埼玉県警プール溺死事件で約9200万円賠償命令

埼玉県警機動隊員プール溺死事件の民事訴訟で、さいたま地裁(谷口豊裁判長)は2019年6月26日、県に約9200万円の支払いを命じた。判決は「息継ぎの余裕を与えずに水中に繰り返し沈めた結果、死亡したのは明らかだ」と述べる(「機動隊員溺死で埼玉県に賠償命令」NHK 首都圏のニュース2019年6月26日)


埼玉県警機動隊員の佐々木俊一巡査(享年26)は2012年6月29日、埼玉県朝霞市の県警機動隊屋外プールで空気ボンベなど計38キロの装備を着けて訓練に参加。足の痛みを訴えて中止を求め、プールの梯子をつかんだところ、水深約3メートルのプール中央まで移動させられ、指導員に息継ぎなしで繰り返し水中に沈められた結果、溺死した。「人間息ができないことほど苦しい状況はない」という(中島みち『尊厳死に尊厳はあるか ある呼吸器外し事件から』岩波書店、119頁)。佐々木巡査の苦しみはどれほどであったか。


佐々木巡査の遺族は、上司5人と埼玉県に計約1億9千万円の損害賠償を求め、さいたま地方裁判所に提訴した。足の痛みを訴えて訓練の中断を訴えたのに認めず、私的制裁として水中に繰り返し沈められたことが死因と主張する。


判決は、佐々木巡査がプール内のはしごにつかまり「もう無理です」と言ってパニック状態になっていたにもかかわらず、指導員の男性巡査(35)が息継ぎする余裕を与えずに繰り返し水中に沈めたとする。その行為を「傷害の故意を伴うもので、注意義務違反の結果、佐々木さんが死亡したことは明白で違法」と認定した(「足の痛み訴えた県警機動隊員、プールで沈められ溺死 県に9200万円の賠償命令 母「残念で悔しい」」埼玉新聞2019年6月27日)。この指導員は刑事裁判では業務上過失致死罪で有罪判決を言い渡された。


判決が命じた賠償額は東急ハンズ心斎橋店パワハラ過労死裁判の賠償額7800万円を上回った。溺死という苦しい死に方になったことから賠償額が上回ることは自然である。埼玉県警はブラック企業大賞がふさわしい。


一方で判決は上司への請求は棄却した(「機動隊員溺死で埼玉県に約9千万円賠償命令」共同通信2019年6月26日)。母親の千春さんは「上司の責任が認められず悔しいです」と話す。どう見ても組織的なイジメ、パワハラである。これを正当化する埼玉県警は民間感覚から乖離している。昭和の感覚では反省せず、発破をかけたつもりとでも言うのだろう。


現場を指揮していた上司に責任なしでは通らない。警察組織は責任を取りたくない責任者の集まりか。国家賠償請求訴訟は賠償責任を担保させるために国や自治体の賠償責任を認めたが、それが逆に加害公務員を守る形になってしまっている。


埼玉県警は「判決内容を十分に検討し、関係部署と協議のうえ適切に対応したい」とのコメントを出した(「訓練中に沈められ巡査水死 県に9200万円賠償命令」朝日新聞2019年6月26日)。このようなコメントしか出せない埼玉県警の良識を疑う。埼玉県警では警察官の立場を悪用して遺族から金をだましとる詐欺事件が相次いで起きた。腐敗した組織は市民を搾取する詐欺に行き着く。点数稼ぎの組織はマンション投資の迷惑勧誘電話の悪徳不動産業者と同じである。



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