危険ドラッグなど薬物乱用禁止

危険ドラッグなど依存性薬物の恐ろしさは人格を崩壊させることである。依存性薬物の使用自体が個人の尊厳の破壊になる。依存性薬物の使用は集中力の欠如や情緒不安定をもたらす。幻覚、幻聴、妄想などの症状が起こる。無気力状態に陥る。知的機能が低下してものを考えられなくなる。複雑な会話ができなくなる。書く文章が平仮名ばかりになる。簡単な計算を間違えてしまう。

大麻は「「身体への悪影響がない」「依存性がない」などの誤った情報が流布されていて、心理的にハードルが低いせいか、さまざまな違法薬物使用の“入り口”となる「ゲートウェイ・ドラッグ」とも呼ばれるが、実際は危険性が高い。乱用すれば幻覚作用で集中力がなくなったり、情緒が不安定になったりする。何もやる気がしない状態(無動機症候群)が引き起こされ、社会生活に適応できなくなることもあるという」(「覚醒剤、大麻、MDMA…違法薬物、それぞれの恐ろしさを確認する」産経新聞2020年2月11日)

「大麻の長期使用者では、学業成績が低い者が多く計算能力や言語の表現能力に問題がみられる。またその他の薬物の乱用者が多く、仕事の能力が低く失業者が多い」(徳村光昭「大麻の健康障害に関するエビデンス」慶應保健研究第27巻第1号4頁)

近畿大薬学部の川畑篤史教授(病態薬理学)は「脳に作用するメカニズムは覚醒剤とほぼ同じ。過剰摂取で幻覚や幻聴の症状も出るし、大麻は恐ろしい薬物だと認識してほしい」と指摘する(「幻覚・幻聴…覚醒剤と危険性同じ 「大麻は恐ろしい薬物だと認識してほしい」専門家警鐘」産経新聞2016年3月16日)。

米オハイオ州の死亡証明書データと紐付けたメディケイド保険請求データを利用した研究では大麻使用障害は非致命的自傷と全死因死亡との有意な関連が認められた。全死因死亡には偶発的過量服用による死亡や殺人による死亡が含まれる(Fontanella CA, et al. Association of Cannabis Use With Self-harm and Mortality Risk Among Youths With Mood Disorders. JAMA Pediatr. 2021 Jan 19.)。

大麻の煙には高濃度の発がん性物質が含まれており、大麻使用者は呼吸器疾患のリスクが上がる。また、大麻の慢性使用は他の精神疾患の発症や悪化の要因になる可能性がある。

薬物乱用による自傷行為や犯罪、事故が後を絶たない。危険ドラッグ使用者の暴走運転は大きな社会問題になった。薬物乱用は痛みや恐怖を感じさせなくなるため、自傷行為も他人を傷つけることも行いやすくなる。依存性薬物は暴力団や半グレなど反社会的勢力の資金源になる。依存性薬物を利用した犯罪も行われる。

特定の依存性薬物は依存性などの害が少ないから問題ないとの主張は欺瞞である。強姦は駄目であるが、強制わいせつは良いとの主張と変わらない。普通は覚醒剤も麻薬も危険ドラッグもダメ、ゼッタイとなる。依存性薬物の隠れ売人は依存性薬物の宣伝あからさまにして恥もひったくれもないのか。依存性薬物を害が少ないとするデマから、正気を取り戻せたら良いのに。

それは危険ドラッグ売人と同じ手口である。危険ドラッグという言葉は後からできたものである。売人は合法ドラッグ、合法ハーブ、脱法ドラッグ、脱法ハーブと称して販売し、問題を少ないように見せかけていた。危険ドラッグ売人は法規制された依存性薬物とは化学式が異なるということで依存性薬物を脱法ドラッグ、脱法ハーブと称して販売していた。

お金もない、仕事もない状況だから他人を害して強盗殺人をしても良いということにならないことと同じく、お金もない、仕事もない状況だから依存性薬物の売人になって他人を害しても良いとはならない。

薬物依存や薬物中毒は麻薬や覚せい剤、危険ドラッグに限らない。砂糖や塩にも依存性があるとの見解がある。それらの問題意識も私は否定しない。しかし、大麻や危険ドラッグを相対化するためにタバコやアルコールを持ち出す議論には与しない。

大麻合法論者が持ち出したがる酒やタバコは禁止されていないものの、受動喫煙やアルハラが社会問題になり、抑制していく傾向にある。コロナ禍の飲み会抑制も後押ししている。アルコールが危ないと主張したいならばアルコールの規制や不買をすれば良い話である。依存性薬物を容認する話にはならない。酒やタバコの害を唱える立場が大麻容認になる論理は理解に苦しむ。

依存性薬物の問題として、関西学院大の佐藤哲彦教授は「薬物を所持・使用した人が社会から孤立し、キャリアを失うなどの損害を被ること」と指摘する(「覚醒剤、大麻、MDMA…違法薬物、それぞれの恐ろしさを確認する」産経新聞2020年2月11日)。これは事実である。恐らく依存性薬物容認者は、依存性薬物を所持・使用しても孤立させず、キャリアを失わせない社会にすべきと言いたいのだろうが、話の出発点が噛み合っていない。依存性薬物を所持・使用しても孤立させないというのは周囲に依存性薬物を容認させるということである。依存性薬物を嫌悪する人の感覚を無視している。



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