多摩川駅近くの線路敷地内で火事

東京都大田区田園調布の多摩川駅近くの線路敷地内で2021年1月9日午後に枯れ草が燃える火事があり、約3時間に渡って東急東横線と東急目黒線が一部区間で運転を見合わせた。ポンプ車など10台が消火活動を行い、枯れ草200平方メートルと、保線作業に使われる資材などが焼けた(「東急東横線・多摩川駅付近で線路脇の枯れ草燃える 一時運転見合わせ」TBS 2021年1月9日)。

多摩川駅は多摩川の近くにある駅である。灰と煙が広がった。列車が多摩川の上で立ち往生してている姿も目撃された。出火直後に近くで停車した電車では、煙の侵入を防ぐため窓を閉めるようアナウンスが流された(「沿線の火事で一時運転見合わせ 東横線・目黒線の全線で運転再開」ANNニュース2021年1月9日)。

多摩川駅では痛ましい人身事故も起きている。2006年11月25日午前6時25分頃に男性がホームから転落し、下り電車にひかれた。男性は40歳くらいで、両足に重傷を負った。ホームを歩いていて誤って転落したらしい。東横線は渋谷―武蔵小杉駅間で一時上下線とも運転を見合わせた。事故の影響で下り5本が運休し、ダイヤが乱れ、約2000人に影響が出た(「東急東横線、一時運転見合わせ 多摩川駅で人身事故」朝日新聞2006年11月25日)。

多摩川駅では車椅子がホームから線路に転落する事故が複数回起きている。車椅子の95歳の女性は2007年9月にホームに転落し重傷を負った。付き添いの家族が離れた時に車いすが動いて線路に転落した。

車椅子に乗った川崎市の81歳の女性は2009年9月13日にホームから線路に転落し、死亡した。付き添いの長女とエレベーターで1階改札から2階ホームに移動した。長女が下で待っている利用者のためドアのボタンを押して閉めようと車椅子から手を離したところ、車椅子が動いて約1.2メートル下の線路に転落した。

この事故を受けて東急電鉄が調査した結果、別の7駅でもホームの傾斜が原因で車椅子が線路に転落する危険があることが判明した(「東急7駅ホーム過傾斜、車いす転落のおそれ」読売新聞2009年9月26日)。問題の7駅は、新丸子、中目黒、自由が丘、武蔵小杉(以上、東横線)、渋谷、鷺沼、長津田(以上、田園都市線)である。

いずれの駅も1メートル当たり2センチ以上の傾斜がある(多摩川駅の傾斜は1メートル当たり2.5センチ)。これら7駅は乗降客の多い駅が集中しており、問題の深刻さをうかがわせる。東急電鉄は、これら7駅について警備員を配置し、11月末までに転落防止柵を設置する。

東急電鉄の事故前後の対応には問題があると考える。まず事故前の対応である。多摩川駅の事故は二度目である。最初の事故後に適切な対応をしていれば二度目の事故は防げた。死亡事故が起きないと重い腰をあげないのか。ここには過去の教訓を活かさない企業不祥事に共通する構図が浮かび上がる。

次に事故後の対応であるが、転落防止柵の設置は11月までは行わず、それまでは警備員配置で済ませようとしていることである。2回の事故とも家族が付き添っていながら発生しており、警備員の注意力に頼るだけで十分か疑問である。たとえば危険エリアをマーキングして注意を喚起することくらいならば即日対応可能である。

東急東横線は人身事故の割合が高い。「東横線でのトラブルで最も多かったのは人身事故で12件。同線はホームドアの設置が進んでおり、人身事故の減少が期待されるが、次いで多かったのは東横線内の遅延(10件)と混雑(8件)」(小佐野景寿「「乗り入れ先」が原因で遅れる地下鉄はどこか」東洋経済Online 2018年2月4日)

安全性は人命に関わる問題であり、地域独占の特権を享受する鉄道会社には出費や労力を惜しまない対応が求められる(林田力「東急東横線で車椅子の女性が転落死」ツカサネット新聞2009年9月28日)。



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