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林田 力 『東急不動産だまし売り裁判』著者

テレビドラマのレビューなどエンタメ記事です。

NGT48山口真帆さん暴行被害事件第三者委員会調査報告書に失望

株式会社AKSは2019年3月21日、NGT48山口真帆さん暴行被害事件の第三者委員会調査報告書を報告した。もともと第三者委員会は第三者性に疑問が呈されており、報告まで時間がかかった上にメンバーの関与を有耶無耶にするような内容に失望の声が出ている。

AKSは報告書公表の発表文の中で「事件そのものにNGT48のメンバーが関与した事実はなかったとの判断がなされるとともに、運営上の不備が指摘されました」と記載する。いじめ調査で「いじめは無かった」とする報告書を連想する。保身第一の無能公務員体質と変わらない。

AKS発表文の「NGT48のメンバーが関与した事実はなかったとの判断」が流通しているが、調査委員会では関与したとの事実を確認できなかったと述べているにとどまり、事実はないと断定したものではない。逆に報告書はメンバーAが山口さんがマイクロバスに乗っていると暴行者に教えたとする。

これは「被疑者らが山口氏が孤立する時間帯を知っていたこと」という暴行事件の発生条件の一つである。「マイクロバスの運行経路等から山口氏が帰宅のため当該マンションの共用廊下に現れる時刻を予測して待ち伏せ、本件事件が発生することになった」(報告書26頁)。因果関係のある行為をメンバーがしたことになる。

AKS発表文の問題は「今後の方針としては、常にメンバーと向き合い、話し合いを通じて、解決していく」と話し合いで解決するコミュニケーション至上主義に陥っていることである。この問題は山口さんが外部に告発したことが発端である。内輪の問題を外に出さないという日本社会の村社会的体質を打破し、世間に問題を広く訴えられる仕組みが解決策になる。村社会的な日本社会は告発者に厳しい。山口さんが外部に訴えたことを評価しなければ救われない。話し合いの強調は告発の抑制になりかねない。

報告書に目新しい事実はないが、興味深い分析に「新潟という活動拠点の特殊性」がある。新潟は大都市と比べて狭く、公共交通機関が限られているために移動経路の特定が容易で、住居が発覚しやすかったとする(23頁)。また、ファンの絶対数も多くなく、特定少数のファンとの触れ合いが多くなったとする(24頁)。

近年は地方の良さを強調する論調が少なくないが、村社会的な窮屈さがあることも事実である。欧州では古くから「都市の空気は自由にする」と言われていた。今回のような暴行事件は近隣コミュニティーが希薄な都市型事件と思われがちであるが、むしろ地方的な閉鎖性が背景にある。だからこそ問題を外部に告発するオープン性に価値がある。

『相棒season17』最終回「新世界より」

『相棒season17』最終回2時間スペシャル「新世界より」が2018年3月20日に放送された。『イノセンス 冤罪弁護士』は現実の冤罪事件を下敷きにしているが、「新世界より」は3月20日に起きた地下鉄サリン事件を意識させる。

警察官が身分を隠して記者に同行して情報収集する。これは違法捜査である。同行させる記者もジャーナリストの倫理に反する。杉下右京(水谷豊)は目的を達するために罪を犯すのは間違いと語るが、それは違法捜査する自分に言うべきだろう。罪を償わなければならないと言うが、違法捜査の罪を償わなくても良いのか。その謹慎のための最終回なのだろうか。捜査一課は事実上強制の任意同行を連発し過ぎである。警察不祥事になる。

伊丹憲一(川原和久)が体を張ってウイルス拡散を防止する。しかし、あり得ない個人のファインプレーでウィルス蔓延を阻止するという御都合主義的な展開ではない。ここには物語の深みがある。主要キャラクターが退場し、本当の最終回になるかと思ってしまった。

未来人を自称する人々が登場し、途中から物語の世界観が変わったように感じさせる。『ドラえもん』とコラボした影響だろうか。タイトルと同名の貴志祐介の小説『新世界より』は文明が衰退し、人口が激減した近未来の物語であった。

『いだてん』第10回「真夏の夜の夢」

NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』第10回「真夏の夜の夢」が2019年3月10日に放送された。足袋職人を演じるピエール瀧が麻薬取締法違反(使用)容疑で逮捕されて初の放送である。受動喫煙の描写が問題視されていたが、それを吹き飛ばす問題である。

金栗四三(中村勘九郎)は国名をJapanではなく、ニッポンと表示すべきと強硬に主張する。日本の本来の呼び名は「ひのもと」である。いつから「ニッポン」と音読みになったのだろうか。NipponよりJapanの方がアルファベットが先であり、早く紹介されるメリットがある。

金栗の主張は何でもかんでも外国に合わせるものではないという守旧派に心地よい主張である。しかし、Japanと呼ばれるのが嫌ならば、日本人がイギリスやスペイン、オランダと呼ぶことも改めなければ相互主義ではない。また、中国人や韓国人の名前を日本語読みすることも改めなければならない。

三島弥彦が欝状態の時に出した手紙が3週間後に東京の三島家に届く。三島家は大騒ぎになるが、弥彦の母親は大丈夫と言う。これを息子を知っている母親の自信と見るならば誤りである。3週間の時間差があるために母親の方が結果的に正しく見るが、手紙を出した時は手紙の内容が本心であった。母親は文字が読めない設定のため、欝の手紙の深刻さが分からないだけではないか。あれを大丈夫と言うならば、弥彦は止める止める詐欺の構ってちゃんと思っていることになる。

三島弥彦は、すりきれるまで頑張らず、余力を残して棄権する。オリンピック盛り上げドラマであるが、昭和の精神論根性論やガンバリズムとは一線を画している。

『イノセンス 冤罪弁護士』第9話

『イノセンス 冤罪弁護士』第9話(2019年3月16日)は最終章に入る。連続殺人の謎が最終章のテーマになる点では『アンナチュラル』を連想する。当初は冤罪被害者の苦しみに重点を置くかと思われたが、終盤は被害者遺族の心情に傾いている。

『99.9-刑事専門弁護士』は警察、検察、裁判所と敵が明確であった。これに対して本作品は、それ以外の足を引っ張る要素があることが話を複雑にしている。よりリアルになっていると評価することもできるが、見込み捜査、自白強要、人質司法の問題が曖昧になるのではないか。本作品は東京高裁でロケをしている。撮影協力の裁判所への遠慮が出たのだろうか。因みに保駿堂法律事務所は東京都中央区日本橋兜町の日証館である。

秋保恭一郎(藤木直人)は「真相より目の前の答えが欲しくなる」と感情的に言ってしまう。発言後に科学者失格と自省する。これは第8話の名張毒ぶどう酒事件を下敷きにした事件のように冤罪をそのままにする日本の風潮を作っている。

黒川弁護士は「本当に無実ならば自殺しない」と発言する。これは第8話で拘禁反応を指摘した黒川弁護士らしくない。無実なのに有罪とされたら絶望して自殺したくなるだろう。自殺は本人が決意して行うよりも、追い込まれるものである。

和倉弁護士の存在感は大きくなった。序盤ではウザいと視聴者からバッシングされた和倉弁護士が黒川弁護士を励ますようになった。川口春奈は和倉弁護士を演じることで女優としての人気を下げかねない事態であったが、この回で株が上がった。とは言え、自白強要という社会的テーマを掲げながら、人間ドラマが進展するだけでは物足りない。

母親が法律事務所に訪れるシーンは無駄なコメディに感じた。大きなテーマを抱えているのに無駄なコメディに割く時間があるのかと感じたが、母親から11年前の事件を説明させる意味があった。

ドラえもん のび太の月面探査記

『ドラえもん のび太の月面探査記』は2019年3月1日公開のアニメ映画。ドラえもん映画では太古と宇宙、海洋が定番である。月は宇宙の中で身近な天体であるが、意外と珍しい。

一方で過去の作品でも月は重要な役回りになっている。『のび太の魔界大冒険』では月の光を浴びると魔法が解けた。ドラえもん達が魔界星に向かう際には、月のウサギが見送った。『のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い』では魔界星の赤い月が重要な役回りを果たす。『のび太とアニマル惑星』でも動物の星の月が重要な役回りを果たす。ここではラッキーになる「ツキの月」という秘密道具も登場する。

日本マクドナルドはハッピーセットの玩具でドラえもん映画とコラボする。ハッピーセットとドラえもん映画のコラボは毎年の春の恒例である。ドリンク以外のハッピーセットの映画のイメージの箱に入っている。ハッピーセットにはドラえもんの玩具が付く。以前は購入時に玩具を指定できたのですが、途中から何が出るかお楽しみのガチャガチャ方式になった。

「ふってたのしい!ドラえもん ききゅう」はドラえもんの顔が気球になっている。振ると中から籠が出てくる。籠にはドラえもん、のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫が乗っている。

「ドラえもんとひみつどうぐシール」はドラえもんが白い宇宙服を着ている。後頭部の歯車を回すと、秘密道具や映画のキャラクターのシールが出てくる。

イノセンス 冤罪弁護士

『イノセンス 冤罪弁護士』は冤罪に立ち向かう弁護士を主人公としたテレビドラマ。無実にもかかわらず逮捕や起訴される冤罪の恐怖や自白強要の人質司法の実態を描く。日本テレビ系列で2019年1月19日から放送を開始した。第1話は実在の冤罪事件の下高井戸放火事件を下敷きにした。第1話の平均視聴率は8.3%。
冤罪を生み出す警察官や検察官は憎々しい。他人の気持ちを慮る、あるいは愛想というものを母親の胎内に置き忘れてきたかのような憎たらしい表情であった。冤罪を反省しない警察の体質は腐臭を放つヘドロのような暗闇である。物事には許容出来ないものが確かに存在する。
ドラマ『99.9 刑事専門弁護士』と設定が似ている。どうしても『99.9 刑事専門弁護士』と比較したくなる。『99.9』よりも重たい雰囲気である。重たいテーマであり、重たいドラマになることは当然である。むしろ、社会性とコメディを両立させた『99.9』が稀有である。『99.9』が冤罪ドラマ視聴者の裾野を広げたことで、重たいドラマも可能になったと見るべきだろう。
もっとも『イノセンス 冤罪弁護士』にもエンタメ要素は存在する。主人公の黒川拓弁護士(坂口健太郎)はコミュ症気味である。これは前に進むだけの明るいキャラクターよりも現代的である。真相にたどり着く時の閃きシーンは『99.9』の深山弁護士(松本潤)と似ている。
深山弁護士の完璧さよりも、黒川弁護士のようなコミュ症気味だけど有能の方がキャラクターとしては好きである。しかしながら、父親が冤罪被害者という深山弁護士と、反発しているとは言え、エリート検察官の家庭に育った黒川弁護士では背景の重さが違う。比較されることは俳優にとって酷だろう。
作中に登場する戦隊物ヒーローは、残業レッドや接待ピンクなどブラック企業を風刺している。社食イエローはオムライスばかりの社員食堂なのだろうか。
法律事務所に住んでいる点は『ブラックペアン』と重なる。『ブラックペアン』と重なる点では猫田看護師を演じた趣里が有能なパラリーガルを演じる。ここでも主人公を支えるが、黒川弁護士が火災の後始末をほっぽりだした点は怒っていた。
『イノセンス 冤罪弁護士』ではコメディが空回りしているところもある。黒川弁護士は同僚弁護士をイラつかせる。これは『99.9』と同じであるが、和倉楓弁護士(川口春奈)は主人公より能力がないのにキャンキャン叫ぶだけであり、ウザさしか感じない。『99.9』では深山弁護士にわざと相手を怒らせて楽しむようなところがあり、安心してみていられた。
和倉弁護士は役者が可哀想になるくらい、イメージが悪い。本当は前の勤務先でセクハラと戦い、上司から黒川弁護士の妨害を命じられた際に抵抗するなど骨のある設定がある。そこは今後活かせるだろうか。
『99.9』は法律事務所がバックアップしたが、『イノセンス 冤罪弁護士』は法律事務所の上層部が足を引っ張ろうとする。現実味は『イノセンス 冤罪弁護士』が上であるが、ドラマとして観る上では重苦しさがある。

『イノセンス 冤罪弁護士』第8話

『イノセンス 冤罪弁護士』第8話(2019年3月9日)は再審請求に取り組む。名張毒ぶどう酒事件が下敷きである。指宿林太郎検事(小市慢太郎)は法律事務所の所長を呼びつけて、最高裁が結論を出したものに再審請求することを非難する。しかし、そもそも再審である以上、最高裁の判断にNOを突きつけることである。それを脅しにする検事は制度を理解していない。

今回は非歴史的な日本社会の問題点が描かれる。世間は風化しても苦しんでいる人は苦しみ続けている。終わったことにして前に進もうとする日本人の悪い体質が出ている。日本社会は「お前が我慢すれば全て丸く収まる」と負担を特定人に押し付けがちである。

現実の名張毒ぶどう酒事件と同じく、司法制度としては救いのない結果になった。裁判所は前例主義の公務員感覚が濃厚で、前の判決を否定することを過度に恐れているのではないか。

世の中に裁判官個々の判断の誤りを訴えるしかないだろう。これまで個々の判決に対して不当判決であるとの批判や裁判所の組織への批判はなされてきた。しかし、裁判官個人の業績が批判の対象になることは乏しかった。制度批判の陰に隠れて、個々の責任者はヌクヌクしているという側面がある。

たとえば埼玉県北本市立北本中学校いじめ自殺裁判(平成19年(ワ)第2491号損害賠償請求事件)の東京地裁民事第31部判決は非常識と大きく批判された。同級生から「きもい」と悪口を言われ、下駄箱から靴を落とされ、「便器に顔をつけろ」と言われるなどの事実がありながら、判決は「一方的、継続的ではなく、自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」として自殺生徒遺族の訴えを棄却したためである。また、最高裁裏金訴訟の訴訟指揮も批判されている。しかし、北本いじめ裁判と最高裁裏金裁判の裁判官が重なることはあまり知られていない(舘内比佐志裁判長、後藤隆大裁判官)。

ドラマでは受刑者の人格が壊れる拘禁反応を取り上げる。日本は刑期が諸外国と比較して軽過ぎるとの声が強い。一方で受刑者の被る苦痛は地球で一、二を争うくらい上位である。拘束の度合いが桁違いである。

過剰拘束と侮辱が日本の監獄の特色である。不要な命令を繰り返し、受刑者を踏みつけて楽しむ。刑務所、少年院のどちらにも保護房と称する拷問がある。見張りの暴行も当然視されている。刑務所は移動のさいに手足を伸ばし、歩きかたまで命令する。罵声、怒鳴りは挨拶代わりである。海外では監獄にも最低限の道徳のようなものがあるが、日本にはない。見張りの優越感のためのペットが実態である。人質司法と並び、日本の人権後進国を示すものである。

AKB48元支配人の不適切Twitterが炎上

NGT48山口真帆さん暴行被害事件では山口さんの告発後、今村悦朗NGT48支配人(当時)は雲隠れし、説明責任を果たしていない。ところが、2019年3月に今村前支配人はAKB48の戸賀崎智信元支配人や 細井孝宏支配人と居酒屋で酒を飲んで談笑していた。戸賀崎支配人は飲み会の写真と共に「みんなぐたらない報道に惑わされないように(原文ママ)」とのTwitterを投稿した。これが無神経と批判されて炎上した。問題のTwitterは削除された。バカッター事件を笑えない。

AKB48を運営する株式会社AKSは2019年3月7日、今村悦朗氏の契約解除、細井孝宏氏の退任を発表した。発表は以下のように記載する。「NGT48に関する事案について第三者委員会にて調査中であるにも関わらず、立場ある人間が不適切な行動をしてしまったことを、会社として厳粛に受け止め、前NGT48劇場前支配人今村悦朗との契約を解除し、AKB48劇場支配人の細井孝宏氏の退任を発表いたします」

NGT48運営は事件に対し、コミュニケーション不足との的外れの反省の弁を出した。その運営関係者の飲みニュケーションで刺された。これはコミュニケーション至上主義に対する痛烈な皮肉になる。

そもそもAKBは地下アイドルから発展した。20世紀的な芸能界のスタイルとは異なるところが大きな魅力であった。その運営が不都合な事実を誤魔化す20世紀的な日本型組織であることを露呈したことは、21世紀のアイドルを応援していたファンには大きな失望である。20世紀的な日本型組織の悪癖を経ち、21世紀に相応しい組織が求められる。

この事件は真相を早期に説明して公表した方が損害は少ないという警察不祥事や企業不祥事と共通する事例です。簡単に隠蔽できると甘い考えで嘘に嘘を重ねて反発を強める展開は東急不動産だまし売り裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟)と重なります。インターネット上では東急リバブル・東急不動産に対する批判が急増し、炎上事件として報道されました(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威-「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁)。

https://www.hayariki.net/ngt48/

NGT48山口真帆さん暴行被害事件コミュニケーション不足は的外れ

NGT48山口真帆さんが暴行被害に遭った事件ではNGT48運営の不誠実さが目立つ。特に問題はNGT48運営がコミュニケーション不足を反省理由に挙げていることである。コミュニケーションは双方で成り立つ。コミュニケーション不足を問題とすると相手にも改善を求めるという責任転嫁ができてしまう。

また、コミュニケーション不足を原因とすると、コミュニケーション強化が対策になる。しかし、今回のような事態では、第一に優先すべきことは山口さんのケアである。運営が山口さんと直接コミュニケーションをとることは山口さんの負担になるものです。弁護士などの代理人を通じてでなければ話さないとなっても不思議ではない。

コミュニケーションがあろうとなかろうと暴行事件は問題である。その背後にNGT48関係者がいたならば不祥事である。コミュニケーションは無関係である。コミュニケーションで誤魔化すコミュニケーション至上主義は日本社会の悪癖である。

 

この事件は警察の対応も批判されている。埼玉県警の不祥事である桶川ストーカー殺人事件との共通性を指摘する声がある。

「桶川で起きた「ストーカー殺人事件」を持ち出すまでもなく、ストーカーに困って警察に相談したが、とりあってもらえず、無残に殺されてしまったケースはこれまでも多くあったではないか。」(元木昌彦「「NGT事件」なぜ秋元康は謝罪しないのか」プレジデントオンライン2019年1月22日)

私は桶川ストーカー殺人事件の書評でストーカー規制を強化すればよいというものではなく、半グレの見方をするような警察が問題と指摘した。この事件でも該当する。

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話(2019年3月2日)は「青梅のカサノバ」が登場する。紀州のドンファンが下敷きだろう。今回はイノセンスでもなければ、冤罪でもないというタイトルと異なる話となった。

黒川拓弁護士(坂口健太郎)は真実を追求することで冤罪を明らかにしてきた。これは『99.9 刑事専門弁護士』の深山大翔弁護士と同じである。黒川弁護士や深山弁護士の関心は専ら事実である。それによって見込み捜査で冤罪を作り上げる警察や検察から無罪を勝ち取った。

これに対して従来のステレオタイプでは、熱心な刑事事件の弁護人の関心は人権であった。「知りたいのは事実」と人権擁護が両立するとは限らない。『デスノート』のLや『相棒』の杉下右京のように違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにするキャラクターも事実重視である。捜査側ではなく、被疑者・被告人側で事実重視のヒーローを生み出したことは新しい。

今回は、「知りたいのは事実」と弁護活動が対立するパターンである。黒川真(草刈正雄)は「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と黒川弁護士を批判する。違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにしようとする発想を根本的に批判するためには、やはり正しい手続きや被疑者・被告人の防御権の思想が必要である。

ドラマは被告人が最後に優等生的な態度になり、無理やり物語をまとめた感がある。日本国憲法第38条第3項の「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」との関係はどうなるのだろうか。但し、情状弁護の中で青梅のカサノバの悪徳商法ぶりを明らかにすることになるので、その点では意味のある告白であった。

イノセンスでもなければ冤罪でもない話であったが、警察や検察の冤罪製造機は相変わらずである。警察の証言の獲得の仕方は誘導的であった。また、監視カメラが検察の主張を崩すために使われる。監視カメラの映像を弁護人が平等にアクセスできることが必要である。




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