高知県香南市官製談合で課長の起訴取り消し

高知県香南(こうなん)市発注工事を巡る官製談合事件で、高知地検は2021年12月3日、入札価格情報を漏らしたとして官製談合防止法違反などの罪で起訴していた市住宅管財課の男性課長(58)の起訴を取り消した。On December 3, 2021, the Kochi District Public Prosecutor’s Office cancelled the indictment of a male section chief of the city’s Housing Management Division (58), who had been charged with violating the Law for the Prevention of Bid Rigging for leaking bid price information in a bid rigging case involving construction work ordered by the city of Konan, Kochi Prefecture.

課長は11月16日に記者会見を開いて捜査を批判した。「初めから否認しているのに(事件の)ストーリーができあがっていたのではないか」(小宅洋介「高知・香南市の官製談合 元市議らの訴因変更 課長の起訴取り消しで」毎日新聞2021年12月3日)。

「私が自白すれば終わる形だった。決め打ちだった」(北島美穂「地検・県警、崩れたシナリオ…起訴取り消しの市課長「私の自白で終わる形だった」読売新聞2021年12月4日)

弁護人の市川耕士弁護士は「無実の課長への違法捜査が明らかになった。検察には起訴取り消しの経緯や理由を説明する責任がある」とコメントした(「市課長の妻「人として全てを否定されたようだ」…起訴取り消し」読売新聞2021年12月4日)。

課長は2020年12月に実施された市営団地解体工事の入札に絡み、志磨村(しまむら)公夫元市議に最低制限価格に近い価格を漏らしたなどとして、2021年9月1日、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の両容疑で高知県警に逮捕された。課長は容疑を一貫して否認。弁護人の準抗告でいったん釈放されたが、同じ容疑で地検に再逮捕され、9月22日に起訴された。

「課長から価格を教わった」と話していた志磨村元市議が供述を変えたといい、公判を維持できないと判断したとみられる。地検は11月12日、課長の勾留取り消しを地裁に請求し、即日釈放された。釈放まで約2か月を要している(「地検が市課長の起訴取り消し…官製談合で元市議の供述に疑義、立証困難と判断か」読売新聞2021年12月3日)。あまりに理不尽である。理不尽であると呪ったとしても無理はない。どのような物語も冤罪被害者の前では色褪せてしまう。

地検の上田敏晴次席検事も県警の野村良捜査2課長も現時点では謝罪していないとする(「市課長の起訴取り消し 高知地検、官製談合の罪」日本経済新聞2021年12月3日)。保身第一の公務員組織には以下が欠けている。「悪かったと気が付いたから、悪かったと謝罪する。相手が誰であろうとな。当たり前のことだろう」(あさのあつこ『スーサ』徳間文庫、2014年、254頁)

捜査機関はいつも「捜査に問題はなかった」とコメントするが、捜査に問題がなければこのようなことにはならない。「どうしてこうなったか」を考えなければならない。捜査のミスと正面から向き合う姿勢を持とうとしないから、何度も繰り返される。

「なるほど」

私はうなずいた。

「確かにそれはありますね」

「そうなんですか?」

「説明責任を果たさない保身第一の体質は不便で仕方がないですからね」

「わかりますよ」

そう言って大きく笑った。

「本当にその通りですよ」

続警察不祥事

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