大和ハウス工業の温泉詐欺

大和ハウス工業株式会社は運営する温浴施設で、温泉水ではないのに温泉と表示していた。これは不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第5条(優良誤認表示)に違反する。問題の温浴施設は「岩塩りんくうの湯」(大阪府泉佐野市)と「岩塩温泉和らかの湯」(兵庫県尼崎市)である。


大和ハウス工業は「岩塩温泉」と称し、特定の浴槽に「ブラック岩塩」と「ピンク岩塩」を使用しているとし、「岩塩温泉」では効能として、「切り傷、火傷、慢性皮膚炎、慢性婦人病・糖尿病・高血圧・関節痛・打ち身、動脈硬化神経痛、慢性消化器炎、胃弱、冷え性など」と表示していた。

ところが、実際に使用されていたのはソーダ灰(炭酸ナトリウム)などで、効能を表示できる医薬品や医薬部外品ではなく、工業用水を温めて入浴剤を入れたり、井戸水を使用したりしていた(「「温泉は虚偽」大和ハウスほか1社に景表法違反で措置命令」Net IB News 2019年8月30日)。

大阪府は2019年8月27日、再発防止などを命じる措置命令を出した(大阪府「不当な表示を行っていた事業者2者に対する措置命令について」2019年8月27日)。消費者庁も優良誤認表示にあたるとして、一般消費者の誤認を排除するための措置や再発防止などを求める措置命令を出した。

大和ハウス工業の表示は温泉詐欺と言っていい行為である。消費者に対して、実際のものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある。温泉か温泉ではないかは消費者にとって重要な問題である。東京都江戸川区船堀の「まねきの湯」は東京健康ランドと称していたが、事業者が変わった後で温泉を掘り、それによって天然温泉を称している。大和ハウスの行為は市場を破壊するものである。真面目な事業者の経営努力や投資をあざ笑うものである。

「これはかなり悪質な詐欺行為だ。工業用水によって「利用客が体調を崩した」というような直接的な被害は今のところないが、「温泉の効能」を信じていた利用客は多くいたはずだ」(「大和ハウス工業 またもや不祥事発覚」住生活新聞2019年11月4日)

「効能を期待して通っていた利用者の気持ちはどうなるのか?これは、一般消費者を狙った詐欺と言われても仕方ない」(「大和ハウス工業、1年で5回目の不祥事発覚」住生活新聞2020年4月6日)

大和ハウス工業は不祥事が続出している。大和ハウス工業は2019年4月12日、同社が建設した賃貸アパートや戸建て住宅の約2000棟が建築基準に適合していなかったと発表した。再調査によって、国から認定されていない基礎を使った不適切住宅が、新たに約1900棟も見つかった。

「人口減少という抗えない時代の変化に対して、「根性」と「頑張り」で立ち向かおうとする、時代錯誤の経営哲学が背景にあるのではないだろうか」(窪田順生「レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ」Diamond Online 2019年6月20日)

大和ハウス工業では実務経験を充足していない社員が施工管理技士の技術検定試験を受験し、合格していた。大和ハウス工業の施工管理技士資格保有者4143人中349人が受験資格を満たしていないにもかかわらず合格していた。住宅の工事現場で働いた例はないという(伊藤大輔「大和ハウス、急拡大でチェック後手 工事監督の資格問題」日本経済新聞2019年12月18日)。退職者2224人のうち、実務経験を充足していない可能性がある社員が35人いた。

受験者の上司や各事業所の管理部門のチェックが不十分なまま、「実務経験証明書」に社印を押印したこともあったという。社員の経歴や実務経験に関する情報を一元的に管理するシステムが整備されていなかったので、実務経験証明書の内容を確認したり照合したりする手段がなかったという(昆清徳「内部通報が暴いた大和ハウス工業の重大な不備 施工管理技士の試験でずさんすぎる管理体制が明らかに」ITmedia 2019年12月19日)。

大和ハウス工業が残業代不払いや時間外労働で是正勧告
https://note.com/hayariki/n/ne88a1a063758



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