ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

フレデリック・ラルーFrederic Laloux著、鈴木立哉訳『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版、2018年)は人々の可能性をもっと引き出す組織を論じた書籍である。それが進化型(ティール)組織である。

進化型組織のリーダーは組織を生命体のようにとらえ、中央からの指揮や統制なしに運営する。この生命体のたとえは言い得て妙である。漫画『はたらく細胞』は細胞を擬人化した作品であるが、個々の細胞が中央の指揮や統制なしに独自に動いて、それが最終的に人体を病原菌から守ることにつながっていた。

ティール(teal)は青緑色である。本書の表紙の色である。本書は組織モデルを色で表現する。衝動型(レッド)組織は原始的な組織である。組織のトップは暴力を行使し、恐怖により支配する。マフィアの世界に多く見られるとするが、日本ではブラック企業も該当する。左翼の査問会体質も、これだろう。

順応型(アンバー)組織は官僚的なピラミッド型組織。アンバーは土色。達成型(オレンジ)組織は利益を獲得するためにイノベーションを目指す。多くの民間企業で見られる形態である。公務員組織よりも民間の方が優れていることが多い。これは組織論からも確認できる。

日本の市民社会的な議論では達成型組織の利益優先の弊害をどう抑制するかに力点が置かれがちである。しかし、企業の問題もイノベーションを目指さない旧態依然とした事業展開が原因であり、順応型組織の弊害であることが多い。多くの日本組織が顧客本位のイノベーションを目指していないことが問題である。さらにはブラック企業や日大のような前近代的なボス支配という衝動型組織も残っている。

多元型(グリーン)組織は多様性、平等、文化、コミュニティを重視する。多数のステークホルダーの視点を活かしたボトムアップの意思決定を志向する。この多元型組織よりも高次の段階が進化型(ティール)組織になる。これが本書の優れたところである。

日本の市民社会的な議論では多元型組織が理想とされがちである。これも他者からの承認や帰属意識という他律的な要素が優先される。実際、多様性重視を掲げている人が政治的な正しさから外れる発言を排除するという偏狭さを発揮することがある。そのコミュニティに居続けるためには、その空気に従わなければならない。この点で内面の倫理を基準にする進化型組織が高い次元にある。

多元型組織は家族にたとえられる。これが達成型組織よりも進化した組織になるか疑問なしとしない。日本の前近代的村社会的な組織は家族にたとえられることが多いためである。同調圧力で息苦しくなるのではないか。

欧米では個人が自立しており、上記の懸念は当てはまらないかもしれない。しかし、日本では危険がある。むしろ、アウトプットを出せば評価される達成型組織のドライさが日本に求められているのではないか。達成型組織から多元型組織が進化の順番とされるが、むしろ退化になりうるのではないか。むしろ達成型組織から進化型組織に進化しそうである。

いきなり進化型組織を目指すことは無理であり、まずは一段階高次の組織を目指そうという発想は穏当である。しかし、日本で多元型組織を目指そうとなると村社会的共同体への先祖帰りという、つまずきの石になりそうである。

それでは達成型組織から進化型組織に進化するためには達成型組織のどのような問題点を解決していけばいいか。それは世間的な上昇志向の観念から自由になることである。世の中の基準とは関係なく、自分にとって最善の行動は何かを考え、本当に自分がしたいことをするようにする。

達成型組織は構成員自身が自分の人生の目標を自由に追求する。これは集団に従属する順応型組織から進化した点である。しかし、構成員は、お金を多く稼ぐ、どんどん出世していく、高級品を消費することが幸せという即物的な基準に囚われがちである。それを達成するために機械のように働く。これでは集団の基準を社会の基準に置き換えただけである。

これに対して多元型組織は他者を大切にし、支えあうようする点が進化になる。しかし、それは個人を抑圧する日本では集団に合わせる順応型組織への先祖帰りになりかねない。進化型組織では内面の基準が重視される。集団の基準や社会の基準に惑わされず、自分の幸せが何かを付きつめることが進化型組織の道になるだろう。



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