社会
林田 力 『東急不動産だまし売り裁判』著者

コインハイブCoinhive裁判で無罪判決

コインハイブCoinhive裁判で横浜地裁(本間敏広裁判長)は2019年3月27日に無罪を言い渡した。警察の暴走を裁判所が止めた形になった。略式裁判で有罪になった人々は冤罪被害者である。警察の強迫で泣き寝入りを余儀なくされた冤罪被害者の損害や名誉の回復は国の責任である。被害は広範囲に及び、深刻である。


冤罪は決して他人事ではない。冤罪によって今まで築き上げた多くのものを失ってしまう。それにもかかわらず、警察の捜査に違法性はないとされてしまう。今こそ日本人はこれ以上冤罪被害者に泣き寝入りさせることがないよう真剣に考えるべき時が来ている。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むだけ、頑張るだけの日本的発想は時代遅れである。


代理人の平野敬弁護士は以下のように指摘する。「不正指令電磁的記録に関する罪の要件は曖昧なため慎重な適用が求められるが、各地方警察は乱暴に摘発を進めており、今IT業界から大きな懸念が寄せられている」(「コインハイブ事件で無罪判決 弁護人「警察の暴走、食い止められることを願う」」弁護士ドットコム2019年3月27日)。


一方で判決が反意図性を認定した点は懸念する。「ネット上で次々に誕生する新技術には、一般のユーザーに認知されていない、気付かない所で作動するものが多い。他の新技術も反意図性が認められる懸念がある」(「仮想通貨 他人PCで「採掘」無罪」読売新聞夕刊2019年3月27日)


情報セキュリティー会社EGセキュアソリューションズの徳丸浩社長は以下のように指摘する。「コインハイブはデータを破壊するなどせず、ウイルスでないとの判断は妥当」(「無断採掘ウイルス認めず」読売新聞2019年3月28日)。


「ブラウザクラッシャー(通称:ブラクラ)にあたるとは言い難いジョークページを兵庫県警がブラクラだと認識していたり、モロさんの事件では「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」と神奈川県警の捜査員がすごむ音声が公開されるなど、警察の捜査手法への批判や「IT業界の萎縮を招きかねない」との声は少なくありません。」(「コインハイブ事件 横浜地裁、Webデザイナー男性の主張認め「無罪」判決」ねとらぼ2019年3月27日)


組織内での初動対応によってその後の被害が大きく変わってくる。多くの事例では警察の捜査に問題があっても、外部から指摘を受けるまで問題化することはない。自組織で自発的に行うべき見直しがなされていない。情報公開がなされず、実態を正確に把握できなければ、警察不祥事の対応も困難になる。風化はしない。むしろ問題は拡大する。

松橋事件の再審で無罪判決

松橋事件の再審で熊本地裁(溝国禎久裁判長)は2019年3月28日、殺人罪などで懲役13年が確定し服役した宮田浩喜さん(85)に無罪判決を言い渡した。再審決定では自白の重要部分が客観的事実と矛盾するとしていた。それを踏まえ、判決は確定判決が有罪の根拠とした自白の信用性を改めて否定した。検察側証拠の大半を採用しなかった。


犯人をでっち上げた警察や検察側の責任は重大である。冤罪の防止は刑事司法にとって尽きぬ問題である。自白強要の日本警察は人権を踏みにじることを容易く容認してしまう。海外の刑事小説やドラマでは警察の取り調べでは弁護士が同席し、刑事が脅しにかかると、その場で弁護士が制している。


冤罪の背景には検察側の証拠隠しがある。宮田さんの自白には「巻き付け布を犯行後に燃やした」とある。ところが、その巻き付け布は1997年に弁護団が検察に求めた証拠開示で見つかった。虚偽の自白であったことが明らかになった(「松橋事件、再審制度に一石 「隠された証拠」が鍵に 28日に地裁判決」西日本新聞2019年3月27日)。


警察や検察が都合の良い証拠のみを提出し、自己に不利益な証拠を提示しない問題はテレビドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』でも取り上げられた。隠蔽する手法は巧妙化している。利益となる事実を説明し、不利益となる事実を説明しない点で東急不動産消費者契約法違反訴訟とも共通する(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。俯瞰的な視点で情報を組み合わせ、連携して判断するためには情報公開の徹底が不可欠である。消費者契約法が消費者にとって「使って当たり前」の存在になったように、被疑者・被告人の人権保障も当たり前にしなければならない。


宮田さんの次男賢浩さん(60)は記者会見で以下のように語る。「警察や検察が責任を問われない今の司法制度を変えない限り冤罪はなくならない」(「「無罪ですよ、無罪…」宮田さんに何度も何度も 松橋事件再審無罪確定」毎日新聞2019年3月28日)


冤罪被害者達は冤罪を招いた捜査当局を批判し、謝罪をしなかった熊本地裁の対応にも不快感を示した(「「謝罪すべきだ」冤罪被害者、地裁対応に不快感 松橋事件再審無罪」西日本新聞2019年3月29日)。布川事件の冤罪被害者の桜井昌司さんは以下のように話す。「同じような仕組みでなぜ、冤罪が繰り返されるのか。そのうえ捜査機関は誰も責任をとらない。取り調べを弁護士立ち会いでするなど、可視化が必要だ」(「「これほど時間かかるとは」 再審無罪判決、司法へ怒り」朝日新聞2019年3月28日)

神奈川県警巡査部長が埼京線痴漢で書類送検

神奈川県警の川崎臨港署地域課の男性巡査部長(40)が埼京線で痴漢したとして2019年3月22日に東京都迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検された。巡査部長は2019年1月22日午前9時15分頃、東京都豊島区の池袋駅に停車中の埼京線車内で、20代のアルバイト女性の尻を衣服の上から触ったとされる。


巡査部長は「好みの女性で触りたかった。1年半ほど前から月1回くらい痴漢をしていた。インターネットなどで埼京線は混雑が激しく、痴漢が多いと知り、自分でもできると思った」などと話しているという(「月に1回痴漢「埼京線ならできると」 神奈川県警巡査部長処分」神奈川新聞2019年3月22日)。巡査部長はこの日は休日で、早朝から赤羽駅で、好みの女性を物色していたとみられる。


性犯罪の警察不祥事は他県で実施することがトレンドなのか。埼玉県警蕨警察署の巡査部長は2018年5月27日に東京都のプールで盗撮したとして、東京都迷惑防止条例違反容疑で逮捕された。岐阜県警では加茂署の巡査長が大阪市浪速区のプールで女性の体を触ったとして、2018年9月2日に府迷惑防止条例違反容疑で大阪府警浪速署に逮捕された。


神奈川県警は3月22日に減給100分の10(6カ月)の懲戒処分にした。巡査部長は同日付で依願退職した。警察官ならば性犯罪でも退職金が出る依願退職。警察ほど性犯罪者に優しい組織はないのではないか。警察組織の処分は身内に甘いイメージがある。処分は懲戒免職でも良かったのではないか。依願退職で退職金が払われることは、納税者として不条理である。タックスペイヤーがタックスイーターに搾取される。


Web小説では依願退職は野放しも同然とのセリフがある。「依願退職がせいぜいでしょう。野放しも同然です」(甘蜜柑『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)』第121話「エリヤ・フィリップスは頂上を目指す 804年4月~5月下旬 惑星シャンプール」)

3月15日はジャクソン大統領の誕生日

アメリカ合衆国第七代大統領のアンドリュー・ジャクソンAndrew Jacksonは1767年3月15日生まれです。ジャクソン大統領は評価が分かれますが、彼の言葉に「勇敢な一人の人が多数派を作り出す」(One man with courage makes a majority.)があります。これは東急不動産だまし売り裁判を進める上で励みになりました。

東急不動産(販売代理:東急リバブル)は隣地建て替えという不利益事実を隠して新築分譲マンションをだまし売りしました。隣地建て替えで日照、通風、眺望がなくなりますが、その事実を隠してマンションをだまし売りしました。

引渡し後に真相を知った私は消費者契約法の不利益事実の不告知でマンション売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻しました(平成17年(ワ)第3018号)。これは消費者契約法の不利益事実の不告知をマンション売買契約に適用したリーディングケースになりました(今西康人「マンション販売における不動産業者の告知義務」安永正昭、鎌田薫、山野目章夫編『不動産取引判例百選第3版』有斐閣、2008年、31頁)。

契約時の説明と話が違うならば契約を白紙にすることが当然ですが、これまでは新築分譲マンションの販売方法に問題があっても契約を白紙にすることは困難でした。それが悪徳不動産業者の売ったら売りっぱなしを助長していました。一人の行動が消費者契約法による売買契約の取り消しを作りました。

中野相続裁判さいたま地裁第6回口頭弁論

中野相続裁判さいたま地裁(平成30年(ワ)第552号)の第6回口頭弁論が開かれます。長男夫婦が、母親の治療を拒否する行為が「著しい非行」に相当する又は準じる行為にあたると長女は主張します。傍聴や取材を歓迎します。
日時:平成31年4月5日(金)11時
場所:さいたま地方裁判所C棟105法廷
https://www.hayariki.net/inherit/
本裁判は母親の治療を拒否した長男夫婦から訴えられた共有物分割請求訴訟です。長女には「遺留分がありません」と説明した長男夫婦の代理人弁護士の法律に基づかない杜撰な交渉によって泥沼化した中野相続裁判の第2幕です。
長男が母親の経管栄養の流入速度を速め、延命につながる治療を拒否したという高齢者医療のあり方にも関係する社会的意義のある裁判です。高齢者の権利の危うさを訴えた林田医療裁判に引き続き家族とは、兄妹とは、を考えさせられる裁判です。林田医療裁判は医療過誤原告の会の会報第40号『悲しみにくじけないで』(2018年7月1日)に「母の望まぬ死」と題して掲載されました。
大口病院で入院患者を殺害したとして、元看護師が逮捕された事件では「自分が勤務の時に患者が亡くなると家族への説明が面倒だった」が動機とされます(「「家族への説明が面倒」 逮捕された元看護師の女」毎日新聞2018年7月8日)。林田医療裁判では患者に夜間だけ酸素吸入させました。病院の控訴審準備書面は「家族が見守る中で自然死を迎えることができるように、夜間呼吸中枢が過たぬ程度(原文ママ)の酸素を供給する管理を行った」と主張しました(4頁)。
是非お時間を頂きまして傍聴・取材をお願い致します。皆様の傍聴ご支援を戴き、裁判所に対して公共性が高いことを強く訴えかけさせていただければ、と考えております。温かいご支援を賜りますよう宜しくお願い致します。TwitterやFacebook、ブログ、ホームページなどへの拡散お願い致します。
皆様の暖かい御協力と強力なエネルギーに励まされています。心から感謝いたします。連帯の輪を広め、力強く踏み出していることに誠に心強く、限りない感謝の念で一杯です。引き続きご支援をお願いいたします。

住所:埼玉県さいたま市浦和区高砂3-16-45(埼玉県庁の近くです)
JR東日本の浦和駅西口(改札中央一つ出て右側が西口)から県庁通りをまっすぐ行くと左側です。浦和駅西口から左手交番の前を通り過ぎて歩道にわたり、左側の歩道を道なりに歩く。左側の歩道の三菱UFJ信託銀行の前を通ります。右側にコルソがあります。県庁通り左の歩道をまっすぐ歩きます。徒歩15分。
バスは浦和駅西口から国際興業バス「志木駅東口・西浦和車庫・蕨駅西口(北町4経由)に乗り、埼玉会館を経て、県庁前で降ります。
武蔵浦和駅からはタクシーで700円台です。中浦和駅からは徒歩20分位です。
さいたま地方裁判所は家庭裁判所や簡易裁判所と同一敷地にあり、建物はA棟、B棟、C棟、D棟とあります。C棟は奥にあります。B棟から入り、2階に上がって渡り廊下を通ってC棟に行き、1階に降ります。
http://www.courts.go.jp/saitama/about/syozai/saitamamain/index.html

中野相続裁判さいたま地裁

中野相続裁判は平成19年9月8日に亡くなった母親(東京都中野区)の生前贈与や遺贈が無効であるとして長女が長男と配偶者を訴えた訴訟です(平成20年(ワ)第23964号 土地共有持分確認等請求事件)。中野相続裁判は母が亡くなった一年後に始まりました。この裁判によって長男が入院中の母親の経鼻経管栄養の流入速度を勝手に速めたことや治療を拒否したことが明らかになり、林田医療裁判につながりました。
中野相続裁判さいたま地裁事件は、長男夫婦が逆に長女に対して平成30年1月30日付で母の遺産(共有物)の分割を求めて提訴したものです。長女は長男夫婦に相続人や受遺者を主張する資格があるか訴えます。
長男は「時間がかかりすぎる。リハビリに行くのがおそくなる」との理由から入院中の母親の経鼻経管栄養を速めました。これは健康を害し得る行為です。林田医療裁判の東京地裁平成28年11月17日判決は長男の行為が違法と断じました(平成26年(ワ)第25447号 損害賠償請求事件、17頁)。
***
経管栄養は医療行為であり、嘔気、嘔吐、腹部膨満や腹痛などの副作用や誤嚥性肺炎の危険もあるため、医師の指示に基づいて行う必要があり、病院では看護師が行うこととされており、患者の家族が行うのは自宅での例外的な場合に限られているのであるから、患者の家族であっても、医師の指示に基づかずに患者の経鼻経管栄養の注入速度を変更することは違法であるといわざるを得ない。
したがって、被告長男が8月15日に医師の許可なく母親の経鼻経管栄養の注入速度を変更することは違法であるといわざるを得ない。
***
長男の代理人弁護士は「長男が母親の点滴を早めたなどの主張をしておりますが、それは点滴ではなく流動食であり、何ら問題ないものです」と開き直りました。しかし、経管栄養は医療行為であり、ミスをすれば患者を死に至らしめる危険のあるものです。医者が定めた流入速度を「時間がかかりすぎる」という理由で勝手に速めて良いものではありません。流入速度を勝手に速めることを問題ないとする長男の代理人の主張は、中世を通じて科学を押さえ込んでいた風潮に非常によく似ています。
長男が経管栄養の流入速度を速めた後に母親は嘔吐して誤嚥性肺炎になりました。嘔吐が速めた直後でないことは流入速度を速めたことが問題ないことを意味しません。人体には遅れて影響が出ることがあります。
以下は小説における医師の台詞です。「明日あたりに具合が悪くなった気がしても、慌てないでちょうだいね。遅延型反応というものだから」(ジェームズ・ロバートソン著、田内志文訳『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』東京創元社、336頁)
さらに長男は具合の悪くなった母親の延命につながる全ての治療を拒否しました。医師記録の平成19年8月20日に「family (son)は延命につながる治療を全て拒否。現在Div.(注:点滴Drip Infusion into Vein)で維持しているのも好ましく思っていないようである」と、被告(son=息子)が母親の生命維持を好ましく思っていないと指摘しています。

埼玉県警や高知県警で個人情報不正取得

埼玉県警や高知県警で警察官が個人情報を不正取得した。埼玉県警岩槻署の男性警部補は2010年2月から2014年6月にかけ、「捜査に必要」と偽り、知人女性の個人情報を照会するための書類を携帯電話会社などに提出した。公用端末での不正照会を含め、計10人66件の個人情報を不正取得した。警察組織の中に不心得者がいるというレベルではない。むしろ警察官の職権を濫用した計画的な不正取得である。
問題は個人情報の不正取得が埼玉県警のレベルでは是正されないことである。不正取得の発覚は警部補が2014年11月に都内で酒気帯び運転による物損事故を起こしたことがきっかけである。事故の際に車内から不正照会した書類が発見された。埼玉県警は2015年1月23日付で虚偽有印公文書作成・同行使容疑でさいたま地検に書類送検した。
警察官の職権を濫用した個人情報の不正取得は更なる犯罪を生む。埼玉県警川口署地域課の巡査は公用端末で不正に取得した女性の住宅に侵入したとして、住居侵入の現行犯で逮捕された。現金約3万円などを盗んだとして同罪と窃盗罪で2015年1月2日に起訴された(「個人情報不正照会、住居侵入、捜査書類偽造… 埼玉県警、2人免職、1人停職」産経新聞2015年1月24日)。恥も外聞も知らないのかと嫌らしさにゾッと総毛立つ。

山形県警では巡査部長が2017年7月から2018年2月の間、知人女性の犯罪歴などの個人情報を公務目的外で2回、照会したとして、本部長注意とした。これは毎日新聞の情報公開請求で明らかになった(日高七海「<警察学校>山形県警の警部補と巡査がカンニングで処分」毎日新聞2018年10月6日)。
情報公開請求では警察学校で行われた試験で山形県警の警部補と巡査がカンニングをし、本部長訓戒としていたことも判明した。記事ではカンニングをメインにしている。情けなさではカンニングが勝る。そのために記事の中心の内容とし、見出しにもしたと思われるが、市民への悪影響では個人情報の目的外照会が悪質である。

高知県警の30代の男性巡査長は、警察内部のシステムを不正に用いて20代女性の住所を調べ、女性宅への嫌がらせやストーカー行為をしていた。県警は2019年2月15日付で巡査長を器物損壊容疑で高知地検に書類送検し、懲戒処分(減給6カ月)に。巡査長は容疑を認め、同日に依願退職した。
送検容疑は以下である。2018年8月11日と同19日のいずれも午前2時頃、女性の住む集合住宅の窓ガラスに石を投げて割った。同年12月29日午前3時頃、女性宅の玄関ドアの鍵穴とのぞき穴に接着剤を流し入れて壊した。
県警監察課によると、巡査長は2015年12月、高知市内の飲食店で勤務していた女性と知り合い、好意を抱いた。聞き出した家族の車の情報などを警察内部のシステムで不正に照会し、住所を調査。女性宅への嫌がらせに加え、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で繰り返しメッセージを送るなどした。
県警は公表しなかった理由について「システムの使用は勤務中の行為だが、私的に調べたことで公務ではない」とする(松原由佳「警察システムを不正利用しストーカーも 高知県警巡査長を書類送検」毎日新聞2019年3月5日)。ここに隠蔽体質がある。警察のシステムが私的に使われたことは、むしろ問題である。古来より、貪官汚吏の駆除が政治改革の第一である。現代日本では警察組織が先ず対象になるだろう。

和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て

シンポジウム「和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て」が2018年11月18日(日)、専修大学神田校舎で開催された。患者を置き去りにした医療の実態が浮かび上がった。林田医療裁判と重なる問題である。私は質疑応答でキーパーソンについて質問し、フリーライターの守田憲二氏は家族の総意が必要と回答した。キーパーソンは連絡窓口に過ぎず、キーパーソンに独断で治療方針を判断する権限を与えたものではないことになる。
質問「病院の実務だとキーパーソンというのを定めて、キーパーソンと病院だけで決めてしまうことが往々にしてあります。病院にとって、臓器移植をやりたいとか無用な治療をやりたくないとか、そういう方向に迎合するような人をキーパーソンとして認めて、その人の意見しか聞かないで同意を得たという話に進むと思うのですが、それに対して家族はどう対抗できるでしょうか」
回答「お答えは、家族の総意をもってやらなければいけないということです」(市民シンポジウム講演録「和田心臓移植から50年 加速されるいのちの切り捨て」41頁)

このシンポジウムは臓器移植法を問い直す市民ネットワーク、日本消費者連盟、DNA問題研究会、バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる、脳損傷による遷延性意識障がい者と家族の会「わかば」が共催した。3名が講演した。
小松美彦「和田移植とその歴史的構造」では和田心臓移植の問題として、自発呼吸も心音もあるのに絶望的と判断され、生きているうちに心臓を摘出された蓋然性が高いことと指摘する。心臓移植は、それ自体是非が問われるが、現実の和田心臓移植は心臓移植の進め方としても問題がある。
ここに現実の医療問題を追及する場合の難しさがあると感じた。「心臓移植は許されない」と「心臓移植の要件や手続きから逸脱している」という二つの方向からの批判が成り立つ。これら二つの論点をそれぞれ独立して吟味すれば良いが、ごっちゃにされがちである。追及される側は意図的にごっちゃにして、批判側が論理矛盾しているように見せて責任逃れする。この克服が大きな課題である。
「和田移植とその歴史的構造」は、和田心臓移植は七三一部隊や九州大学医学部生体解剖事件とつながっているとも指摘する。この種の指摘は珍しくない。一方で「和田移植とその歴史的構造」は戦争に帰してはならないとも主張する。全ては医療・医学の構造的問題であり、人間の命と体への権力問題である。患者は実験材料であった伝統が医学にある。
現代医療の闇を七三一部隊などの延長線上に位置付けることは、安易に過去を水に流す非歴史的な日本では重要な視点である。しかし、そのような論調は戦争が悪いで終わってしまいがちである。「和田移植とその歴史的構造」の視点は新鮮である。
児玉真美「グローバルに進むいのちの切り捨て」は「死ぬ権利」論と「無益な治療」論が両輪になって命の選別と切り捨てを加速していると主張する。
「死ぬ権利」論の恐ろしいところは、それがデフォルトになってしまうことと感じた。もともと「死ぬ権利」は自己決定権が根拠になっている。それならば生きたい人には生きる自己決定権を尊重することが相互主義である。
もっと恐ろしいものは「無益な治療」論である。患者や家族が望んでいても、治療の一方的な停止や差し控えの決定権を問答無用で認める論拠になっている。日本では、この「無益な治療」論による医療サイドの押し付けが深刻である。死ぬことだけ自己決定権を持ち出すことは片寄っている。結局、日本は昔から集団主義の村社会であり、個人の自由を認めていないだけである。本当の意味での自己決定権が対抗する拠り所になるのではないか。
守田憲二「脳死と判定された人は生きている」では、基準に基づかない粗雑な脳死判定がなされていると指摘する。脳死判定を誤る原因として薬物の影響がある。麻酔や鎮痛剤は脳神経の機能を低下させて脳死と似た状態をもたらす。脳死判定から長時間生存し、循環や呼吸、内分泌機能が良好な状態に保たれていれば、薬物が排泄され、脳死判定基準を満たさなくなる患者が増えるとする。

岐阜県警の人事異動写真に「死ね」「呪」の文字

岐阜県警が春の人事異動の資料として報道機関に配布した顔写真データの一部に、「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「人事異動の顔写真に「死ね」の文字」共同通信2019年2月28日)。県警は職員による悪質ないたずらの可能性もあるとみて調べる。

岐阜県警察本部は2019年2月15日、警部以上の幹部人事を発表し、顔写真のデータを報道各社にメールで送付した。このうち1人の白いワイシャツの部分に白い文字で「死ね」や「呪」という文字が書き込まれていた(「異動顔写真データに「死ね」の文字 岐阜県警が報道各社に配信」NHK 2019年2月28日)。警務課によると、文字は課内で保存する元データにも残っていたという(「幹部の写真に「死ね」「呪」の文字 岐阜県警が報道提供」朝日新聞2019年2月28日)。

警察組織のパワハラ体質の深さを感じる。神奈川県警では拳銃自殺した巡査の遺族が「パワハラが自殺の原因」として損害賠償請求訴訟を提訴した(「<巡査自殺>「パワハラ原因」遺族が損賠提訴 横浜地裁」毎日新聞2018年3月13日)。埼玉県警機動隊「水難救助隊」の巡査が潜水「訓練」中に溺死した事件もパワハラで殺されたと批判されている(三宅勝久「「息子は警察に殺された」埼玉県警水難救助部隊の“殺人訓練”、息継ぎさせず繰り返し沈め溺死」MyNewsJapan 2015年8月7日)。

パワハラで最も始末が悪いパターンは加害の自覚がないものである。パワハラを批判されても「激励するため」「はっぱをかけるため」と正当化する。反省して態度を改めることができない。民間企業では整備されつつあるパワハラを告発する場がないから、このような形になるのだろう。第三者機関が必要である。

Coinhive刑事起訴に批判

Coinhive(コインハイブ)を不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で刑事起訴することが批判されている。CoinhiveはWebサイト閲覧者のパソコンの処理能力を用いて仮想通貨マイニングを行うプログラムである。

このCoinhiveをサイトに設置した男性は2018年2月に神奈川県警から家宅捜索を受け、3月末に不正指令電磁的記録に関する罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)で罰金10万円の略式命令を受けた。男性は不服として裁判を請求した。初公判は2019年1月9日に横浜地裁で開かれた。

弁護側は、コインハイブは反意図性・不正性を満たさないため不正指令電子的記録(コンピュータ・ウイルス)には当たらないとして無罪を主張する(NT「Coinhive(コインハイブ)事件で初公判、原告は「ウィルスではない」と無罪を主張」CRYPTO TIMES 2019年1月16日)。現実にWebサイトを開いた途端に勝手に動画広告を流すページは珍しくない。Coinhiveの摘発は多くの人々から疑問や不安の声が寄せられている。国民にとって最も重い制裁手段となる刑事罰の重みを考えていない。

検察側は「常識に照らして閲覧者の意図に反している」と主張する(「コインハイブ事件、男性に罰金10万円を求刑 弁護側は無罪主張」弁護士ドットコム2019年2月18日)。しかし、検察の「常識」が恣意的である。ポップアップ広告などJavaScriptによるPCのリソースを消費する広告はいくらでもある。結局のところ、警察や検察が違法と考えるから違法であるという理屈にしかならない。

男性は以下のように指摘する。「警察の人からは「事前に許可(もしくは予感させること)なく他人のPCを動作させたらアウト」というような説明を受けたのですが、解釈がめちゃくちゃアバウトで「不正な指令」についてまるで考慮されていないことがわかると思います。これだとアドセンスどころかアナリティクスやオプティマイズ、世の中のいろいろなJSがアウトですし、予感というのもリテラシーによって大いに幅があります」(「仮想通貨マイニング(Coinhive)で家宅捜索を受けた話」doocts 2019年1月7日)

略式命令を受けたということは、調書が作られたことになるが、恫喝的な取り調べがあったためである。家宅捜索を受けた男性の報告では乱暴な言葉ばかり使う刑事が登場する。何ら誤魔化すことなく自分達の言わんとすることを大声ではっきりと述べることのできる、ほとんど唯一の言葉だからだろう。これは人間の人間に対する非人間性の問題である。調書が警察官の作文であることは科学的見地から見て明白である。長時間の取り調べは意識レベルを低下させて尋問への抵抗力を奪う目的があり、任意性を評価できない。

弁護人の平野敬弁護士は以下のように指摘する。「言葉遣いの乱暴さも問題ですが、「裁判所が(捜索)令状を出しているんだから違法に決まっている」「被疑者は弁解せず反省しなければならない」という思考が警官の口から自然と出てくる点に恐ろしさを感じます。推定無罪の原則を真っ向から否定しているわけですから。「新婚さんなんだろ」という、反抗すれば家族に迷惑が掛かるぞと暗示するような言葉には背筋が凍る思いです。」(「「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」 コインハイブ事件、神奈川県警がすごむ取り調べ音声を入手」ねとらぼ2019年2月16日)
https://doocts.com/3403




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