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林田 力 『東急不動産だまし売り裁判』著者

中野相続裁判さいたま地裁

中野相続裁判は平成19年9月8日に亡くなった母親(東京都中野区)の生前贈与や遺贈が無効であるとして長女が長男と配偶者を訴えた訴訟です(平成20年(ワ)第23964号 土地共有持分確認等請求事件)。中野相続裁判は母が亡くなった一年後に始まりました。この裁判によって長男が入院中の母親の経鼻経管栄養の流入速度を勝手に速めたことや治療を拒否したことが明らかになり、林田医療裁判につながりました。
中野相続裁判さいたま地裁事件は、長男夫婦が逆に長女に対して平成30年1月30日付で母の遺産(共有物)の分割を求めて提訴したものです。長女は長男夫婦に相続人や受遺者を主張する資格があるか訴えます。
長男は「時間がかかりすぎる。リハビリに行くのがおそくなる」との理由から入院中の母親の経鼻経管栄養を速めました。これは健康を害し得る行為です。林田医療裁判の東京地裁平成28年11月17日判決は長男の行為が違法と断じました(平成26年(ワ)第25447号 損害賠償請求事件、17頁)。
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経管栄養は医療行為であり、嘔気、嘔吐、腹部膨満や腹痛などの副作用や誤嚥性肺炎の危険もあるため、医師の指示に基づいて行う必要があり、病院では看護師が行うこととされており、患者の家族が行うのは自宅での例外的な場合に限られているのであるから、患者の家族であっても、医師の指示に基づかずに患者の経鼻経管栄養の注入速度を変更することは違法であるといわざるを得ない。
したがって、被告長男が8月15日に医師の許可なく母親の経鼻経管栄養の注入速度を変更することは違法であるといわざるを得ない。
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長男の代理人弁護士は「長男が母親の点滴を早めたなどの主張をしておりますが、それは点滴ではなく流動食であり、何ら問題ないものです」と開き直りました。しかし、経管栄養は医療行為であり、ミスをすれば患者を死に至らしめる危険のあるものです。医者が定めた流入速度を「時間がかかりすぎる」という理由で勝手に速めて良いものではありません。流入速度を勝手に速めることを問題ないとする長男の代理人の主張は、中世を通じて科学を押さえ込んでいた風潮に非常によく似ています。
長男が経管栄養の流入速度を速めた後に母親は嘔吐して誤嚥性肺炎になりました。嘔吐が速めた直後でないことは流入速度を速めたことが問題ないことを意味しません。人体には遅れて影響が出ることがあります。
以下は小説における医師の台詞です。「明日あたりに具合が悪くなった気がしても、慌てないでちょうだいね。遅延型反応というものだから」(ジェームズ・ロバートソン著、田内志文訳『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』東京創元社、336頁)
さらに長男は具合の悪くなった母親の延命につながる全ての治療を拒否しました。医師記録の平成19年8月20日に「family (son)は延命につながる治療を全て拒否。現在Div.(注:点滴Drip Infusion into Vein)で維持しているのも好ましく思っていないようである」と、被告(son=息子)が母親の生命維持を好ましく思っていないと指摘しています。

AKB48元支配人の不適切Twitterが炎上

NGT48山口真帆さん暴行被害事件では山口さんの告発後、今村悦朗NGT48支配人(当時)は雲隠れし、説明責任を果たしていない。ところが、2019年3月に今村前支配人はAKB48の戸賀崎智信元支配人や 細井孝宏支配人と居酒屋で酒を飲んで談笑していた。戸賀崎支配人は飲み会の写真と共に「みんなぐたらない報道に惑わされないように(原文ママ)」とのTwitterを投稿した。これが無神経と批判されて炎上した。問題のTwitterは削除された。バカッター事件を笑えない。

AKB48を運営する株式会社AKSは2019年3月7日、今村悦朗氏の契約解除、細井孝宏氏の退任を発表した。発表は以下のように記載する。「NGT48に関する事案について第三者委員会にて調査中であるにも関わらず、立場ある人間が不適切な行動をしてしまったことを、会社として厳粛に受け止め、前NGT48劇場前支配人今村悦朗との契約を解除し、AKB48劇場支配人の細井孝宏氏の退任を発表いたします」

NGT48運営は事件に対し、コミュニケーション不足との的外れの反省の弁を出した。その運営関係者が飲みニュケーションで刺された。これはコミュニケーション至上主義に対する痛烈な皮肉になる。

そもそもAKBは地下アイドルから発展した。20世紀的な芸能界のスタイルとは異なるところが大きな魅力であった。その運営が不都合な事実を誤魔化す20世紀的な日本型組織であることを露呈したことは、21世紀のアイドルを応援していたファンには大きな失望である。20世紀的な日本型組織の悪癖を絶ち、21世紀に相応しい組織が求められる。

この事件は真相を早期に説明して公表した方が損害は少ないという警察不祥事や企業不祥事と共通する事例です。簡単に隠蔽できると甘い考えで嘘に嘘を重ねて反発を強める展開は東急不動産だまし売り裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟)と重なります。インターネット上では東急リバブル・東急不動産に対する批判が急増し、炎上事件として報道されました(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威-「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁)。

NGT48山口真帆さん暴行被害事件コミュニケーション不足は的外れ

https://www.hayariki.net/ngt48/

埼玉県警や高知県警で個人情報不正取得

埼玉県警や高知県警で警察官が個人情報を不正取得した。埼玉県警岩槻署の男性警部補は2010年2月から2014年6月にかけ、「捜査に必要」と偽り、知人女性の個人情報を照会するための書類を携帯電話会社などに提出した。公用端末での不正照会を含め、計10人66件の個人情報を不正取得した。警察組織の中に不心得者がいるというレベルではない。むしろ警察官の職権を濫用した計画的な不正取得である。
問題は個人情報の不正取得が埼玉県警のレベルでは是正されないことである。不正取得の発覚は警部補が2014年11月に都内で酒気帯び運転による物損事故を起こしたことがきっかけである。事故の際に車内から不正照会した書類が発見された。埼玉県警は2015年1月23日付で虚偽有印公文書作成・同行使容疑でさいたま地検に書類送検した。
警察官の職権を濫用した個人情報の不正取得は更なる犯罪を生む。埼玉県警川口署地域課の巡査は公用端末で不正に取得した女性の住宅に侵入したとして、住居侵入の現行犯で逮捕された。現金約3万円などを盗んだとして同罪と窃盗罪で2015年1月2日に起訴された(「個人情報不正照会、住居侵入、捜査書類偽造… 埼玉県警、2人免職、1人停職」産経新聞2015年1月24日)。恥も外聞も知らないのかと嫌らしさにゾッと総毛立つ。

山形県警では巡査部長が2017年7月から2018年2月の間、知人女性の犯罪歴などの個人情報を公務目的外で2回、照会したとして、本部長注意とした。これは毎日新聞の情報公開請求で明らかになった(日高七海「<警察学校>山形県警の警部補と巡査がカンニングで処分」毎日新聞2018年10月6日)。
情報公開請求では警察学校で行われた試験で山形県警の警部補と巡査がカンニングをし、本部長訓戒としていたことも判明した。記事ではカンニングをメインにしている。情けなさではカンニングが勝る。そのために記事の中心の内容とし、見出しにもしたと思われるが、市民への悪影響では個人情報の目的外照会が悪質である。

高知県警の30代の男性巡査長は、警察内部のシステムを不正に用いて20代女性の住所を調べ、女性宅への嫌がらせやストーカー行為をしていた。県警は2019年2月15日付で巡査長を器物損壊容疑で高知地検に書類送検し、懲戒処分(減給6カ月)に。巡査長は容疑を認め、同日に依願退職した。
送検容疑は以下である。2018年8月11日と同19日のいずれも午前2時頃、女性の住む集合住宅の窓ガラスに石を投げて割った。同年12月29日午前3時頃、女性宅の玄関ドアの鍵穴とのぞき穴に接着剤を流し入れて壊した。
県警監察課によると、巡査長は2015年12月、高知市内の飲食店で勤務していた女性と知り合い、好意を抱いた。聞き出した家族の車の情報などを警察内部のシステムで不正に照会し、住所を調査。女性宅への嫌がらせに加え、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で繰り返しメッセージを送るなどした。
県警は公表しなかった理由について「システムの使用は勤務中の行為だが、私的に調べたことで公務ではない」とする(松原由佳「警察システムを不正利用しストーカーも 高知県警巡査長を書類送検」毎日新聞2019年3月5日)。ここに隠蔽体質がある。警察のシステムが私的に使われたことは、むしろ問題である。古来より、貪官汚吏の駆除が政治改革の第一である。現代日本では警察組織が先ず対象になるだろう。

NGT48山口真帆さん暴行被害事件コミュニケーション不足は的外れ

NGT48山口真帆さんが暴行被害に遭った事件ではNGT48運営の不誠実さが目立つ。特に問題はNGT48運営がコミュニケーション不足を反省理由に挙げていることである。コミュニケーションは双方で成り立つ。コミュニケーション不足を問題とすると相手にも改善を求めるという責任転嫁ができてしまう。

また、コミュニケーション不足を原因とすると、コミュニケーション強化が対策になる。しかし、今回のような事態では、第一に優先すべきことは山口さんのケアである。運営が山口さんと直接コミュニケーションをとることは山口さんの負担になる。弁護士などの代理人を通じてでなければ話さないとなっても不思議ではない。

コミュニケーションがあろうとなかろうと暴行事件は問題である。その背後にNGT48関係者がいたならば不祥事である。コミュニケーションは無関係である。コミュニケーションで誤魔化すコミュニケーション至上主義は日本社会の悪癖である。

 

この事件は警察の対応も批判されている。埼玉県警の不祥事である桶川ストーカー殺人事件との共通性を指摘する声がある。

「桶川で起きた「ストーカー殺人事件」を持ち出すまでもなく、ストーカーに困って警察に相談したが、とりあってもらえず、無残に殺されてしまったケースはこれまでも多くあったではないか。」(元木昌彦「「NGT事件」なぜ秋元康は謝罪しないのか」プレジデントオンライン2019年1月22日)

私は桶川ストーカー殺人事件の書評でストーカー規制を強化すればよいというものではなく、半グレの見方をするような警察が問題と指摘した。この事件でも該当する。

和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て

シンポジウム「和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て」が2018年11月18日(日)、専修大学神田校舎で開催された。患者を置き去りにした医療の実態が浮かび上がった。林田医療裁判と重なる問題である。私は質疑応答でキーパーソンについて質問し、フリーライターの守田憲二氏は家族の総意が必要と回答した。キーパーソンは連絡窓口に過ぎず、キーパーソンに独断で治療方針を判断する権限を与えたものではないことになる。
質問「病院の実務だとキーパーソンというのを定めて、キーパーソンと病院だけで決めてしまうことが往々にしてあります。病院にとって、臓器移植をやりたいとか無用な治療をやりたくないとか、そういう方向に迎合するような人をキーパーソンとして認めて、その人の意見しか聞かないで同意を得たという話に進むと思うのですが、それに対して家族はどう対抗できるでしょうか」
回答「お答えは、家族の総意をもってやらなければいけないということです」(市民シンポジウム講演録「和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て」41頁)

このシンポジウムは臓器移植法を問い直す市民ネットワーク、日本消費者連盟、DNA問題研究会、バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる、脳損傷による遷延性意識障がい者と家族の会「わかば」が共催した。3名が講演した。
小松美彦「和田移植とその歴史的構造」では和田心臓移植の問題として、自発呼吸も心音もあるのに絶望的と判断され、生きているうちに心臓を摘出された蓋然性が高いことと指摘する。心臓移植は、それ自体是非が問われるが、現実の和田心臓移植は心臓移植の進め方としても問題がある。
ここに現実の医療問題を追及する場合の難しさがあると感じた。「心臓移植は許されない」と「心臓移植の要件や手続きから逸脱している」という二つの方向からの批判が成り立つ。これら二つの論点をそれぞれ独立して吟味すれば良いが、ごっちゃにされがちである。追及される側は意図的にごっちゃにして、批判側が論理矛盾しているように見せて責任逃れする。この克服が大きな課題である。
「和田移植とその歴史的構造」は、和田心臓移植は七三一部隊や九州大学医学部生体解剖事件とつながっているとも指摘する。この種の指摘は珍しくない。一方で「和田移植とその歴史的構造」は戦争に帰してはならないとも主張する。全ては医療・医学の構造的問題であり、人間の命と体への権力問題である。患者は実験材料であった伝統が医学にある。
現代医療の闇を七三一部隊などの延長線上に位置付けることは、安易に過去を水に流す非歴史的な日本では重要な視点である。しかし、そのような論調は戦争が悪いで終わってしまいがちである。「和田移植とその歴史的構造」の視点は新鮮である。
児玉真美「グローバルに進むいのちの切り捨て」は「死ぬ権利」論と「無益な治療」論が両輪になって命の選別と切り捨てを加速していると主張する。
「死ぬ権利」論の恐ろしいところは、それがデフォルトになってしまうことと感じた。もともと「死ぬ権利」は自己決定権が根拠になっている。それならば生きたい人には生きる自己決定権を尊重することが相互主義である。
もっと恐ろしいものは「無益な治療」論である。患者や家族が望んでいても、治療の一方的な停止や差し控えの決定権を問答無用で認める論拠になっている。日本では、この「無益な治療」論による医療サイドの押し付けが深刻である。死ぬことだけ自己決定権を持ち出すことは片寄っている。結局、日本は昔から集団主義の村社会であり、個人の自由を認めていないだけである。本当の意味での自己決定権が対抗する拠り所になるのではないか。
守田憲二「脳死と判定された人は生きている」では、基準に基づかない粗雑な脳死判定がなされていると指摘する。脳死判定を誤る原因として薬物の影響がある。麻酔や鎮痛剤は脳神経の機能を低下させて脳死と似た状態をもたらす。脳死判定から長時間生存し、循環や呼吸、内分泌機能が良好な状態に保たれていれば、薬物が排泄され、脳死判定基準を満たさなくなる患者が増えるとする。

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話(2019年3月2日)は「青梅のカサノバ」が登場する。紀州のドンファンが下敷きだろう。今回はイノセンスでもなければ、冤罪でもないというタイトルと異なる話となった。

黒川拓弁護士(坂口健太郎)は真実を追求することで冤罪を明らかにしてきた。これは『99.9 刑事専門弁護士』の深山大翔弁護士と同じである。黒川弁護士や深山弁護士の関心は専ら事実である。それによって見込み捜査で冤罪を作り上げる警察や検察から無罪を勝ち取った。

これに対して従来のステレオタイプでは、熱心な刑事事件の弁護人の関心は人権であった。「知りたいのは事実」と人権擁護が両立するとは限らない。『デスノート』のLや『相棒』の杉下右京のように違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにするキャラクターも事実重視である。捜査側ではなく、被疑者・被告人側で事実重視のヒーローを生み出したことは新しい。

今回は、「知りたいのは事実」と弁護活動が対立するパターンである。黒川真(草刈正雄)は「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と黒川弁護士を批判する。違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにしようとする発想を根本的に批判するためには、やはり正しい手続きや被疑者・被告人の防御権の思想が必要である。

ドラマは被告人が最後に優等生的な態度になり、無理やり物語をまとめた感がある。日本国憲法第38条第3項の「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」との関係はどうなるのだろうか。但し、情状弁護の中で青梅のカサノバの悪徳商法ぶりを明らかにすることになるので、その点では意味のある告白であった。

イノセンスでもなければ冤罪でもない話であったが、警察や検察の冤罪製造機は相変わらずである。警察の証言の獲得の仕方は誘導的であった。また、監視カメラが検察の主張を崩すために使われる。監視カメラの映像を弁護人が平等にアクセスできることが必要である。

聞いてよ市長!さいたま市民政策プレゼンテーション

Oneさいたまの会は「聞いてよ市長!さいたま市民政策プレゼンテーション」を2018年9月26日に埼玉県さいたま市南区別所の武蔵浦和コミュニティセンター多目的ホールで開催しました。雨にも関わらず、中学生を含む70人以上の方にご来場いただきました。清水勇人さいたま市長は最初から最後まで参加され、プレゼンテーションに耳を傾けてくださいました。
私は「自殺0を目指す 明日の約束プロジェクト」を発表しました。自殺を0にするためにネットとリアルの両方に明日の約束ができる場所を作りたいと発表しました。その一環として8月5日に開催した「寺遊祭(じゆうさい)2018お寺で遊ぼう・学ぼう・笑っちゃおう」を報告しました。アンケートでは「「話すだけで気が楽になる」そんな人が集まれる場からのスタートは良い事だと思いました」との声が寄せられました。

Oneさいたまの会「聞いてよ市長!さいたま市民政策プレゼンテーション」が埼玉新聞と毎日新聞で報道されました。埼玉新聞記事は発表後の取材質問への林田力の回答を掲載しています。「市長が参加するということで自分の考えを半年間練った。ぜひ市政で実現してほしい」(「さいたまをもっと住みやすく 市民の目線で政策プレゼン」埼玉新聞2018年9月29日)
毎日新聞記事は、林田力「自殺0を目指す 明日の約束プロジェクト」を「自殺者ゼロを目指して、例えばお寺を文字通りの駆け込み寺にして常時相談できる居場所を」と紹介しました(錦織祐一「市民有志がさいたま市長に提案」毎日新聞埼玉版2018年9月29日)。

記事は田中伸幸「飛び出せ!行政マン」を特集しています。ここで取り上げられた縦割行政の弊害の問題は深刻です。民間企業がユーザーエクスペリエンスを重視するようになっている中で後進性が際立ちます。
行政の対応では「たらいまわし」が古くから批判されます。これは解決に役立つ部署を案内するのではなく、自分達の責任逃れをすることが第一と見え隠れすることが問題です。「問題を解決するために何ができるか」ではなく、「それは自分の仕事ではない」ということを相手に理解させることにエネルギーを注ぎます。それは極論すれば、相手が野垂れ死にしようが、憤死しようが関係ないという行政の冷酷さに行き着きかねないものです。
分業すること自体は人類の知恵です。何でもかんでも自部署で成し遂げる必要はなく、それは非効率です。民間企業では自前主義が批判され、企業の枠や国境さえ超えた共創やエコシステムがキーワードになっています。民間の分業と行政のたらいまわしの落差は、むしろ「自分の部署の完結を意識し過ぎる」という公務員の姿勢にあるとの指摘は鋭いです。その意味で清水勇人市長のまとめ「公務員には苦手な分野もあり、市民協働の新しい文化を創りたい」に大きな意味があると思います。

岐阜県警の人事異動写真に「死ね」「呪」の文字

岐阜県警が春の人事異動の資料として報道機関に配布した顔写真データの一部に、「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「人事異動の顔写真に「死ね」の文字」共同通信2019年2月28日)。県警は職員による悪質ないたずらの可能性もあるとみて調べる。

岐阜県警察本部は2019年2月15日、警部以上の幹部人事を発表し、顔写真のデータを報道各社にメールで送付した。このうち1人の白いワイシャツの部分に白い文字で「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「異動顔写真データに「死ね」の文字 岐阜県警が報道各社に配信」NHK 2019年2月28日)。警務課によると、文字は課内で保存する元データにも残っていたという(「幹部の写真に「死ね」「呪」の文字 岐阜県警が報道提供」朝日新聞2019年2月28日)。

警察組織のパワハラ体質の深さを感じる。神奈川県警では拳銃自殺した巡査の遺族が「パワハラが自殺の原因」として損害賠償請求訴訟を提訴した(「<巡査自殺>「パワハラ原因」遺族が損賠提訴 横浜地裁」毎日新聞2018年3月13日)。埼玉県警機動隊「水難救助隊」の巡査が潜水「訓練」中に溺死した事件もパワハラで殺されたと批判されている(三宅勝久「「息子は警察に殺された」埼玉県警水難救助部隊の“殺人訓練”、息継ぎさせず繰り返し沈め溺死」MyNewsJapan 2015年8月7日)。

パワハラで最も始末が悪いパターンは加害の自覚がないものである。パワハラを批判されても「激励するため」「はっぱをかけるため」と正当化する。反省して態度を改めることができない。民間企業では整備されつつあるパワハラを告発する場がないから、このような形になるのだろう。第三者機関が必要である。

マンションだまし売り

マンションだまし売り被害を消費者契約法の不利益事実不告知で解決した裁判を描くノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者です。私は新築分譲マンションを購入したのですが、隣地建て替えによって日照・通風がなくなる部屋であることを隠して販売された、だまし売り物件でした。引渡し後に真相を知り、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻しました。

判決は以下のように消費者契約法違反(不利益事実の不告知)を認定しました。「被告は、本件売買契約の締結について勧誘をするに際し、原告に対し、本件マンションの完成後すぐに北側隣地に3階建て建物が建築され、その結果、本件建物の洋室の採光が奪われ、その窓からの眺望・通風等も失われるといった住環境が悪化するという原告に不利益となる事実ないし不利益を生じさせるおそれがある事実を故意に告げなかった」(東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。

この判決は不動産取引に関して消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)を適用し契約の取消しを認めたリーディングケースです(今西康人「マンション販売における不動産業者の告知義務」安永正昭、鎌田薫、山野目章夫編『不動産取引判例百選第3版』有斐閣、2008年、31頁)。

この判決は、内閣府消費者委員会で2015年4月10日に開催された第8回消費者契約法専門調査会の「参考資料1」で「事例1-7 消費者契約法検討会報告書 裁判例【109】」として紹介されました。そこでは以下のように紹介されています。

「原告がマンションの一室を購入するに当たり本件建物の眺望・採光・通風といった重要事項の良さを告げている一方、当該重要事項に関して本件マンション完成後すぐにその北側に隣接する所有地に三階建ての建物が建つ計画があることを知っていたのに被告の担当者が説明しなかったのは不利益事実を故意に告げなかったものであるとして、消費者契約法4条2項に基づく売買契約の取消に基づく売買代金の返還を建物明け渡しによる引換給付とともに請求し認容された事例」

以下でも紹介されました。

「マンションを購入するに当たり、建物の眺望・採光・通風の良さを告げている一方で、マンション完成後すぐに隣地に3階建て建物が建つ計画があることを知っていたにもかかわらず説明しなかったことは「不利益事実の不告知」に当たるとしたもの」(田中裕司「消費者契約法は不動産取引にどのような影響をもたらしているか――消費者契約法施行10年を振り返って――」RETIO No.80 (2011) 68頁)

「裁判例を見る限り、訴訟にまで至るのは、眺望に関する不実告知や不利益事実の不告知(福岡地判平成18年2月2日判例タイムズ1224号255頁、東京地判平成18年8月30日公刊物未登載)、ローン特約に関する不実告知(東京地判平成17年8月25日公刊物未登載)のように不動産売買契約に関する事案が多いものと思われる」(森大樹「不動産証券化取引(特に不動産賃貸取引)を巡る消費者政策・消費者法の概要と最新の動向(下)」不動産証券化ジャーナル2011年3-4月号89頁)

裁判中にマンション管理会社の問題も発覚しました。駐車場料金を一般会計に算入しておきながら、長期修繕計画では修繕積立金に算入していました。そこで管理組合理事長として、管理会社を独立系会社にリプレースしました。その結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、共用部の欠陥の発見などサービスレベルも向上しました。

これらの問題から消費者の権利や住民の権利が貧弱であることを痛感しました。多数の同種被害者が出るような問題は、それなりに弱者保護の運動体がありますが、個別性の強い問題は問題自体を理解してもらえにくいという問題を感じました。そのような個別性の強い問題に対応していきたいと思います。

私は『東急不動産だまし売り裁判』が社会性の出発点であり、最初に言っていた話から、なし崩し的に違う条件になり、余計な負担や不利益を負わされることが強く許せないという感覚を持っています。消費者の立場からマンションだまし売りやマンション投資の迷惑勧誘電話、貧困ビジネス、危険ドラッグのない世界を目指します。

マンションだまし売りやゼロゼロ物件業者などの貧困ビジネスを告発したことで、卑怯な誹謗中傷を受けました。しかし、圧力に屈せず、貧困ビジネス批判を続けました。告発した業者が別の会社名や代表者名、免許番号で営業するという卑怯な手段に出たこともあります。

動物愛護の問題では、マンションだまし売り問題から悪徳商法に問題意識を持っており、ペット引き取り屋という闇ビジネスが許せないという思いが出発点になります。動物を虐待し、飼い殺しにして金儲けすることは許せません。

教育問題では、いじめ問題に特に関心があります。上述の経緯より、裁判への関心もあるのですが、北本いじめ自殺裁判では同級生から「きもい」と悪口を言われ、下駄箱から靴を落とされ、「便器に顔をつけろ」と言われるなどの事実がありながら、「一方的、継続的ではなく、自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」と、いじめを否定する不当判決が出ています。市民感覚と異なる発想が支配していることに憤りを覚えます。

 

東急不動産だまし売り裁判MyNewsJapan報道

東急不動産だまし売り裁判がMyNewsJapanで報道された(佐藤裕一「東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口」MyNewsJapan 2009年9月3日)。同じ記事は「回答する記者団」にも掲載された(佐藤裕一「東急不動産のマンションは「買ってはいけない」」回答する記者団2009年9月4日)。

東急不動産だまし売り裁判は東急不動産(販売代理:東急リバブル)が不利益事実(隣地建て替え)を隠して新築マンションをだまし売りし、購入者が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、売買代金を取り戻した裁判である(東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号、アルス東陽町301号室事件)。

東急不動産だまし売り裁判は消費者契約法で不動産売買契約を取り消したリーディングケースとなった。記事は東急不動産だまし売り裁判原告・林田力への取材に基づくもので、判決や訴状、準備書面、陳述書なども掲載されている。

記事では東急不動産のマンション購入者への悪質な嫌がらせの数々を紹介する。東急不動産は購入者(原告)へのアフターサービス提供を拒否し、東急不動産代理人は公開法廷で争点とは無関係な購入者の年収を暴露した。マンション建設地を地上げし、東急不動産のために近隣対策を行った地上げブローカーは東急リバブル・東急不動産でなければ知り得ない個人情報を握り、嫌がらせを行った。「ワナに落ちた者をグループで襲う」との小見出しが説得力を持つ記事である。

悪徳不動産業者は、提訴した被害者への憎しみをかきたてない限り、活力が湧いてこない。その典型が東急不動産であった。嫌がらせを怖がってはならない。

「突けば壊れる。そう思われているうちは何度でも同じ目に遭うに違いない」(落合誓子『バッド・ドリーム 村長候補はイヌ!?色恋村選挙戦狂騒曲』自然食通信社、2009年、106頁)。それ故に原告は地上げブローカーが圧力をかけた時は内容証明郵便で東急不動産に抗議した。

だまし売り被害者が被害経験を語ることは一般に受け止められているほど容易なことではない。そこには様々な葛藤があり、「時間の流れ」では解決できない問題が数多く含まれている。記事で描かれた東急不動産弁護士や地上げブローカーの嫌がらせは怒りなしでは思い返せない内容である。

それらは個人的かつ個別的な世界の出来事でありながらも、物事の本質を見抜く当事者の優れた洞察力を通して、問題の解決に向けての様々なヒントを指し示してくれる。

「人間の存在の根幹にかかわる問題に向き合おうとするとき、当事者の「ことば」に耳を傾け、そこに潜む普遍的な要素を探る作業は、今後もその重要性を失うことはない」(医療について、長尾真理「「患者の権利」としての医療」哲学第122集、慶應義塾大学三田哲学会、2009年、93頁)。

記事「東急不動産で買ってはいけない」の反響は大きい。MyNewsJapanの2009年9月16日のアクセスランキング1位である。読者評価ランキングは4位である。2009年9月13日時点ではアクセスランキング及び読者評価ランキングとも2位になった。コメント欄には東急不動産(販売代理:東急リバブル)を非難するコメントが寄せられた。

「消費者重視の時代にこれはひどい話ですね」

「騙し売りの東急という新しいブランドが確立されましたね」

「消費者庁にはこういった深刻な問題に対して意欲的に取り組んでもらいたいですね」

「こういう情報がどんどん明らかになって、騙し売りをするような会社に消費者が足を向けなくなるようになることを祈ります」

東急の被害事例も報告された。第一に一戸建て注文住宅の施主は仕上がりの酷さに驚いたという。床はコンパネ一枚分盛り上がっていた。玄関の突き出た屋根の部分は地面と平行ではなく傾いていた。外壁では割れた箇所が30カ所くらいあった。あまりにも雑なために、知り合いの一級建築士に頼んで確認してもらったところ、手直しする箇所が300カ所以上あったと語る。

第二に東急リバブルの仲介で中古住宅を購入した消費者の被害も寄せられた。基礎部に大規模かつ広範囲の腐食が見つかったという。東急リバブルは名ばかりの工事で済ましたが、専門家調査で工法不良が判明したとする。東急リバブルは「言った」「言わない」の水掛け論で責任逃れを図ると批判する。

記事「東急不動産で買ってはいけない」はブログでも取り上げられた。そこでは「大手企業というブランドでマンションを買ってしまって失敗したという話」と紹介する。「大手企業だから安心して購入する」という安易な考えを戒めている(『個人ブログで辛口批評する!消費者側から見た生命保険/損害保険』「大手企業ということで、真っ向から信用してはいけない。」2012年9月20日)。




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