月別アーカイブ:2019年02月だまし売りNo
岐阜県警の人事異動写真に「死ね」「呪」の文字
岐阜県警が春の人事異動の資料として報道機関に配布した顔写真データの一部に、「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「人事異動の顔写真に「死ね」の文字」共同通信2019年2月28日)。県警は職員による悪質ないたずらの可能性もあるとみて調べる。
岐阜県警察本部は2019年2月15日、警部以上の幹部人事を発表し、顔写真のデータを報道各社にメールで送付した。このうち1人の白いワイシャツの部分に白い文字で「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「異動顔写真データに「死ね」の文字 岐阜県警が報道各社に配信」NHK 2019年2月28日)。警務課によると、文字は課内で保存する元データにも残っていたという(「幹部の写真に「死ね」「呪」の文字 岐阜県警が報道提供」朝日新聞2019年2月28日)。
警察組織のパワハラ体質の深さを感じる。神奈川県警では拳銃自殺した巡査の遺族が「パワハラが自殺の原因」として損害賠償請求訴訟を提訴した(「<巡査自殺>「パワハラ原因」遺族が損賠提訴 横浜地裁」毎日新聞2018年3月13日)。埼玉県警機動隊「水難救助隊」の巡査が潜水「訓練」中に溺死した事件もパワハラで殺されたと批判されている(三宅勝久「「息子は警察に殺された」埼玉県警水難救助部隊の“殺人訓練”、息継ぎさせず繰り返し沈め溺死」MyNewsJapan 2015年8月7日)。
パワハラで最も始末が悪いパターンは加害の自覚がないものである。パワハラを批判されても「激励するため」「はっぱをかけるため」と正当化する。反省して態度を改めることができない。民間企業では整備されつつあるパワハラを告発する場がないから、このような形になるのだろう。第三者機関が必要である。
マンションだまし売り
マンションだまし売り被害を消費者契約法の不利益事実不告知で解決した裁判を描くノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者です。私は新築分譲マンションを購入したのですが、隣地建て替えによって日照・通風がなくなる部屋であることを隠して販売された、だまし売り物件でした。引渡し後に真相を知り、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻しました。
判決は以下のように消費者契約法違反(不利益事実の不告知)を認定しました。「被告は、本件売買契約の締結について勧誘をするに際し、原告に対し、本件マンションの完成後すぐに北側隣地に3階建て建物が建築され、その結果、本件建物の洋室の採光が奪われ、その窓からの眺望・通風等も失われるといった住環境が悪化するという原告に不利益となる事実ないし不利益を生じさせるおそれがある事実を故意に告げなかった」(東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。
この判決は不動産取引に関して消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)を適用し契約の取消しを認めたリーディングケースです(今西康人「マンション販売における不動産業者の告知義務」安永正昭、鎌田薫、山野目章夫編『不動産取引判例百選第3版』有斐閣、2008年、31頁)。
この判決は、内閣府消費者委員会で2015年4月10日に開催された第8回消費者契約法専門調査会の「参考資料1」で「事例1-7 消費者契約法検討会報告書 裁判例【109】」として紹介されました。そこでは以下のように紹介されています。
「原告がマンションの一室を購入するに当たり本件建物の眺望・採光・通風といった重要事項の良さを告げている一方、当該重要事項に関して本件マンション完成後すぐにその北側に隣接する所有地に三階建ての建物が建つ計画があることを知っていたのに被告の担当者が説明しなかったのは不利益事実を故意に告げなかったものであるとして、消費者契約法4条2項に基づく売買契約の取消に基づく売買代金の返還を建物明け渡しによる引換給付とともに請求し認容された事例」
以下でも紹介されました。
「マンションを購入するに当たり、建物の眺望・採光・通風の良さを告げている一方で、マンション完成後すぐに隣地に3階建て建物が建つ計画があることを知っていたにもかかわらず説明しなかったことは「不利益事実の不告知」に当たるとしたもの」(田中裕司「消費者契約法は不動産取引にどのような影響をもたらしているか――消費者契約法施行10年を振り返って――」RETIO No.80 (2011) 68頁)
「裁判例を見る限り、訴訟にまで至るのは、眺望に関する不実告知や不利益事実の不告知(福岡地判平成18年2月2日判例タイムズ1224号255頁、東京地判平成18年8月30日公刊物未登載)、ローン特約に関する不実告知(東京地判平成17年8月25日公刊物未登載)のように不動産売買契約に関する事案が多いものと思われる」(森大樹「不動産証券化取引(特に不動産賃貸取引)を巡る消費者政策・消費者法の概要と最新の動向(下)」不動産証券化ジャーナル2011年3-4月号89頁)
裁判中にマンション管理会社の問題も発覚しました。駐車場料金を一般会計に算入しておきながら、長期修繕計画では修繕積立金に算入していました。そこで管理組合理事長として、管理会社を独立系会社にリプレースしました。その結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、共用部の欠陥の発見などサービスレベルも向上しました。
これらの問題から消費者の権利や住民の権利が貧弱であることを痛感しました。多数の同種被害者が出るような問題は、それなりに弱者保護の運動体がありますが、個別性の強い問題は問題自体を理解してもらえにくいという問題を感じました。そのような個別性の強い問題に対応していきたいと思います。
私は『東急不動産だまし売り裁判』が社会性の出発点であり、最初に言っていた話から、なし崩し的に違う条件になり、余計な負担や不利益を負わされることが強く許せないという感覚を持っています。消費者の立場からマンションだまし売りやマンション投資の迷惑勧誘電話、貧困ビジネス、危険ドラッグのない世界を目指します。
マンションだまし売りやゼロゼロ物件業者などの貧困ビジネスを告発したことで、卑怯な誹謗中傷を受けました。しかし、圧力に屈せず、貧困ビジネス批判を続けました。告発した業者が別の会社名や代表者名、免許番号で営業するという卑怯な手段に出たこともあります。
動物愛護の問題では、マンションだまし売り問題から悪徳商法に問題意識を持っており、ペット引き取り屋という闇ビジネスが許せないという思いが出発点になります。動物を虐待し、飼い殺しにして金儲けすることは許せません。
教育問題では、いじめ問題に特に関心があります。上述の経緯より、裁判への関心もあるのですが、北本いじめ自殺裁判では同級生から「きもい」と悪口を言われ、下駄箱から靴を落とされ、「便器に顔をつけろ」と言われるなどの事実がありながら、「一方的、継続的ではなく、自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」と、いじめを否定する不当判決が出ています。市民感覚と異なる発想が支配していることに憤りを覚えます。
東急不動産だまし売り裁判MyNewsJapan報道
東急不動産だまし売り裁判がMyNewsJapanで報道された(佐藤裕一「東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口」MyNewsJapan 2009年9月3日)。同じ記事は「回答する記者団」にも掲載された(佐藤裕一「東急不動産のマンションは「買ってはいけない」」回答する記者団2009年9月4日)。
東急不動産だまし売り裁判は東急不動産(販売代理:東急リバブル)が不利益事実(隣地建て替え)を隠して新築マンションをだまし売りし、購入者が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、売買代金を取り戻した裁判である(東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号、アルス東陽町301号室事件)。
東急不動産だまし売り裁判は消費者契約法で不動産売買契約を取り消したリーディングケースとなった。記事は東急不動産だまし売り裁判原告・林田力への取材に基づくもので、判決や訴状、準備書面、陳述書なども掲載されている。
記事では東急不動産のマンション購入者への悪質な嫌がらせの数々を紹介する。東急不動産は購入者(原告)へのアフターサービス提供を拒否し、東急不動産代理人は公開法廷で争点とは無関係な購入者の年収を暴露した。マンション建設地を地上げし、東急不動産のために近隣対策を行った地上げブローカーは東急リバブル・東急不動産でなければ知り得ない個人情報を握り、嫌がらせを行った。「ワナに落ちた者をグループで襲う」との小見出しが説得力を持つ記事である。
悪徳不動産業者は、提訴した被害者への憎しみをかきたてない限り、活力が湧いてこない。その典型が東急不動産であった。嫌がらせを怖がってはならない。
「突けば壊れる。そう思われているうちは何度でも同じ目に遭うに違いない」(落合誓子『バッド・ドリーム 村長候補はイヌ!?色恋村選挙戦狂騒曲』自然食通信社、2009年、106頁)。それ故に原告は地上げブローカーが圧力をかけた時は内容証明郵便で東急不動産に抗議した。
だまし売り被害者が被害経験を語ることは一般に受け止められているほど容易なことではない。そこには様々な葛藤があり、「時間の流れ」では解決できない問題が数多く含まれている。記事で描かれた東急不動産弁護士や地上げブローカーの嫌がらせは怒りなしでは思い返せない内容である。
それらは個人的かつ個別的な世界の出来事でありながらも、物事の本質を見抜く当事者の優れた洞察力を通して、問題の解決に向けての様々なヒントを指し示してくれる。
「人間の存在の根幹にかかわる問題に向き合おうとするとき、当事者の「ことば」に耳を傾け、そこに潜む普遍的な要素を探る作業は、今後もその重要性を失うことはない」(医療について、長尾真理「「患者の権利」としての医療」哲学第122集、慶應義塾大学三田哲学会、2009年、93頁)。
記事「東急不動産で買ってはいけない」の反響は大きい。MyNewsJapanの2009年9月16日のアクセスランキング1位である。読者評価ランキングは4位である。2009年9月13日時点ではアクセスランキング及び読者評価ランキングとも2位になった。コメント欄には東急不動産(販売代理:東急リバブル)を非難するコメントが寄せられた。
「消費者重視の時代にこれはひどい話ですね」
「騙し売りの東急という新しいブランドが確立されましたね」
「消費者庁にはこういった深刻な問題に対して意欲的に取り組んでもらいたいですね」
「こういう情報がどんどん明らかになって、騙し売りをするような会社に消費者が足を向けなくなるようになることを祈ります」
東急の被害事例も報告された。第一に一戸建て注文住宅の施主は仕上がりの酷さに驚いたという。床はコンパネ一枚分盛り上がっていた。玄関の突き出た屋根の部分は地面と平行ではなく傾いていた。外壁では割れた箇所が30カ所くらいあった。あまりにも雑なために、知り合いの一級建築士に頼んで確認してもらったところ、手直しする箇所が300カ所以上あったと語る。
第二に東急リバブルの仲介で中古住宅を購入した消費者の被害も寄せられた。基礎部に大規模かつ広範囲の腐食が見つかったという。東急リバブルは名ばかりの工事で済ましたが、専門家調査で工法不良が判明したとする。東急リバブルは「言った」「言わない」の水掛け論で責任逃れを図ると批判する。
記事「東急不動産で買ってはいけない」はブログでも取り上げられた。そこでは「大手企業というブランドでマンションを買ってしまって失敗したという話」と紹介する。「大手企業だから安心して購入する」という安易な考えを戒めている(『個人ブログで辛口批評する!消費者側から見た生命保険/損害保険』「大手企業ということで、真っ向から信用してはいけない。」2012年9月20日)。
Coinhive刑事起訴に批判
Coinhive(コインハイブ)を不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で刑事起訴することが批判されている。CoinhiveはWebサイト閲覧者のパソコンの処理能力を用いて仮想通貨マイニングを行うプログラムである。
このCoinhiveをサイトに設置した男性は2018年2月に神奈川県警から家宅捜索を受け、3月末に不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で罰金10万円の略式命令を受けた。男性は不服として裁判を請求した。初公判は2019年1月9日に横浜地裁で開かれた。
弁護側は、コインハイブは反意図性・不正性を満たさないため不正指令電子的記録(コンピュータ・ウイルス)には当たらないとして無罪を主張する(NT「Coinhive(コインハイブ)事件で初公判、原告は「ウィルスではない」と無罪を主張」CRYPTO TIMES 2019年1月16日)。現実にWebサイトを開いた途端に勝手に動画広告を流すページは珍しくない。Coinhiveの摘発は多くの人々から疑問や不安の声が寄せられている。国民にとって最も重い制裁手段となる刑事罰の重みを考えていない。
検察側は「常識に照らして閲覧者の意図に反している」と主張する(「コインハイブ事件、男性に罰金10万円を求刑 弁護側は無罪主張」弁護士ドットコム2019年2月18日)。しかし、検察の「常識」が恣意的である。ポップアップ広告などJavaScriptによるPCのリソースを消費する広告はいくらでもある。結局のところ、警察や検察が違法と考えるから違法であるという理屈にしかならない。
男性は以下のように指摘する。「警察の人からは「事前に許可(もしくは予感させること)なく他人のPCを動作させたらアウト」というような説明を受けたのですが、解釈がめちゃくちゃアバウトで「不正な指令」についてまるで考慮されていないことがわかると思います。これだとアドセンスどころかアナリティクスやオプティマイズ、世の中のいろいろなJSがアウトですし、予感というのもリテラシーによって大いに幅があります」(「仮想通貨マイニング(Coinhive)で家宅捜索を受けた話」doocts 2019年1月7日)
略式命令を受けたということは、調書が作られたことになるが、恫喝的な取り調べがあったためである。家宅捜索を受けた男性の報告では乱暴な言葉ばかり使う刑事が登場する。何ら誤魔化すことなく自分達の言わんとすることを大声ではっきりと述べることのできる、ほとんど唯一の言葉だからだろう。これは人間の人間に対する非人間性の問題である。調書が警察官の作文であることは科学的見地から見て明白である。長時間の取り調べは意識レベルを低下させて尋問への抵抗力を奪う目的があり、任意性を評価できない。
弁護人の平野敬弁護士は以下のように指摘する。「言葉遣いの乱暴さも問題ですが、「裁判所が(捜索)令状を出しているんだから違法に決まっている」「被疑者は弁解せず反省しなければならない」という思考が警官の口から自然と出てくる点に恐ろしさを感じます。推定無罪の原則を真っ向から否定しているわけですから。「新婚さんなんだろ」という、反抗すれば家族に迷惑が掛かるぞと暗示するような言葉には背筋が凍る思いです。」(「「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」 コインハイブ事件、神奈川県警がすごむ取り調べ音声を入手」ねとらぼ2019年2月16日)
https://doocts.com/3403
千葉県警巡査と新潟県警巡査を速度違反で書類送検
千葉県警巡査と新潟県警巡査が速度違反で書類送検された。千葉県警の20代の男性巡査は一般道でスポーツカーを時速145キロで走らせたとして、道路交通法違反(速度超過)容疑で書類送検された。巡査は容疑を認めており、「歯医者の予約があり、早く寮に帰りたくてスピードを出した」などと供述しているという。
巡査は千葉中央署地域課の勤務。2019年1月10日午後、法定速度(時速60キロ)を大幅に上回る145キロで千葉市稲毛区の市道を走行した疑いがある。自動速度違反取り締まり装置(オービス)で検知され、県警から任意で調べを受けた。県警は14日付で巡査を減給100分の10(1カ月)の懲戒処分とし、書類送検した(「市道で時速145キロ容疑「歯医者の予約が」 巡査処分」朝日新聞2019年2月18日)。
一般道で時速145キロとは恐ろしい。歩行者や自転車が横断することもある。相手に気付いてからブレーキを踏んでも、すぐに停止できない。カーブの先に車が停車していたら、衝突する。歯医者の予約で法定速度を大幅に上回るスピード違反とは身勝手である。硬直的な官僚組織の影響だろうか。
新潟県警は2018年9月3日、高速道路を時速175キロで走行したとして、警察署の地域課に勤務する女性巡査(23)を書類送検し、戒告の懲戒処分にした。送検容疑は7月4日午前7時45分頃、県内の高速道路で公用車を運転中、法定速度を75キロ超える時速で走行した疑い。
県警によると、巡査は県警本部で行われる研修会に同課の職員2人と向かう予定だったが、巡査が寝過ごし遅刻しそうになり、急いで走行した。速度違反取り締まり装置が反応したため、研修会後、署幹部に報告した(「速度違反で女性巡査を書類送検=「寝過ごし遅刻」と175キロ―新潟県警」時事通信2018年9月3日)。
一般人ならば免許取り消しになりそうな事案である。取り締まりを行う側の警察官の処分としては甘すぎる。「善良な国民からすれば、取り締まる側に重大な違反を犯した自覚があるのか、はなはだ疑問だ」(「高速を175キロで暴走 新潟県警23歳女性警官の呆れた言い訳」日刊ゲンダイDIGITAL 2018/9/6)。
共に遅刻しないという理由で交通ルールを無視する。守らないといけないことの優先順位が分からない。国民にはルールを押し付けながら、自分達はルールを無視する。相互主義に反している。
三重県警では2018年12月10日に尾鷲市内の国道を自家用車で制限速度の時速50キロを上回る92キロで走行したとして、警察署に勤務する40代男性警部補が道交法違反(速度超過)容疑で摘発され、20日付で所属長訓戒処分を受けた(「同僚に銃口向ける 県警、10代巡査を本部長訓戒処分 三重」伊勢新聞2018年12月30日)。
警察不祥事は繰り返されている。「警察が組織維持のために、世間的には「ノー」が突きつけられるような行動もあえてとる場合がある」(森清勇「増え続ける警察官と不祥事にみる日本の問題」JBpress 2018年9月4日)。特別公務員暴行陵虐罪があるように、警察車両による交通違反は一般車両の交通違反よりも重罰にすべきではないか。
大津いじめ自殺裁判と北本いじめ自殺裁判
大津いじめ自殺裁判で大津地裁は2019年2月19日、同級生2人に約3758万円の支払いを命じる判決を言い渡した。「19日の大津地裁判決は、元同級生2人の加害行為が、生徒の自殺に結びついたと明確に因果関係を認めた。過去の同種訴訟では「いじめの被害者が必ずしも自殺するとは限らない」との判断から、自殺は「特別な事情」とされるケースが多く、今回は踏み込んだ司法判断といえる。」(「自殺「いじめが原因」 大津地裁判決、他の訴訟にも影響」毎日新聞2019年2月19日)
大津市いじめ自殺事件は大きな社会問題になった。大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が2011年10月に自殺した。暴力、脅迫、恐喝が横行する恐るべき無法地帯であった。全国紙などの報道によれば、大津市教育委員会や中学校は、いじめの兆候を把握していながら、適切な措置を取らなかった。
大津いじめ自殺裁判の判決に比べると、北本いじめ自殺裁判の判決の後進性が浮かび上がる。埼玉県北本市立北本中学校いじめ自殺裁判の東京地方裁判所民事第31部判決(舘内比佐志裁判長、杉本宏之裁判官、後藤隆大裁判官)は、同級生から「きもい」と悪口を言われ、下駄箱から靴を落とされ、「便器に顔をつけろ」と言われるなどの事実がありながら、「一方的、継続的ではなく、自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」として自殺生徒遺族の訴えを退けた。
北本中学校1年生の自殺は学校でのいじめが原因であることは社会常識から明らかである。いじめと自殺の間には強い関係がある。The girl was apparently driven by an impulse to commit suicide as a result of bullying at school. There is a strong link between bullying and suicide.
地域課題を解決する会SDGsサミット2018登壇
「地域課題を解決する×SDGsサミット2018~SDGsを紐解いて地域課題の解決方法を考える~」が2018年12月22日に東京都北区の北とぴあ・さくらホールで開催されました。SDGsサミット2018実行委員会と地域課題を解決する会の主催です。
私は「自殺ゼロ、いじめゼロ×SDGs ネットとリアルに明日の約束ができる場を」と題して話しました。「災害関連死でも自殺は深刻な問題」「学校の授業は子どもの選択肢を増やすべき」などの意見が寄せられました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
登壇者には自治体や民間企業ら、それぞれの立場を代表する識者が集結し、SDGsの最新の取り組みが説明されました。地域課題をどうすべきなのか、そして私達が未来に向けて根本的に取り込むべきことは何か、本音ベースで論じられました。参加者は熱心に耳を傾けていました。日本海賊TVが動画を撮影しました。
清木信宏「SDGs推進に向けた神奈川県の取組」はマイクロプラスチック問題への対応などが説明されました。企業等と連携した、プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止や回収などを進めています。神奈川県は「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の両方に都道府県では唯一選定されています。
今回の登壇者の中で最も巨大組織の神奈川県ですが、その姿勢は個人レベルでも参考になります。一般論・総論・抽象論では分からない、動けない、広がらないとなってしまいます。そのために各論・具体論からスタートします。SDGsのゴールから、具体的なテーマとアクションで見える化します。20世紀的な大きなイデオロギーや哲学よりも、個々の地域課題の解決に取り組むという地域課題を解決する会と重なります。
神部匡毅「SDGsによる持続可能なまちづくり」は研究学園都市に相応しく、最新技術を用いた取り組みを紹介しました。自動運転移動支援ロボットや遠隔医療相談システムなど20世紀の頃にSFで空想されたような技術の実用化を進めています。
さいたま市桜区は国立大学の埼玉大学があり、外国人留学生の住民も多く、強みも課題も、つくば市のミニチュア的な要素があると感じました。自動運転移動支援ロボットや遠隔医療相談システムは最新技術を使うだけでなく、よりパーソナルなサービスという特徴があります。皆が駅や病院に行列するという20世紀的な仕組みからの転換が期待できます。
山本和真「「もったいない」が世界を救う!」は食品ロスを削減するフードシェアリングプラットフォーム「tabeloop」を紹介しました。さいたま市の農園(さいたま榎本農園)を紹介されており、身近に感じました。
プレゼンでは「もったいない」がキーワードになっています。「もったいない」と言えば「もったいないお化け」を連想しますが、今や「もったいないお化け」を知らない世代が登場していると教えられました。私はビックリマン天使と悪魔シールやキン肉マン消しゴム、SDガンダム・ガチャポン戦士、カードダスなど集めることが流行った世代であり、「捨てることはとんでもない」という感覚は強く持っています。飽食の時代を謳歌したい感覚は皆無です。
食品ロスは膨大な量になります。しかし、廃棄される食材に需要がない訳ではなく、20世紀的な大量生産大量消費の工業社会の枠に適合しないだけです。食品ロスの問題はSDGs以前から指摘されており、事業者が経済合理性のために廃棄していることから、どうしても取り組む側が資本主義批判のスタンスになりがちでした。その結果、抽象的な議論の隘路に陥り、神奈川県プレゼンで出たように「分からない、動けない、広がらない」となります。個別的な需要と供給をマッチさせる取引市場を作ることで解決しようとする「tabeloop」は意義ある試みです。
鎌田健司「子どもの未来応援プロジェクト」はペットボトルキャップを集めて再利用する取り組みなどを紹介しました。ペットボトルキャップを集めて、収益金でワクチンを贈る取り組みは2003年から始まっており、SDGsの先駆けです。
また、さいたま市のDICプラスチック株式会社は防災用キャップにエコキャップ材を利用しています。これによって本業のコストダウンと社会貢献を実現しています。ここでも、さいたま市の事業者が言及されました。SDGs未来都市には埼玉県の自治体は一つも入っていません。SDGsに向かない訳ではなく、SDGs意識は民高官低と言えそうです。
私はビックリマン天使と悪魔シールやキン肉マン消しゴム、SDガンダム・ガチャポン戦士、カードダスなど集めることが流行った世代です。小学生の頃に酒蓋を集めたことがあります。ペットボトルキャップ集めは取り組みやすい活動です。
吉岡けいた「北区の地域包括ケア」は専門職・地域団体と連携した東京都北区版の新しい地域包括ケアの取り組みを紹介しました。地域包括ケアと言えば福祉分野の話と受け止められがちですが、ビジネスマッチングやカスタマーサービスなど民間ビジネスの手法や発想を取り入れたことが特徴です。
この「北区の地域包括ケア」は地域課題を解決する会が第2回ジャパンSDGsアワードにエントリーした事例です。サミット前日の21日に第2回ジャパンSDGsアワードの結果が発表されました。地域課題を解決する会のエントリーは入賞しませんでしたが、「日本国内で広がるSDGs推進のグッドプラクティス(優良事例)として、各種フォーラムや国際会議等の機会を捉えて、日本政府としても積極的に発信していきたい」とのメッセージをいただきました。
本間玲子、竹本紳一郎「で、SDGsって美味しいの?」ではカードゲーム「2030SDGs」の動画を上映しました。SDGsのポイントを体感できるゲームの紹介です。カードゲームのファシリーテーターとしての経験談が話されました。カードゲームは企業の研修でも使われています。職種による反応の相違は民間企業の感覚として良く分かります。
『イノセンス 冤罪弁護士』第6話
『イノセンス 冤罪弁護士』第6話(2019年2月23日)は銃殺事件の弁護と子どもの誘拐事件が並行して進む。冤罪事件の解決というよりもエンタメ要素が強い。シリアス話も刑事ドラマ的な内容である。第1話の冒頭にあった誰でも人質司法の被害者になるという啓発色がなくなった。一般視聴者迎合の視聴率テコ入れだろうか。
それでも日本の刑事司法の問題の描写はある。検察官が弁護人に対し、情状酌量が無難と弁護方針を押し付けようとしている。これは越権であるが、この種の不透明なやり取りが存在することを示している。但し、多くの視聴者にとっては東京地方検察庁には指宿林太郎(小市慢太郎)検事しか存在しないのかという点が気になるところである。
穂香(趣里)の息子の晴斗は和倉楓弁護士(川口春奈)にプロポーズする。『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけのような四歳児である。黒川拓弁護士(坂口健太郎)はコミュ症気味のイメージがあったが、子どもにはコミュニケーション能力が高い。ベースにも造詣がある。
樽前裕也(須賀健太)は人間の屑である。須賀健太は『今日から俺は!!』ではヤンキー高校生であった。それが大人になったような存在である。冤罪被害者があらゆる意味で聖人君子ではなく、そうであっても冤罪は許されないというドラマの描き方は正当である。しかし、今回は、あまりにあからさまに屑過ぎて現実味が乏しい。実際の人間の屑は、もっと卑怯で狡猾なところがある。被害者と加害者を逆転させるような狡さを持っている。
また、親の財力で揉み消しをしながら、息子の悪事と人間性を露見させて終わっている。親の事業も悪徳商法であり、それも明らかになるという展開の方がドラマチックではないだろうか。別府所長は裕也の悪事が冤罪ではないとの理由で弁護活動を断るが、それは弁護士の存在意義として問題がある。
次回予告には「青梅のカサノバ」が出ていた。紀州のドンファンが下敷きか。黒川真(草刈正雄)は「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と批判する。『99.9 刑事専門弁護士』では真実を知ることが冤罪を明らかにすることであった。『99.9 刑事専門弁護士』よりも深い問題を突くのか注目される。
学童保育と桜区との懇談会
学童保育と桜区との懇談会に参加しました。さいたま市学童保育連絡協議会が2019年2月7日、さいたま市南区松本の田島げんきっ子学童保育で開催したものです。桜区の学童「さくらっ子第一」「さくらっ子第二」「たんぽぽ」「げんきっ子」の保護者や支援員の方々が桜区役所支援課に要望などを伝えました。
共通する要望として支援員の待遇改善が切実と感じました。働く人々が生活の不安を抱えている状態では安定的な事業は営めません。
それと根元では共通する問題になりますが、児童数が運営に反映するために経営が不安定になる点を何とかして欲しいとの要望がありました。これはビジネスの世界では自然な現象ではありますが、学童保育は需要があるからと言って簡単に新規参入できるものではありません。現実に待機児童問題が起きており、需要を満足できていません。社会的に不可欠なインフラであり、ユニバーサルサービスであるとして制度設計が必要と感じました。
学童の場所の獲得にも苦労されているとの話がありました。一方で空き家の増加が社会問題になっています。空き家の活用施策の一環として取り組めないかと感じました。
要望の各々に対して桜区支援課からは担当する所管部署が提示されました。所管部署に要望することが直接的との話でしたが、市民の側としては各部署を回ることは大変です。また、各々の要望は学童保育の現場から生まれたものというところに特徴があり、「暗い道に街頭をつけて欲しい」などの個々の要望に切り離して担当部署が検討することが良いかという思いもあります。本来ならば各担当部署の回答を取りまとめて市民に提示する部署が欲しいところです。役所の各部署には各部署の仕事があり、それが難しいならば市議会議員が役割を果たさなければいけないと感じました。
要望ではないのですが、パーティーなど学童保育の様子の写真が回覧され、動画が上映されました。子ども達が楽しそうです。これを見ると学童保育が子ども達の成長に有意義なものであると理解できます。近隣住民の理解が得られず、学童保育所を開設できなかったという話もあり、もっと学童保育の意義を広める必要があります。市の広報などに期待したいですが、市にお任せというだけでなく、そこも市議会議員の役割があるでしょう。
新宿署痴漢冤罪裁判記事にコメント掲載
ジャーナリスト・上田眞実さんの新宿署痴漢冤罪裁判の東京地方裁判所判決についての記事で林田力のコメントが掲載された(上田眞実「新宿署、痴漢冤罪めぐる証拠隠蔽・改竄工作が発覚…違法捜査受けた男性は直後に死亡」ビジネスジャーナル2016年3月30日)。新宿署痴漢冤罪裁判は新宿署痴漢冤罪憤死事件に対する国家賠償請求訴訟である。
原田信助さん(当時25歳)は2009年にJR新宿駅で通りすがりの大学生らに痴漢の容疑をかけられ、激しい暴行を受けた後、警察からの違法な取調べなどが原因で自らの命を絶った。110番した原田さん(当時25歳)は、暴行の被害者として聴取されるかと思ったら痴漢の被疑者として取り調べられた。疑いが晴れて釈放されたが、疑いが晴れたことを警察が本人に告げず、彼はその日のうちに自殺してしまった。原田さんの母親が国家賠償請求訴訟を起こした。
しかし、東京地方裁判所判決は原告の請求を棄却した。記事では多くの方のコメントが掲載されている。林田力のコメントは以下である。
「この裁判で警察の決めつけ捜査が浮き彫りになりました。そして、それをごまかそう、なかったことにしようという工作が明らかになった。裁判所は行政に寄り添って国民の声に耳を傾けない。消費者が企業を訴える場合も同じ構図です。弱者の声に耳を傾けない裁判官が法律を扱うから、血の通わない判決になるのです」
判決が市民感覚とずれていると批判されることがある。そこには事実認定の問題があると考える。裁判では何が事実であるか当事者の言い分が食い違うことが通常である。裁判員裁判でなければ事実認定は裁判官が行う。双方の主張、証拠から裁判官がもっともらしそうなものを判断することになるが、行政や企業の主張を優先する傾向が散見される。専門家の言に重きを置く傾向である。市民感覚で両当事者の主張を判断した結果と異なる認定がなされてしまう。人間よりも組織を大事にしてしまう。