『イノセンス 冤罪弁護士』第8話

『イノセンス 冤罪弁護士』第8話(2019年3月9日)は再審請求に取り組む。名張毒ぶどう酒事件が下敷きである。指宿林太郎検事(小市慢太郎)は法律事務所の所長を呼びつけて、最高裁が結論を出したものに再審請求することを非難する。しかし、そもそも再審である以上、最高裁の判断にNOを突きつけることである。それを脅しにする検事は制度を理解していない。

今回は非歴史的な日本社会の問題点が描かれる。世間は風化しても苦しんでいる人は苦しみ続けている。終わったことにして前に進もうとする日本人の悪い体質が出ている。日本社会は「お前が我慢すれば全て丸く収まる」と負担を特定人に押し付けがちである。

現実の名張毒ぶどう酒事件と同じく、司法制度としては救いのない結果になった。裁判所は前例主義の公務員感覚が濃厚で、前の判決を否定することを過度に恐れているのではないか。

世の中に裁判官個々の判断の誤りを訴えるしかないだろう。これまで個々の判決に対して不当判決であるとの批判や裁判所の組織への批判はなされてきた。しかし、裁判官個人の業績が批判の対象になることは乏しかった。制度批判の陰に隠れて、個々の責任者はヌクヌクしているという側面がある。

たとえば埼玉県北本市立北本中学校いじめ自殺裁判(平成19年(ワ)第2491号損害賠償請求事件)の東京地裁民事第31部判決は非常識と大きく批判された。同級生から「きもい」と悪口を言われ、下駄箱から靴を落とされ、「便器に顔をつけろ」と言われるなどの事実がありながら、判決は「一方的、継続的ではなく、自殺の原因になるようないじめがあったとは認められない」として自殺生徒遺族の訴えを棄却したためである。また、最高裁裏金訴訟の訴訟指揮も批判されている。しかし、北本いじめ裁判と最高裁裏金裁判の裁判官が重なることはあまり知られていない(舘内比佐志裁判長、後藤隆大裁判官)。

ドラマでは受刑者の人格が壊れる拘禁反応を取り上げる。日本は刑期が諸外国と比較して軽過ぎるとの声が強い。一方で受刑者の被る苦痛は地球で一、二を争うくらい上位である。拘束の度合いが桁違いである。

過剰拘束と侮辱が日本の監獄の特色である。不要な命令を繰り返し、受刑者を踏みつけて楽しむ。刑務所、少年院のどちらにも保護房と称する拷問がある。見張りの暴行も当然視されている。刑務所は移動のさいに手足を伸ばし、歩きかたまで命令する。罵声、怒鳴りは挨拶代わりである。海外では監獄にも最低限の道徳のようなものがあるが、日本にはない。見張りの優越感のためのペットが実態である。人質司法と並び、日本の人権後進国を示すものである。



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