SDGs 住み続けられるまちづくりを

「SDGs 住み続けられるまちづくりを」と題して問題提起をします。林田力と申します。
話の内容ですが、最初に自己紹介をします。続いてSDGsの概要を説明します。それから本日は、まちづくりが主題ということで、SDGsの中のまちづくりの目標である「住み続けられるまちづくりを」を説明します。日本政府と東京都のSDGsの取り組みを紹介します。最後に課題を問いかけます。
最初に自己紹介です。私は『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』というノンフィクション書籍の著者です。これはマンション購入トラブルを消費者契約法で解決した裁判を描いた書籍です。これは私の体験談を本にしました。
新築マンション購入時に隣が建て替えられて日照や通風がなくなるという不利益事実が説明されませんでした。引き渡し後に真相を知り、消費者契約法で売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻りました。この裁判の後も住まいの問題に取り組んでいます。


今回の討論会の主催団体の「愛する月島を守る会」では2019年1月29日の第69回勉強会で「二子玉川再開発問題」について話しました。東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)によってビル風などの住環境が破壊される問題です。中央区も超高層ビルが多く、重なる問題です。

それでは本題のSDGsです。エス・ディー・ジー・エスと書いてエスディージーズと読みます。持続可能な開発目標という意味で、世界が達成するための目標です。Sustainable Development Goalsの頭文字です。2015年9月の国連サミットで採択されました。17の目標(ゴール)と、それぞれの目標をより具体的に示した169のターゲットを定義しています。17のゴールはカラフルなアイコンが作られています。
先進国も途上国も取り組む目標です。発展途上国を念頭に置いた課題が多いですが、先進国も自身の問題として取り組む目標です。


たとえば3番目の目標の「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.5は「薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する」とします。
多くの国では薬物と言えば麻薬が大きな問題ですが、日本では危険ドラッグが深刻です。危険ドラッグを撲滅することがSDGsの達成につながります。
また16番目の目標の「平和と公正をすべての人に」のターゲット16.4は「2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する」とします。
多くの国では組織犯罪と言えばマフィアが問題になりますが、日本では半グレなどの振り込め詐欺が深刻です。
このようにSDGsは必ずしも特別なことではなく、自分達の社会課題の解決がSDGsにつながります。
SDGsは全世界が取り組む目標として国連で採択されたものであり、全世界が取り組む目標です。ところが、日本での認知度は非常に低く、五人に一人も知りません。世界と比べて日本は遅れています。このように言うと世界に合わせるだけが能ではない、日本は日本の良さがあると反論する向きもあるでしょうが、この調査をした電通の「ジャパンブランド調査2018」では日本への好意度が高い人の方が、好意度が低い人に比べてSDGs 認知率は高いとしています。日本への好意を維持し、増やす上でもSDGsへの取り組みは有益です。
日本国内の職業別の認知度では管理職の認知度が高い結果になりました。現時点ではSDGsを知らない人の方が多いですが、そのような状態から時代を動かすトレンドは作られます。
今の学生はSDGsを知る人が増えています。埼玉大学の2018年の学園祭の第69回むつめ祭では表面がSDGs、裏面が薬物乱用啓発のチラシが入場者全員に配布されました。SDGsはドラッグがダメということと同じくらいの常識になりつつあります。このような学生が毎年社会人になりますので、SDGsの社会への浸透も深まります。

それではSDGsのまちづくり分野である11番目のゴールの「住み続けられるまちづくりを」に入ります。ここでは「住み続けられる」がポイントです。封建社会は人間が土地に縛られていました。そのために近代社会に入ると居住移転の自由が強調されました。
一方で資本主義社会は地主が金儲けのために住んでいる人を追い出す囲い込みという問題が起きています。現代でも立ち退きがあります。移転する自由だけでは弱いです。居住移転の自由を、移転を強いられない自由を包含するものに再構成する必要があります。「住み続けられるまちづくりを」は、この観点から素晴らしい目標と考えます。

「住み続けられるまちづくりを」のターゲットは以下です(総務省仮訳)。
11.1 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

SDGsのターゲットには手段を規定しているものもあります。枝番がアルファベットになっているものです。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

ターゲットのポイントをかいつまみますと、持続可能がキーワードになります。もともとSDGs自体が持続可能な開発目標ですが、「住み続けられるまちづくりを」でも持続可能というキーワードがあります。
さらに、この持続可能な計画は参加型というキーワードがあります。
SDGsは結果だけでなく、プロセスも規定します。「結果オーライ」やエリートの定めた計画に従うというアプローチではありません。
参加型はSDGsの他のターゲットでも記載されています。
目標16「平和と公正をすべての人に」のターゲット16.7は「あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する」とします。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲット17.17は「さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する」とします。
また、参加して意思決定するためには正しく判断するための情報が必要です。SDGsでは情報公開も定めています。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。

続いて日本政府の取り組みを説明します。日本政府は積極的にSDGsに取り組んでいます。内閣総理大臣を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置しました。「SDGsアクションプラン2019 2019年に日本の「SDGsモデル」の発信を目指して」を2018年12月に定めました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2019.pdf
そこでは、まちづくりに関係する内容として、「SDGsを原動力とした地方創生,強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」とします。もともと国土強靭化という政策を掲げており、強靭なまちづくりに力点が置かれていますが、持続可能なという観点でも興味深い指摘があります。
「持続可能で強靱なまちづくり」では「コンパクト+ネットワーク」推進とします。右肩上がりの開発一辺倒ではないということです。
また、「質の高いインフラ」では「ライフサイクル・コストから見た経済性」をあげます。建築費用だけでなく、維持・管理費用、さらに解体・撤去費用まで見据えて経済性を論じることが求められます。

次に東京都の取り組みです。東京都は「2020年に向けた実行プラン」を定めています。「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の「3つのシティ」の実現を目指します。東京都は、この「2020年に向けた実行プラン」の推進がSDGsの達成につながるとしています。
そのことを書いた文書である「「3つのシティ」の実現に向けた政策の強化(2019年度)」は最後に人口減少・超高齢社会と向き合う必要を指摘しています。
「我が国は、既に人口減少局面に入っており、東京の人口も2025年をピークに減少に転じる見込みです。また、世界に例をみないスピードと規模で東京の高齢化が進んでいます。 東京は世界のまだ誰も経験したことのない人口減少・超高齢社会と本格的に向き合っていくことになります」(146頁)
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/action/pdf/08-4_sdgs.pdf

最後に私からの問いかけです。
人口減少・超高齢社会の中で持続可能な街づくりとは何かを考えてください。
また、「参加型」できていますかという点を問いかけます。行政は立派な計画を作ることもありますが、住民参加で作られていますでしょうか。
以上を私の問題提起とします。

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