滋賀県警歯形取り違え誤認逮捕国賠訴訟
滋賀県警が証拠を取り違え、誤認逮捕された女性が「違法な取り調べで精神的苦痛を受けた」などとして、損害賠償を求める国賠訴訟を2021年4月26日付で起こした。女性は、逮捕時の取り調べで当初否認したが、警察官から怒鳴られ、虚偽の自白書の作成を強要されたと主張。甚大な精神的苦痛を受けたとして、国家賠償法に基づき、滋賀県と国に約300万円の損害賠償を求める。鑑定を精査していれば逮捕や起訴はなく、警察や検察は当然の捜査を著しく怠ったと訴える。
警察は以下のような発言をしたとする。
「このままの状態では絶対に子どもを返せない」(「誤認逮捕で国賠提訴 歯型取り違え―大津地裁」時事通信2021年6月17日)
「自白すれば子どもは返ってくる」(「滋賀県警が証拠の歯型取り違え誤認逮捕 女性が損害賠償求め提訴 国と県は争う姿勢」読売テレビ2021年6月24日、「乳児かみつきで誤認逮捕の母 歯型取り違え「自白強要された」 損賠訴訟始まる」京都新聞2021年6月24日)
「歯型を提出して何もバレないと思ったのか」(「誤認逮捕で損害賠償請求 国と県は争う姿勢/滋賀」BBCびわ湖放送2021年6月24日)
「お前はクロや」(「「違法な取調べで精神的苦痛」滋賀県警に誤認逮捕された女性が提訴」関西テレビ2021年6月25日)
大津地裁(堀部亮一裁判長)で2021年6月24日に第1回口頭弁論が開かれた。県と国はいずれも争う姿勢を見せた。
滋賀県警は別人の歯形を証拠として母親を誤認逮捕した。滋賀県警は2019年10月17日に乳児の腕にかみつき、全治1週間のけがを負わせたとして母親を逮捕した。母親は逮捕から起訴後の保釈まで23日間勾留された。
県警の鑑定官が母親ら複数の関係者から歯形を採取し複製を作ったが、その際に別人の複製に母親の名前を記入した。その複製と傷痕を照合して「おおむね一致」との結果を得た。母親が犯人との決めつけが、そのような結果になったのではないか。
この事件は児童相談所の通報が出発点である。警察は公務員の身内感覚から役所からの通報を鵜呑みにして、思考停止しているのではないか。
母親は逮捕時に容疑を認めたが、公判で起訴内容を否認した。女性は「取り調べでウソの自白を強要された」と主張している(「証拠を取り違え…女性を”誤認逮捕”した「滋賀県警」、トップの本部長が公の場で「初めて謝罪」」関西テレビ2020年10月2日)。逮捕前の任意の調べで県警の男性刑事から「夫や両親を呼び出す」などと脅されたとする(「滋賀県警が別人の歯型を証拠に誤認逮捕 自白強要か、起訴取り下げ」中日新聞2020年9月18日)。
大津地裁では2020年1月に鑑定官への証人尋問が行われた。弁護人の植平朋行弁護士が母親の歯型と傷痕の歯の本数が一致しない点などを指摘したところ、鑑定官が「入れ違いの可能性がある」と証言し、公判が中断した。
大津地検は9月18日、地裁に起訴を取り消す申し立てをしたと発表した。地検は「警察から送られた重要な証拠内容の誤りに気づかなかった。女性は事件の実行行為者ではないと判断した」とする。地裁は同日、公訴(起訴)棄却を決定した(「乳児のかまれた跡は別人の歯形、滋賀県警が証拠取り違え母親を誤認逮捕 公訴棄却決定、県警と地検が謝罪」京都新聞2020年9月18日)。
この事件の報道後の9月20日の『笑点』大喜利では奇しくも誤認逮捕のネタが披露された。「警察官が4人以上逮捕することを止めました。誤認逮捕がなくなりました」
滋賀県警の滝沢依子本部長は10月2日、県議会土木交通・警察・企業常任委員会で「鑑定の過程で、歯型を別人のものと取り違えたことなどにより、母親の女性を本件の被疑者として逮捕してしまい、大変申し訳なく思っており、警察本部長として心よりおわび申し上げる」と謝罪した(「議会で謝罪「母親に大変申し訳なく、心よりおわび」」京都新聞2020年10月2日)。県議からは同県東近江市の湖東記念病院の患者死亡事件で3月に再審無罪判決が出たばかりだと指摘された(「滋賀県警本部長が起訴取り消しを謝罪 傷害事件で別人の歯型を証拠採用」毎日新聞2020年10月2日)。
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