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NGT48山口真帆さん暴行被害事件コミュニケーション不足は的外れ

NGT48山口真帆さんが暴行被害に遭った事件ではNGT48運営の不誠実さが目立つ。特に問題はNGT48運営がコミュニケーション不足を反省理由に挙げていることである。コミュニケーションは双方で成り立つ。コミュニケーション不足を問題とすると相手にも改善を求めるという責任転嫁ができてしまう。

また、コミュニケーション不足を原因とすると、コミュニケーション強化が対策になる。しかし、今回のような事態では、第一に優先すべきことは山口さんのケアである。運営が山口さんと直接コミュニケーションをとることは山口さんの負担になる。弁護士などの代理人を通じてでなければ話さないとなっても不思議ではない。

コミュニケーションがあろうとなかろうと暴行事件は問題である。その背後にNGT48関係者がいたならば不祥事である。コミュニケーションは無関係である。コミュニケーションで誤魔化すコミュニケーション至上主義は日本社会の悪癖である。

 

この事件は警察の対応も批判されている。埼玉県警の不祥事である桶川ストーカー殺人事件との共通性を指摘する声がある。

「桶川で起きた「ストーカー殺人事件」を持ち出すまでもなく、ストーカーに困って警察に相談したが、とりあってもらえず、無残に殺されてしまったケースはこれまでも多くあったではないか。」(元木昌彦「「NGT事件」なぜ秋元康は謝罪しないのか」プレジデントオンライン2019年1月22日)

私は桶川ストーカー殺人事件の書評でストーカー規制を強化すればよいというものではなく、半グレの見方をするような警察が問題と指摘した。この事件でも該当する。

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話

『イノセンス 冤罪弁護士』第7話(2019年3月2日)は「青梅のカサノバ」が登場する。紀州のドンファンが下敷きだろう。今回はイノセンスでもなければ、冤罪でもないというタイトルと異なる話となった。

黒川拓弁護士(坂口健太郎)は真実を追求することで冤罪を明らかにしてきた。これは『99.9 刑事専門弁護士』の深山大翔弁護士と同じである。黒川弁護士や深山弁護士の関心は専ら事実である。それによって見込み捜査で冤罪を作り上げる警察や検察から無罪を勝ち取った。

これに対して従来のステレオタイプでは、熱心な刑事事件の弁護人の関心は人権であった。「知りたいのは事実」と人権擁護が両立するとは限らない。『デスノート』のLや『相棒』の杉下右京のように違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにするキャラクターも事実重視である。捜査側ではなく、被疑者・被告人側で事実重視のヒーローを生み出したことは新しい。

今回は、「知りたいのは事実」と弁護活動が対立するパターンである。黒川真(草刈正雄)は「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と黒川弁護士を批判する。違法捜査など手段を選ばずに事実を明らかにしようとする発想を根本的に批判するためには、やはり正しい手続きや被疑者・被告人の防御権の思想が必要である。

ドラマは被告人が最後に優等生的な態度になり、無理やり物語をまとめた感がある。日本国憲法第38条第3項の「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」との関係はどうなるのだろうか。但し、情状弁護の中で青梅のカサノバの悪徳商法ぶりを明らかにすることになるので、その点では意味のある告白であった。

イノセンスでもなければ冤罪でもない話であったが、警察や検察の冤罪製造機は相変わらずである。警察の証言の獲得の仕方は誘導的であった。また、監視カメラが検察の主張を崩すために使われる。監視カメラの映像を弁護人が平等にアクセスできることが必要である。

『イノセンス 冤罪弁護士』第6話

『イノセンス 冤罪弁護士』第6話(2019年2月23日)は銃殺事件の弁護と子どもの誘拐事件が並行して進む。冤罪事件の解決というよりもエンタメ要素が強い。シリアス話も刑事ドラマ的な内容である。第1話の冒頭にあった誰でも人質司法の被害者になるという啓発色がなくなった。一般視聴者迎合の視聴率テコ入れだろうか。

それでも日本の刑事司法の問題の描写はある。検察官が弁護人に対し、情状酌量が無難と弁護方針を押し付けようとしている。これは越権であるが、この種の不透明なやり取りが存在することを示している。但し、多くの視聴者にとっては東京地方検察庁には指宿林太郎(小市慢太郎)検事しか存在しないのかという点が気になるところである。

穂香(趣里)の息子の晴斗は和倉楓弁護士(川口春奈)にプロポーズする。『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけのような四歳児である。黒川拓弁護士(坂口健太郎)はコミュ症気味のイメージがあったが、子どもにはコミュニケーション能力が高い。ベースにも造詣がある。

樽前裕也(須賀健太)は人間の屑である。須賀健太は『今日から俺は!!』ではヤンキー高校生であった。それが大人になったような存在である。冤罪被害者があらゆる意味で聖人君子ではなく、そうであっても冤罪は許されないというドラマの描き方は正当である。しかし、今回は、あまりにあからさまに屑過ぎて現実味が乏しい。実際の人間の屑は、もっと卑怯で狡猾なところがある。被害者と加害者を逆転させるような狡さを持っている。

また、親の財力で揉み消しをしながら、息子の悪事と人間性を露見させて終わっている。親の事業も悪徳商法であり、それも明らかになるという展開の方がドラマチックではないだろうか。別府所長は裕也の悪事が冤罪ではないとの理由で弁護活動を断るが、それは弁護士の存在意義として問題がある。

次回予告には「青梅のカサノバ」が出ていた。紀州のドンファンが下敷きか。黒川真(草刈正雄)は「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と批判する。『99.9 刑事専門弁護士』では真実を知ることが冤罪を明らかにすることであった。『99.9 刑事専門弁護士』よりも深い問題を突くのか注目される。




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