岡山の警察学校教官がナイフで生徒を刺す
岡山県警察学校(岡山市北区玉柏)で2018年12月、教官の男性警部補が初任科生(巡査)の男性の胸を本物のサバイバルナイフで刺して負傷させた。2018年12月10日に凶器を持った犯人を1対1で取り押さえる訓練を実施した際、警部補が模造刀を持って犯人役を担当。説得を受けて模造刀を手放した後にもみ合いになり、隠し持っていた本物のサバイバルナイフを出して初任科生の胸を2回刺し、うち1回は肺の一部に達した(「岡山の警察学校教官、訓練中にナイフで巡査刺す 「緊張感出すために本物を」」毎日新聞2019年7月17日)。
警部補は「刺すつもりはなく、寸前で止める予定だった」「けがをさせるつもりはなかった」などと説明したとされる。しかし、保身の言い訳であり、説得力がない。何しろ2回も刺しており、肺にまで達している。明確な殺意のある事件として扱うべきではないか。訓練に名を借りたパワハラ、拷問ではないか。埼玉県警でも訓練で巡査が溺死する事件が起きている。
とてもではないが警察発表通りには受け取ることはできない。警部補は「緊張感を出すために本物のナイフを出した」と言うが、幼稚である。このような馬鹿げた動機で刺される方は、たまったものではない。そもそも訓練の内容を個人の思い付きで変えて良いものではない。警察組織にはガバナンスがないのか。民間感覚が必要である。
「切れないように防護措置をした本物のナイフ」との報道がある(「格闘訓練で警察官刺される 犯人役が本物の刃物」岡山放送2019年7月17日)。この「切れないように」も意味不明である。現実に2回も刺されている。
初任科生は岡山市内の病院に救急搬送され、入院した。その後、岡山西署に被害届を提出し、1月に退職した。警察は被害者を退職させて蓋をしようとしたのではないか。6月には県を相手取って慰謝料など550万円を求めて岡山地裁に提訴した。
警部補は2月に所属長訓戒処分を受けた(「警察学校教官が巡査刺す、岡山 訓練中、誤ってナイフで」共同通信2019年7月17日)。岡山区検は3月に警部補を略式起訴した。岡山簡裁は4月に業務上過失傷害罪で罰金50万円の略式命令を出し、罰金刑が確定した。
ところが、警部補は県警に在籍し続けている(「岡山県警察学校教官が初任科生刺す 犯人対峙の訓練中、簡裁が罰金命令」山陽新聞デジタル2019年7月17日)。刺された巡査が退職し、刺した警部補が在職していることは矛盾である。人が刺されているのに誰も責任を取っていない。
岡山県警は、この事実を「発表する対象の事案ではない」として公表しなかった。警察学校で人が刺されているのに岡山県警は「発表する対象の事案ではない」という感覚なのか。都合の悪い事実は「問題ない」で蓋をして片付けてしまう。危機管理意識が低い。岡山県警に治安を維持する資格はない。警察の体質からは嫌な臭いしかしない。
埼玉県所沢市の中2殺人事件では仲良しグループに見える集団の同質いじめの危険が明らかになった。長時間一緒にいるために、ぶつけるところもない(「《埼玉中2殺傷事件》仲良しグループに潜む “闇いじめ” の実態」週刊女性PRIME 2019年7月17日)。警察組織にも同質いじめの弊害があるだろう。