ファイブハンドレッドクラブからの汚水を処理している。この裁判は東急電鉄らの汚水処理の負担金をめぐる争いである(林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(上)」PJニュース2010年11月15日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5139790/
東急電鉄らは2008年8月27日付で汚水処理施設の利用に関する追加加入金・追加分使用料金等の支払い債務が存在しないことの確認を求めて提訴した(平成20年(ワ)第744号、債務不存在確認請求事件)。これに対し、管理組合は東急電鉄に対して約1億3000万、ファイブハンドレッドクラブに対して約2億円の支払いを求めて反訴した(平成22年(ワ)第647号、未払管理費等反訴請求事件)。
両者の対立は汚水処理の負担金の算定基準となる口数の算出方法である。両者の主張は以下のように大きく隔たっている。
ファイブハンドレッドフォレスト内にあるIHI(旧社名:石川島播磨重工業)の保養所・富士山荘について、管理組合は44口、東急電鉄は4口と主張する。同じくファイブハンドレッドフォレスト内の高砂熱学工業の保養所・裾野クラブについて、管理組合は60口、東急電鉄は5口と主張する。
管理組合は保養所が「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」(JIS
A
3302)の「ホテル・旅館」に該当すると主張する。これに対し、東急電鉄は「簡易宿泊所・合宿所・ユースホステル・青年の家」に該当すると主張する。「ホテル・旅館」と「簡易宿泊所〜」では汚水量の算定式が異なり、同一規模の建物でも後者の方が口数の負担が圧倒的に少なくて済む。
また、ゴルフ場について、管理組合は187口、ファイブハンドレッドクラブは67口と主張する。管理組合の主張する口数が多い理由はゴルフ場内のレストランやロッジをゴルフ場の水量に加算したためである。さらにゴルフ場にはファイブハンドレッドクラブが明らかにしていない建物があり、図面等で詳細に検討して正確な処理対象人員・計画汚水量を算定する必要があると主張する。
これらの問題に対し、静岡県沼津土木事務所への調査嘱託が行われた。沼津土木事務所は2010年2月16日付で主に以下の内容を回答した。
質問「保養所はJIS A 3302の『ホテル・旅館』になるのか『簡易宿泊所〜』になるのか」
回答「建築計画によりますが、一般的には『ホテル・旅館』に該当します。」
質問「ゴルフ場内のロッジやレストランをゴルフ場の計画汚水量に加算しない場合はあるか」
回答「しない場合はありません。」
管理組合は沼津土木事務所の回答を管理組合の主張を裏付けるものと理解した。管理組合の2月23日付の陳述書では以下のように述べている。
「保養所は『簡易宿泊施設』であるとか、『ロッジ、レストラン』は加算しないとかいう主張自体が、悪意を持った専門家の素人を騙す行為であることが明らかになった。」
また、保養所が「簡易宿泊所〜」に該当しない理論的根拠も以下のように述べる。
「そもそも、フォレスト地域の立派な保養所を『簡易宿泊所』とするには無理がある。簡易宿泊所は、多人数で共用する構造および設備を主とする施設である。よって、共用部分が多く、且つ、法律により各部屋に個別の鍵がかからない構造である。」
実際、ファイブハンドレッドフォレストのウェブページには以下のような仰々しい宣伝文句が並ぶ。そこからは事業主自身がドヤなどの簡易宿泊所と同列の扱いを求めていることが信じられない。
「都会では味わえない本物の自然を満喫できるステータスゾーン」
「新しい日本の経済・社会文化の潮流を支える人々の、知的・動的交流による新しい価値の創出」
宣伝広告では美辞麗句を並べながら、裁判で責任追及される段になると、不動産業者は自ら謳ったセールスポイントを否定し、それに矛盾する主張を行う。これは不動産トラブルの裁判ではお馴染みの光景である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年、18頁)。不動産業者の建物に対するプライドや誇りのなさが、日本の住環境や街づくりの貧困の大きな要因である。
一方、東急電鉄らは3月18日付の「準備書面(8)」において、「JIS A 3302は建築計画や建物の使用状況によって柔軟に解釈適用されるものである」と主張した。
これに対し、管理組合は3月20日付の意見書で改めて保養所を簡易宿泊所とする不合理などを主張した。
「男女が別に宿泊し個人スペースが限られ、鍵もかからないような宿泊施設は保養には向かないと考えており、当然、保養所は簡易宿泊施設には属さない」
その後、東急電鉄らは8月16日付で訴えの変更申立書を提出し、2007年5月27日開催の管理組合の総会決議の無効確認等を求めた。その総会決議では管理組合の規約や使用細則が改正され、「管理組合はすでに口数を有する組合員に対して、上記算定基準により口数の変更を通告することができる。」などと定められた。
東急電鉄らは千福ニュータウン団地施設管理組合が区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)上の団地建物所有者の団体であると主張する。その上で以下のように定めた区分所有法第31条第1項を持ち出す。
「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」
そして上記総会決議は東急電鉄らの承諾なくなされた改正であり、無効であると主張した。
訴訟は9月16日に結審し、判決言い渡しを迎えた。判決言い渡しで栗原洋三裁判官は主文を読み始めたが、途中で中断し、10分間休廷するというアクシデントがあった。法廷再開後に裁判官が「主文に誤りがあることに気付いた」と説明した。
判決は東急電鉄らが訴えの変更で追加した総会決議の無効を確認し、それ以外の両当事者の請求を棄却した。東急電鉄らにとっては一部認容、一部棄却であり、管理組合にとっては全面的な棄却であった。
判決は管理組合が区分所有法上の団地建物所有者の団体であると認定した。その上で「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」について、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該建物所有関係の実態に照らして、その不利益が上記団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」と判示した。
そして東急電鉄らの主張する口数が「JIS規格に反するものではない」ことを理由に総会決議を無効とした。判決はJIS規格の但し書き「ただし、建築物の使用状況により、表が明らかに実情に添わないと考えられる場合には、この算定人員を増減することができる。」などを根拠に、東急電鉄らの主張する口数が「JIS規格に反するものではない」とした。
管理組合が口数の変更を通告できると定めた総会決議が無効とされたことで、その規定に基づいて管理組合が東急電鉄らに請求した追加分使用料金等を請求する根拠がなくなる。このために判決は東急電鉄らの勝訴である。
しかし、管理組合の主張は東急電鉄らが最初から不正な計算で口数を算定していたということである。そして管理組合の算定方法を裏付ける証拠も存在した。そのために管理組合は裁判に自信を持っていた。管理組合の2010年5月30日開催の定期総会議案書は以下のように述べる。
「沼津土木事務所に裁判所から、調査嘱託を出してもらい、検証してもらいました。これで、東急電鉄の嘘が完全に暴かれており、必ず勝ちます。」(4頁)
それが僅か結審1ヶ月前に申し立てられた訴えの変更によって判決の帰趨が定まってしまった。これは管理組合にとって晴天の霹靂であった。管理組合は判決後に静岡県弁護士会沼津支部会館で怒りの記者会見を開いた。
会見で杉谷伸芳理事長は「論理的に成り立っていない」と判決を厳しく批判した。東急電鉄の不正は、規約改正とは無関係である。東急電鉄は少ない費用負担でゴルフ場や別荘地の汚水処理を管理組合に行わせている。その分は住民の負担になる。それを無視する判決に従えば、東急電鉄の企業活動を住民が支えなければならないことになる。控訴せざるを得ない。あまりのショックに声が出ない。社会正義が貫けないことが困る。
住民は東急電鉄によって多大な迷惑を被っている。社会が不正な企業に鉄槌を下さないことは問題である。判決によって失われたものは住民の金だけでない。大企業は何をしても許されるという日本社会の悪いところが出た。判決内容は全く想像もしていなかった。過去には汚水を処理せずに違法に放流していたなどの数々の不正が行われたことも分かっている。証拠も東急電鉄の誤魔化しも明白であり、判決は理解できない。憤りを覚えると述べた。
続いて管理組合代理人の田中晴男弁護士が「規約改正が有効か無効かの問題に矮小化された」と述べた。千福ニュータウン団地施設管理組合にはマンションを想定した区分所有法は適用されないと主張したが、認められなかった。そもそも口数は本来の正しい計算に基づくべきで、規約改正の問題ではないとも主張した。
東急電鉄らが安い利用料で下水を利用していることが問題である。誤った方法で口数を算出することが誤りである。実質的な不利益を被ってきたのは住民であり、「不利益変更禁止」という形式的な論理で扱わないで欲しいと訴えたが、そこまで踏み込む勇気が裁判所にはなかった。田中弁護士は「全体を見た上で判断する」としつつも、今後の選択肢として東急電鉄らの組合員からの除名に言及した。
それを受けて、杉谷理事長も東急電鉄管理区域を管理組合から切り離す意義を補足した。ニュータウンがある千福が丘は市街化区域であり、市街化調整区域の東急電鉄管理区域とは異なる。ニュータウンには公共下水道の話もある。東急電鉄管理区域の切り離しは管理組合にとって避けて通れない課題とする。
最後に杉谷理事長は改めて「東急電鉄が管理組合を欺いたという厳然とした証拠がある。」と強調した。強度が不十分なマンホールなど東急電鉄の手抜き工事の尻拭いで管理組合は3億円くらいの出費がある。「未来永劫、東急電鉄の食い物にはされたくない」と述べた。
東京急行電鉄(東急電鉄)と東急系列のファイブハンドレッドクラブが千福ニュータウン団地施設管理組合(静岡県裾野市千福が丘)を提訴した訴訟では管理組合の総会決議が無効とされた(林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡(中)」PJニュース2010年12月3日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5181692/
この判決はニュータウン住民によるコミュニティ活性化の努力を無にさせかねないものである。本記事では判決の問題点を論じる。
第一に千福ニュータウン団地施設管理組合が区分所有法第65条の団地建物所有者の団体に該当するかである。区分所有法第65条は以下のように定める。
「一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」
判決は東急電鉄の従業員が管理組合定期総会で以下の発言をした事実を認定しながらも、千福ニュータウン団地施設管理組合が団地建物所有者の団体であると理由も述べずに判示した。
「区分所有法というのは分譲のマンションの正しい運営が出来るようにと言うガイドラインが示されている。この組合の規約のベースにはなっていない。区分所有法と組合の存立の出発点は違う。」(判決書17頁)
しかし、ニュータウンの戸建て住戸と、ゴルフ場や保養所を「一団地内」とまとめることができるか疑問である。区分所有法には団地の定義は存在しない。団地の一般的な意味は以下の通りである。
「一般には、多数の建物が同一区画内に存在する場合に、それらの建物及び敷地を総称するものとして用いられる。」(財団法人マンション管理センター『平成21年度版マンション管理の知識』住宅新報社、2009年)
ニュータウンは裾野市千福が丘にあり、市街化区域である。これに対し、ファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストは裾野市千福にあり、市街化調整区域である。どれほど緩く考えても両者が同一区画内に存在するとは考えられず、「一団地」と見ることには日本語として無理がある。
さらにマンション管理会社大手の合人社計画研究所はウェブサイトで、「区分所有法上の団地」を以下のように定義する。
「当初より、それらの区画に土地(登記簿上、分筆されずに共有部分になっている)と建物が一体的に分譲されており、土地・建物に区分所有登記がなされているものをいいます。」
その上で「区分所有法上の団地」に該当しない場合を以下のように説明する。
「当初は土地(登記簿上分筆され単独所有になっている区画)のみを順次分譲し、その後建物を建てていったような団地は、『区分所有法上の団地』とはなりません。この場合の団地規約は区分所有法上の規約ではなく、民法など諸法令をもとにした約束を明文化したものです。」
これに従えば、順次分譲して戸建て住宅が建てられた千福ニュータウンの団地施設管理組合は、団地建物所有者の団体ではないことになる。判決では区分所有法上の団地であるか否かについて、もっと掘り下げるべきであった。仮に区分所有法上の団地であるとしても、法が想定する典型的な団地とは全く異なるものであることが理解できる。その考察は次に述べる区分所有法の適用にも影響する問題である。
第二に区分所有法第31条第1項の解釈である。そこでは以下のように規定している。
「この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」
この規定に基づいて東急電鉄らは総会決議が、特別の影響を受ける東急電鉄らの承諾を得ずになされたものであり、無効であると主張した。
判決は「特別の影響を及ぼすべきとき」を以下のように定義した。
「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該建物所有関係の実態に照らして、その不利益が上記団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」(判決書18頁)
この理論自体は妥当である。規約改正によって不利益を受ける場合の全てを「特別の影響を及ぼすべきとき」としたならば、どのように不合理な内容でも既得権が守られ、規約改正ができなくなる。その上で判決は「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当すると認定したが、判決の論理に立つならば組合の主張する「規約の設定、変更等の必要性及び合理性」を掘り下げて検討すべきであった。
無効とされた改正規約には目的規定もあった。改正規約第1条は以下のように定める。
「この規約は、千福ニュータウンに於ける団地内居住者間のコミュニケーション促進を図り、安心、安全、快適な住環境の維持向上を図ることを目的とする。」
改正前は以下のように規定されていた。
「この規約は、千福ニュータウン、ファイブハンドレッドクラブおよび500フォレストの団地施設である。」
これを東急電鉄らは「団地施設の利用地区から意図的にファイブハンドレッドクラブ、500フォレストを排除するもの」と主張した(「訴えの変更申立書」4頁)。
しかし、団地の解釈で検討したとおり、そもそも戸建て住宅中心のニュータウンと別の地区にあるゴルフ場や保養所が一緒の団地となること自体が不合理である。不合理な状況を正常化する規約改正は十分に合理性や必要性が認められる。しかも規約改正後も管理組合はファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストを排除していない。一般組合員に負担を転嫁させないことを求めているだけである。
より重要な点は判決が東急電鉄らの請求どおり、改正を丸々無効としたことである。改正規約では「千福ニュータウンに於ける団地内居住者間のコミュニケーション促進を図り、安心、安全、快適な住環境の維持向上を図ること」を目的とした。これによって管理組合は汚水処理を行うだけでなく、コミュニティ活性化や街づくりも目的となった。
実際に管理組合では株式会社千福が丘生活サポートを設立し、火災警報機の販売やリフォームの仲介など住民生活を向上させる様々なサービスを提供している。また、管理組合の事務所は囲碁など様々な同好会活動の拠点となっている。管理組合ではセキュリティ向上のために防犯カメラの設置・運用も検討され、子どもや高齢者向けの行事も企画されている。
管理組合は決められた業務だけ行い、余計な業務を行う余裕があるならば管理費削減によって住民に還元すべきという考え方がある。しかし、その種の小さな政府的な発想を千福ニュータウン団地施設管理組合は明確に否定する。
たとえばケーブルテレビを管理組合で一括して加入すれば各戸の工事費や基本料金を安くできる。これを各戸に任せるならば、各戸は高額な工事費や基本料金を負担しなければならない。消極的な活動は住民全体に不利益をもたらす。全体の利益を考えて積極的な運営を行うことが必要と主張する(千福ニュータウン団地施設管理組合「第20回(平成21年度)定期総会議案書」2頁)。
一方でゴルフ場や保養所を運営する東急電鉄らとしては、企業活動に必要な汚水処理を管理組合に委託しているのであって、低コストで汚水処理ができさえすればいい。つまり、ニュータウン住民らの利益と東急電鉄らの利益は完全に対立する。これはニュータウン住戸と別地域のゴルフ場などが一緒に管理組合を構成するという不自然さに起因する矛盾である。
判決では「組合員は、各1個の議決権を有するものとする。」への規約改正も無効とされた。改正前の規約では議決権は口数に比例して与えられていた。株主総会のイメージである。しかし、組合内に個人用の住宅と、ファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストのような大規模施設が混在する場合は不合理である。何故ならば、大規模施設所有者の意向によって組合の意思決定が左右されてしまうことになりかねないためである。
議決権を口数に比例して付与した当初規約には、組織として土地開発者の横暴を許す不合理を内包していた。管理組合では強度不足のマンホールなどの手抜き工事や、東急系列管理会社の違法放流などの杜撰な管理など様々な問題を抱えていた(林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(中)」PJニュース2010年11月16日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5141868/
未処理汚水の違法放流については沼津警察署の指導で、違法放流に使われた配管などが残されている。これらの問題の発覚は遅れたが、その一因が東急電鉄に有利な口数比例の議決権配分であった。そこで組合は土地開発者の横暴を排除し、一般組合員の利益を守り、過去の問題の連鎖を断ち切るため、口数に関わらず、各組合員の議決権を平等に一個とした。
これらの規約改正を無効とする判決は、これまで住民が積み上げてきた組合活動を否定するものである。コミュニティ活性化のための管理組合の活動は目的に反するとされ、管理組合では再び東急電鉄らが大きな発言権を持ってしまう。これは千福ニュータウンにとって住民自治の危機である。
判決は東急電鉄の不利益だけでなく、ニュータウン住民にとっての規約改正の必要性や合理性を正当に評価して比較衡量すべきであった。そもそも千福ニュータウン団地施設管理組合は土地開発者(東急電鉄)が作った覚書によって、土地購入者が組合を作ることを義務付けられ、発足した組合である。土地購入者の自発的な意思によって発足した組合ではない。
当初規約は土地開発者の利益を反映したものであり、その合理性は担保されない。それ故に形式的に東急電鉄の不利益になる変更と判断するのではなく、元々の規定が不合理ではないかという観点での精査が求められる。