埼玉県警巡査が遺族から金をだまし取る

埼玉県警の警察官が警察官の職務を悪用して遺族から金をだまし取ろうとする事件が相次いで起きている。川越署刑事課の巡査(25)(川越市中台元町)は女性から現金をだまし取ろうとしたとして、2019年4月4日に詐欺未遂容疑で逮捕された。巡査は費用がかかるとの電話をしたことは認める一方、だまし取ろうとしたことは一部否認するなど、曖昧な供述をしている。


逮捕容疑は、病死した男性の姉の女性(69)に2019年3月27日から31日に電話して、以下のような嘘を言って現金を騙し取ろうとした。
「(遺体の搬出で)レッカー車が来たので四十万~五十万円かかる。お金は私が預かってもいい」(「川越署員、詐欺未遂容疑 「遺体搬出に費用」遺族にうそ」東京新聞2019年4月5日)
「部屋の清掃などにかかる費用として、40万~50万円を民間会社に支払う必要があり、自分が預かる」(「詐欺未遂容疑で巡査を逮捕=職務利用し「現金預かる」-埼玉県警」時事通信2019年4月4日)


巡査は2016年9月に県警察学校を卒業して川越署に配属され、2018年9月から刑事課強行犯係。2019年2月下旬に自宅で亡くなっているのが見つかった男性の死因調査に携わっていた。女性は2月下旬に川越市に住む弟が死亡したと連絡を受け、3月26日に遺体の引き渡しを受けた。この際の担当者が巡査で、同月27日から31日までに複数回電話があり、現金を預かると話したという。


埼玉県警では死体検案名目で遺族から金をだまし取る事件も起きた。草加署刑事課巡査(22)(埼玉県越谷市袋山)は、急死した男性の遺族から約82万円をだまし取るなどしたとして、2018年10月19日に詐欺と詐欺未遂の疑いで逮捕された。


巡査は9月26日、通報で駆け付けた男性宅で、長女との会話の中から病死した男性に多額の預金があることを知った。これが犯罪の出発点になっており、警察官に個人情報を教えることは危険である。翌27日に草加署内から電話で「82万円かかります」と嘘をついて、長女に現金を要求し、同日午後に同署1階ロビーで、封筒に入った現金を受け取った。警察署内で詐欺が行われたことになる。


さらに10月18日、長女宅に電話し「200万円足りません」などと伝え、現金をだまし取ろうとした疑い(「急死遺族から警官82万詐取「ゲームに使った」」読売新聞2018年10月19日)。これまでも何度も繰り返している犯罪ではないか。それで大胆になって常識外の高額を請求するようになったのではないか。


死体検案書は医師から交付を受ける。警察が死因の確認などのために遺族らに任意で提出を求めることはあるが、費用がかかることはない(「「死体検案書提出に現金必要」とうそ、埼玉県警巡査を詐欺容疑で逮捕」TBS 2018年10月19日)。


さいたま地検は、草加警察署の22歳の巡査を詐欺と詐欺未遂の罪で起訴した(「詐欺罪で草加署巡査を起訴」テレビ埼玉2018年11月9日)。警察不祥事では理由を開示しない不起訴という身内に甘い処分がなされる傾向がある。たとえば佐賀地検は2018年11月2日、女子中学生の体を触ったとされる佐賀県警鹿島署の男性巡査(依願退職)を不起訴処分とした。これに対して、この事件は起訴しない訳にはいかなかったか。


2019年2月に懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けた。警察官の犯罪は一般人より明らかに悪質である。警察を称して相手を油断させられる。捜査の仕方を分かっているために証拠隠滅もしやすい。通常より厳罰にすることが公正である。


川越署の事件も草加署の事件も埼玉県警の警察官による特殊詐欺である。埼玉県警の刑事自ら率先して特殊詐欺で捕まるとは優秀と評すべきか。埼玉県警に振り込め詐欺を注意喚起する資格はない。埼玉は古くは「さきたま」と称した。埼玉県警察よりも、詐欺玉県警察が似合っている。警察は一般的なオレオレ詐欺への注意を呼びかけるよりも、警察官による不当な金銭請求への注意を呼びかけるべきだろう。現実に金融機関や電気・ガスの民間企業は、その種の注意喚起をしている。中々捕まらない特殊詐欺の黒幕と警察は癒着しているとの主張に説得力を与える。桶川ストーカー殺人事件に続く埼玉県警の警察不祥事である。


警察官の立場を悪用した遺族への詐欺は多くの人の美的センスから鑑みると醜悪であり、吐き気すら覚える。家族の急死で悲嘆や憔悴している遺族につけこむ悪質な犯罪である。親しい人が亡くなって焦燥する遺族を警察官が食い物にした。極めて悪質であり、人間として失格である。警察官の地位を利用した詐欺であり、職権濫用でもある。警察官が市民を下に見ているから、このような事件が起きる。巡査の心理状態はオレオレ詐欺の犯罪者と同じだろう。


警察は絶対と考えている高齢者はだまされやすい危険がある。川越署の詐欺事件は女性が葬儀会社に支払い済みであり、不審に思って葬儀会社に問い合わせ、葬儀会社が川越署に問い合わせて発覚した。草加署の詐欺事件は長女の親族が話を聞いて不審に思ったことから発覚した(「遺族から82万円詐取か、警官逮捕 スマホゲームで借金」朝日新聞2018年10月19日)。警察とのやり取りは多くの人と共有し、可能ならば衆人環視の中で進めることが好ましい。


これらの事件だけかという問題がある。これまでも警察官の立場を利用して金を詐取するビジネスをしていたのではないか。そこは厳しく追及する必要がある。深刻な問題は、個人の独走を許してしまう警察の組織的な欠陥である。民間の上場企業のように市場に報告する必要がないためか、実施者と承認者の分離など内部統制の観点で遅れている。権限の分離(Separation of privilege)ができていない。



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