Coinhive刑事起訴に批判

Coinhive(コインハイブ)を不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で刑事起訴することが批判されている。CoinhiveはWebサイト閲覧者のパソコンの処理能力を用いて仮想通貨マイニングを行うプログラムである。

このCoinhiveをサイトに設置した男性は2018年2月に神奈川県警から家宅捜索を受け、3月末に不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で罰金10万円の略式命令を受けた。男性は不服として裁判を請求した。初公判は2019年1月9日に横浜地裁で開かれた。

弁護側は、コインハイブは反意図性・不正性を満たさないため不正指令電子的記録(コンピュータ・ウイルス)には当たらないとして無罪を主張する(NT「Coinhive(コインハイブ)事件で初公判、原告は「ウィルスではない」と無罪を主張」CRYPTO TIMES 2019年1月16日)。現実にWebサイトを開いた途端に勝手に動画広告を流すページは珍しくない。Coinhiveの摘発は多くの人々から疑問や不安の声が寄せられている。国民にとって最も重い制裁手段となる刑事罰の重みを考えていない。

検察側は「常識に照らして閲覧者の意図に反している」と主張する(「コインハイブ事件、男性に罰金10万円を求刑 弁護側は無罪主張」弁護士ドットコム2019年2月18日)。しかし、検察の「常識」が恣意的である。ポップアップ広告などJavaScriptによるPCのリソースを消費する広告はいくらでもある。結局のところ、警察や検察が違法と考えるから違法であるという理屈にしかならない。

男性は以下のように指摘する。「警察の人からは「事前に許可(もしくは予感させること)なく他人のPCを動作させたらアウト」というような説明を受けたのですが、解釈がめちゃくちゃアバウトで「不正な指令」についてまるで考慮されていないことがわかると思います。これだとアドセンスどころかアナリティクスやオプティマイズ、世の中のいろいろなJSがアウトですし、予感というのもリテラシーによって大いに幅があります」(「仮想通貨マイニング(Coinhive)で家宅捜索を受けた話」doocts 2019年1月7日)

略式命令を受けたということは、調書が作られたことになるが、恫喝的な取り調べがあったためである。家宅捜索を受けた男性の報告では乱暴な言葉ばかり使う刑事が登場する。何ら誤魔化すことなく自分達の言わんとすることを大声ではっきりと述べることのできる、ほとんど唯一の言葉だからだろう。これは人間の人間に対する非人間性の問題である。調書が警察官の作文であることは科学的見地から見て明白である。長時間の取り調べは意識レベルを低下させて尋問への抵抗力を奪う目的があり、任意性を評価できない。

弁護人の平野敬弁護士は以下のように指摘する。「言葉遣いの乱暴さも問題ですが、「裁判所が(捜索)令状を出しているんだから違法に決まっている」「被疑者は弁解せず反省しなければならない」という思考が警官の口から自然と出てくる点に恐ろしさを感じます。推定無罪の原則を真っ向から否定しているわけですから。「新婚さんなんだろ」という、反抗すれば家族に迷惑が掛かるぞと暗示するような言葉には背筋が凍る思いです。」(「「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」 コインハイブ事件、神奈川県警がすごむ取り調べ音声を入手」ねとらぼ2019年2月16日)
https://doocts.com/3403



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