経済
林田力

左翼スタンドへのホームラン

東急不動産だまし売り裁判は、野球で言えば左翼スタンドへのホームランです。真っ直ぐのボールを跳ね返し、弾丸ライナーが左翼スタンド上段に突き刺さります。左翼はバッターから見て左方向の外野です。その後ろに位置するスタンドが左翼スタンドです。東急不動産だまし売り裁判は令和に伝える価値のある平成の消費者問題に立候補します。令和にも東急不動産だまし売り裁判の意義を伝えます。


東急不動産だまし売り裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟)は、東急不動産(販売代理:東急リバブル)が隣地建て替えによる日照・眺望・通風阻害という不利益事実を説明せずに新築分譲マンションをだまし売りした事件です。


東急不動産は2003年に東京都江東区の新築分譲マンション「アルス」販売時に「眺望・採光が良好」など環境面の良さをアピールポイントとしました。パンフレットやチラシで「豊富な緑に心やすらぐ「洲崎川緑道公園」」「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」と謳っていました。しかし、隣地が作業所に建て替えるという不利益事実を説明しませんでした。マンション竣工後に隣接地で建て替え工事が行われ、洲崎川緑道公園への眺望はなくなりました。


引き渡し後に真相を知った購入者は消費者契約法第4条第2項(不利益事実の不告知)に基づいて売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻しました。消費者契約法第4条第2項は事業者が利益となる事実を告げながら、不利益となる事実を告げなかった場合に契約の取り消しを認めています。東急不動産だまし売り裁判は、不利益事実の不告知を不動産売買契約に適用したリーディングケースです(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。


事業者が不利益事実を説明することは消費者の正しい選択に不可欠です。「正しい判断は正しい理解から、そして正しい理解には正しい情報が必要不可欠だ。どれだけ真剣に考えた所で理解と情報に誤りがあれが全てが無意味と化すのだ」(鉄鋼怪人『帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?』「第百二十話 野生の双璧が現れた!」)。

LIXIL会長がパワハラメール

住宅設備大手のLIXILグループ(リクシル)の潮田洋一郎・会長兼CEOが部下に対して高圧的なメールを2019年3月4日に送っていた。メールには以下のような脅しのような文言が並んでいるという。
「(社員としての)分をわきまえなさい。何様か」
「経営者としてギリギリの線を考えているのに下らない文章まで会長名で書こうとは何事か」
「広報には向いていない」
「(人事担当役員に)身の振り方を相談しなさい」


A氏が潮田氏の全社員宛てメールの草稿について、ある進言をしたことが、逆鱗に触れたと見られている(「「分をわきまえろ。何様か」リクシル潮田会長が部下に送った“パワハラ”メール」文春オンライン2019年4月10日)。パワハラの自覚がないのだろうか。


LIXILはゴタゴタが続いている。LIXILグループは2018年10月31日、2019年4月までに瀬戸欣哉社長が退任し、山梨広一社外取締役が社長に就任する人事を発表した。現場や業界を無視した経営施策の失敗が更迭の理由と分析されている。これは新社長も同じと見られる。「藤森、瀬戸、山梨と現場から遠いプロ経営者が3代続くLIXILの経営は、迷走が続いている」(林哲矢「迷走リクシル、「2度目の社長更迭」の深刻度」東洋経済オンライン2018年11月12日)。


社長個人の問題よりも、任命と更迭を繰り返す創業家の責任が大きいだろう。2018年10月31日の取締役会では「指名委員会5人の中から瀬戸氏の後任2人を選ぶことを、ガバナンス(企業統治)の観点から疑問視する声も上がった」という(「LIXIL瀬戸氏の不可解な“解任劇”創業家・潮田氏復帰の背後に何があったのか」日経ビジネスOnline 2018年11月7日)。


社長の施策が現場無視と批判されるが、現場が抵抗し、嫌がるような改革が市場からは求められていることもある。ビジネスシーンでは変革に対する阻害要因「チェンジモンスター」をやっつけろという記事さえある(小沢匠「アドビ日本法人が販売モデルを転換、浮上する「チェンジモンスター」の存在」日経XTECH ACTIVE 2018年11月7日)。


高度経済成長やバブル期の「成功体験」を持つ企業は、旧習に囚われたまま衰退する危険の方が高い。右肩上がりの経済成長の時代は何もしなくても売れた時代であった。成功体験と呼ぶよりも成功幻想が似合っている。


現場の腐敗も深刻である。LIXIL子会社の「LIXIL鈴木シャッター」は2019年1月11日、防火シャッターなどの定期検査を行う防火設備検査員の資格を社員13人が不正に取得していたと発表した。資格取得の前提となる防火設備講習を受ける際、上司の指示で実務経験期間が実際は1カ月から2年1カ月であったが、「(受講資格がある)3年以上」と偽っていた。資格取得後、東京都と千葉、長野両県の学校や病院など計68棟で定期検査を行っていたという(「検査員資格を不正取得=LIXIL子会社で」時事通信2019年1月11日)。


私は東急不動産だまし売り裁判の経験からLIXILの企業体質が「さもありなん」と感じる。東急不動産だまし売り裁判の東急不動産代理人はLIXILの前身のトステムが訴えられた裁判のトステム代理人やトステム建材産業振興財団の評議員になっていた。この弁護士は改竄した証拠を提出し、母親の危篤を理由として原告本人尋問を当日になって延期させて証拠収集を行った(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。

Amazonビジネスで購買コストセーブや見える化

Amazonビジネス(Amazon Business)は法人・個人事業主向け購買サービスです。購買のコストセーブ、経費削減や購買業務の見える化につながります。伝票が一本化され、Webを介して発注状況が「見える化」されることで購買担当者や管理職のコストも削減でき、働き方改革につながります。日本では2017年9月20日にサービスを開始しました。

Amazonビジネスのメリットの第一は品揃えの豊富さです。Amazonの企業理念は「地球上で最も豊富な品揃え」です。Amazonビジネスでは法人向けの商品が追加されています。物に加えてワープロや表計算などのソフトウェアや人事、給与、会計、プロジェクト管理などのSaaSも提供されています。これら豊富な商品が法人向け価格や数量割引価格で購入できます。

 

メリットの第二は支払方法の選択肢の広さです。クレジットカード払いや請求書払いなど幅広いオプションの中から選択可能です。「特に請求書払いのニーズが高く、年商300億円以上の企業であれば70%以上がこの方法を利用している」(大蔵大輔「「Amazon Business」が1周年、日本は「請求書払い」の利用率が世界一」BCN+R 2018年9月12日)

 

メリットの第三はB2C向けで圧倒的に支持されるAmazonのUIと同じ形で利用できることです。「個人の買い物で使い慣れている人が多いアマゾンなら、法人向けECの導入のハードルは低いかもしれない」(長瀧菜摘「アマゾン「法人向けEC」はケタ違いの破壊力だ 商品数は2億超、アスクルやモノタロウを圧倒」東洋経済ONLINE 2017年9月22日)

 

メリットの第四は開かれたプラットフォームであることです。アカウント作成のハードルは低いです。「実績が乏しい新しい会社は、仕入れチャネルの開拓がハードルになることがある。計画的な調達先を開拓するために、Amazonビジネスを利用してみる方法もあるかもしれない」(中尾真二「アマゾンのオンライン業販はモノタロウに勝てるのか?…IAAE 2019」Response 2019年3月15日)

 




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